「宝くじおしゃべり音楽館」は、宝くじの協賛で、低料金で開催されているコンサートです。トーク担当の春風亭小朝さん、歌の島田歌穂さん、ピアノの小原
孝さん、そして、藤野浩一さん指揮による「おしゃべり音楽館ポップスオーケストラ」というメンバーで、数年前から全国の地方都市を中心に巡回しています。
噺家の春風亭小朝師匠は、本業の落語のほかにも、BSテレ東の「おんがく交差点」で大谷康子さんと共演していて、音楽にも造詣が深いです。島田歌穂さんは、最近お名前を聴く機会が少ないですが、かつてはミュージカルスターとして一世を風靡しておられました。小原
孝さんは、NHK-FMの「弾き語りフォーユー」で活躍されています。指揮の 藤野浩一さんは、このようなポップスコンサートには欠かせない指揮者ですが、新潟県(旧水原町、現阿賀野市)の出身ということで、親近感がわきます。オケは臨時編成ですが、在京のプロの音楽家が結集しています。
「想い出のスクリーンミュージック」という副題にありますように、肩の凝らないポップスコンサートですが、 「おしゃべり音楽館」と断っていますように、演奏のほかに、小朝師匠の楽しいトークも魅力となっています。
同じメンバー・同じ演目で全国を巡演中であり、各公演のチラシも同じデザインで使いまわされています。内容もさることながら、これだけのメンバーを揃えて2500円という低料金は魅力です。
今回は見附市で開催されることになり、幸いほかに予定がありませんでしたので、行こうか行くまいか思案しましたが、決心がつかないまま時間が過ぎました。開催日が近づいたところで、たまたま思い立ってチケットのサイトを覗いてみましたら、席はまだ十分に余裕があるようでしたので、購入ボタンをクリックしてしまいました。
今日は海の日で休日です。昨日の東響新潟定期の名演の興奮から覚めないまま朝を迎え、その記事を書いて更新しました。その後も昨日の感動が抜けず、見附遠征は止めて余韻に浸ろうと考えましたが、我が家の暴君から、どっか行ってきなさいという冷たい言葉。結局予定通り出かけることになりました。
アルカディアはもう何度も来ていますので、高速は使わず、下道を通って快適に見附入りしました。前回来たのは昨年の海の日でしたので、ちょうど1年振りです。
駐車場の係員の誘導により車をとめ、館内に入りますと、開場待ちの列ができており、出演者のCD販売も行われていました。
ほどなくして開場となりましたが、前回来たときと同様に、開場の列は折れ曲がるように指示されました。クネクネしながら、受付へ向かい、半券を自分で切って入場しました。
客席への出入りは一方通行で、左から入場し、右から出るように指定されています。トイレに行くにも一方通行。トイレの入り口まで折れ曲がって進み、用を済ませた後は反対側から出て、左の入り口からホールに戻るというもので、はなはだ面倒で、一苦労でした。県内でここまでやっているホールは珍しいのではないでしょうか。
感染予防策を徹底しているということなのでしょうが、入退場にこれだけこだわっているにも関わらず、客席には制限はなく、私のいる後方は空席があって余裕があったものの、前方はびっしりと席が埋まって密集・密接状態。おしゃべり禁止のアナウンスもなく、客席内はおしゃべりで賑やかであり、感染予防策のやり方のチグハグさを感じました。
昨年7月に来たときには、客席の各席にはアクリル板が付けられていて、やりすぎと思うほどでしたが、今回はアクリル板はありませんでした。椅子が入れ換えられたようで、シートがずいぶんときれいになっていました。
ステージ上には、小編成のオケ席が設置され、中央の指揮台前にはピアノが置かれ、左にハープが置かれていました。
ピアノはもちろんアルカディアが誇るベーゼンドルファー・インペリアルで、パウル・バトゥラ=スコダが選定したもので、同氏のサインが記されているそうです。
