毎年の夏休み恒例の、子どもやファミリー向けのコンサートの「オーケストラはキミのともだち」に今年も行ってきました。
りゅーとぴあ開館とともに、新潟市と東京交響楽団は準フランチャイズ契約を結び、新潟定期演奏会のほか、学校へのアウトリーチ活動が行われ、毎年秋には新潟市内の小学5年生全員をコンサートホールに招待して「わくわくキッズコンサート」が開催されてきました。児童ひとりひとりに本物のチケットが配布され、自分の指定席で聴くというもので、私の娘たちも感動して帰ってきたことを思い出します。
この期間、東響の皆さんは、新潟定期演奏会に引き続いて新潟に泊まり込み、1日3公演を2日間に渡って行い、新潟の子供たちのためにハードスケジュールをこなしてくださいました。
このうちの1公演は一般人も対象として、低料金の「特割コンサート」として開催され、私も聴かせていただいたことがありました。
「わくわくキッズコンサート」は、次代を担う子どもたちへの貴重な情操教育の機会となりましたが、新潟市の財政難から2017年を最後に中止されてしまいました。
2018年からは、それに代わる企画として、これまでと同じ内容のコンサートを、低料金ながらも有料で夏休みに開催されることになりました。それが「オーケストラはキミのともだち」です。この斬新なネーミングは誰の発案でしょうね。
指揮者は、2018年、2019年は飯森範親さん、2020年は原田慶太楼さん、2021年は永峰大輔さんでしたが、今回は再び原田慶太楼さんの登場です。原田さんは、今や最も活躍している旬の指揮者の1人であり、国内外で活発な演奏活動をされており、新潟での指揮は貴重ですので、期待が高まりました。
「子どものための芸術文化体験事業」という位置付けのコンサートで、11時開演(3歳以上)と14時開演(小学生以上)の2公演が開催されましたが、私も昔は子どもであり、精神年齢は今も子どもということで、14時の回を聴かせていただくことにしました。
今シーズンの東響は、5月、6月、7月と3ヶ月連続で新潟定期演奏会があり、7月17日の定期演奏会を終えて、2週間も経たない間に再び新潟での演奏会です。
今日の1回目は11時開演であり、準備やリハーサルもありますから、原田さんや東響の皆さんは昨日から新潟入りしておられたようです。明日は川崎での演奏会も控えており、仕事とはいえ、東響の皆さんも大変ですね。
今日も気温が上がり、暑さ厳しい土曜日になりました。いつものように、洗濯、掃除、カメの水替え、ネコのトイレ掃除、ゴミ出しなど、ルーチンワークをこなし、デパートに買い物に出かけた暴君を見送り、一息ついて家を出ました。
白山公園駐車場に車をとめ、上古町の楼蘭でいつもの絶品冷やし中華をいただき、りゅーとぴあへと向かいました。途中、1時前に上古町を歩いていますと原田慶太楼さんとすれ違ったのですが、人違いでしたでしょうか。
りゅーとぴあに入りますと、ロビーは親子連れで賑わっており、私のようなジジイが1人ブラブラしているのは気が引けました。
インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、チラシ集めをしていますと開場時間となり、早めに入場して席に着き、この原稿を書きながら開演を待ちました。
ステージ後方には、いつもの垂れ幕が飾られ、ステージ上では、団員の皆さんが音出しをしておられました。すでに1公演をこなした後にも関わらず、音出しや練習に励んでおられ、プロ意識に感銘を受けました。
オケの配置はヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で、コントラバスとチェロが左、ヴィオラは右です。ステージ右後方にはハープとピアノが設置されていました。オケのサイズは12型で、弦5部は12-10-8-7-5です。
開演時間が近付くにつれ、客席は親子連れで埋まり、平均年齢はかなり低く、私のようなジジイは少数派です。子ども向けのコンサートですから当然なのですけれど。
1時50分になり、石丸由佳さんがオルガン席に登場して、ウェルカム演奏として、マリルのカリヨンが演奏されました。子どもたちに馴染みやすい曲だったかどうかは別にして、美しいオルガンの響きを楽しんでくれたものと思います。
開演時間となり拍手の中に団員が入場。新潟定期とは違ってすぐに着席し、最後にコンサートマスターのニキティンさんが登場して大きな拍手が贈られ、チューニングとなりました。今日の次席は田尻さんです。
原田さんが颯爽と飛び跳ねるように登場し、指揮台に上がるや否や間髪を入れず「カルメン前奏曲」で開演しました。猛スピードで駆け抜けて、小気味良い演奏で子どもたちの心をひきつけました。
原田さんのMCがあり、すぐにオーケストラの楽器紹介として「ディズニーのメロディによる管弦楽入門」が演奏されました。ナレーションはこれまで通りに榎本広樹さんです。
これまで何度も聴いているのですが、メリハリとスピード感がある演奏で、新鮮な印象を受けました。この曲は、メロディはディズニーですが、構成や全体の印象はブリテンの「青少年のための管弦楽入門」そのもので、東響の各セクションの見事な演奏もあって、曲として楽しむことができ、最後のフーガは聴き応え十分でした。
続いて、観客も指揮を体験しようということで、2拍子の指揮を練習し、すぐに「ハンガリー舞曲第5番」が演奏されました。観客も原田さんに促されて指揮をし、休む間もありませんでした。
次は足でリズムを取りながら「シンフォニック・マンボNo.5」です。ベートーヴェンの「運命」と「マンボNo.5」をミックスした曲で、宮川彬良さんの真骨頂というべきの楽しい曲でした。
続いては音の強弱を手の動きで示そうということで「火祭りの踊り」です。観客も大きく身体を動かしながらでしたので、ゆっくり聴いていられませんでした。
次はゲーム音楽ということで「スーパーマリオブラザース」です。このゲームの発売の年(1985年)は、原田さんが生まれた年だそうです。聴き映えのあるオーケストラ曲なっていて楽しめました。
続いては、今年はジョン・ウィリアムズ生誕90周年ということで、映画音楽の名曲がメドレーで演奏されました。原田さん得意の曲であり、メドレーでなく、じっくり聴きたいところでした。
迫力満点のオーケストラサウンドがホールを満たし、子どもたちもオーケストラの醍醐味を感じ取ってくれたものと思います。
プログラム最後は、石丸由佳さんも加わって「威風堂々第1番」です。これもこれまで同様のハイスピードでグイグイと加速し、後半はオルガンとともに迫力いっぱいのサウンドで酔わせてくれました。
カーテンコールもそこそこに、アンコールに毎年恒例の「君をのせて」を演奏し、興奮と感動の中にコンサートは終了しました。
これまでと同じ内容のコンサートなのですが、原田さんの乗りの良さが際立っていて、かっこ良くスピーディな演奏は息をつく暇もありませんでした。観客も参加する演出もあって、ぼーっとする間も与えられず、あっという間に終演となりました。
内容豊富にもかかわらず、終演は3時前で、予定の1時間に届きませんでした。演奏のスピード感は実際の演奏時間にも現れていました。
2年前に原田さんが指揮したときとは大きく変貌し、原田ワールドの炸裂とでも言いましょうか、新たなステージに駆け上がったように思います。
前回は東響の正指揮者就任直前でしたが、今回は数々の実績を積んだ後で、東響を自分のものとして掌握しているものと思いました。ダイナミックレンジを大きく取り、躍動感に溢れる音楽は、小気味良く気分爽快でした。
東響の演奏技術も素晴らしく、個々の奏者の実力が遺憾なく発揮され、原田さんの指揮に見事に応え、オーケストラの魅力が存分に示されました。
今回オーケストラを初めて聴いた子どもたちも多かったものと思いますが、初めて聴いたオーケストラが東京交響楽団だったというのは幸運に違いありません。これを機会に、オーケストラ、そしてりゅーとぴあを身近なものとして感じてもらえると良いですね。
大きな満足感を胸にホールを出ますと、外はホールの熱気と同様に灼熱状態となっていました。でも、コンサートの熱さに比べたらたいしたことはありません。とはいうものの、やっぱり暑いですね。
以上、ジョン・ウィアムズのCDを聴きながら記事を書き、コンサートの余韻に浸っております。
(客席:2階C3-7、¥1500) |