りゅーとぴあと同じ開演のチャイムが鳴って、オケの団員が入場。最後にコンミスが入場してチューニングとなりました。
第1ヴァイオリンは7人でしたが、第2ヴァイオリンとヴィオラはピアノの陰で確認できませんでしたが、各4人程度でしたでしょうか。チェロは3人、コントラバスは2人です。
藤野さんが登場し、2001年宇宙の旅から、「ツァラトゥストラはかく語りき」の冒頭部分と「美しき青きドナウ」が続けて演奏されました。
「ツァラ・・」は、本来はパイプオルガンの重低音が魅力なのですが、オルガンはありませんので、コントラバスの低音だけでしたが、それで十分でした。「美しき・・」は全曲ではなく、「ツァラ・・」からメドレーのように引き続いて途中からの演奏でした。小編成のオケながらも、PAも使用されていたようで、十分なオーケストラサウンドで、出だしは好調でした。
ここで小朝師匠が登場してトークがあり、ピアノの小原さんにバトンタッチして、小原さんのトークを交えながら、ピアノとオーケーストラで、ニュー・シネマ・パラダイスから「ニュー・シネマ・パラダイス」、愛情物語から「To
Love Again」、風と共に去りぬから「タラのテーマ」が美しく演奏されました。手馴れた演奏であり、映画の世界へと誘われました。
オケが退場し、ここからはNHK-FMで放送中の、小原さんによる「弾き語りフォーユー」を再現したコーナーで、小原さんのトークにのせて、小原さんの最新アルバムの収録曲から、ピアソラの「リベルタンゴ」、ピアノ初心者の練習曲「バイエル・メドレー」、リチャード・クレイダーマンでお馴染みの「渚のアデリーヌ」、エリック・カルメンの曲でラフマニノフが原曲の「オール・バイ・マイセルフ」、反田恭平さんがショパンコンクールで弾いたという「ラルゴ」、そしてカッチーニの「アヴェ・マリア」が、ラジオ番組さながらに、楽しくも情感豊かに演奏し、さすが小原さんと感動しました。
照明が落とされて暗い中に小朝師匠が登場。ステージに越路吹雪さんの写真が飾られ、そこにスポットライトが淡く当てられていました。
小朝師匠の素晴らしい話芸に笑い、その後は照明が落とされた中で、越路吹雪さんの人生が、たくさんの裏話と共に語られ、その感動的な人生の物語に涙しました。
場内が明るくなって、ここで20分間の休憩になりましたが、一方通行ですので、トイレに行くのも一苦労でした。再び開演のチャイムが鳴って、後半の開演となりました。
プログラムには書かれていませんでしたが、小原さんが登場して、ピアノ独奏でラヴェルの「ボレロ」と久石譲の「サマー」が演奏されました。
そして、ピンクのドレスが麗しい島田歌穂さんが登場し、「星に願いを」をピアノ伴奏で歌い、久しぶりに聴く島田さんの素晴らしい歌声に魅了されました。
ここで、オーケストラが入場し、ピアノとオーケストラによる伴奏で、島田さんがかつて長く演じていたレ・ミゼラブルから「On
My own」がドラマチックに歌われました。
続いてミシェル・ルグランのメドレーということで、「風のささやき」「おもいでの夏」「シェルブールの雨傘」の3曲が続けて歌われ、情感豊かな歌声に胸を熱くしました。ベースとの掛け合いで、ジャジーな雰囲気もあって聴き応えがありました。
続いて、小朝師匠が登場し、宝くじの主催ということで、お楽しみ抽選会となりました。島田さんが箱の中から番号が書かれたボールを取り出すというものです。
入場時に番号が書かれた抽選券をもらいましたが、その1の位が選ばれました。確率は10分の1で、オルゴールが当たるのですが、私は見事に、外れでした。残念。
楽しい抽選会の後は、オーケストラだけで「魅惑のワルツ」と「Mission:Impossible」が演奏され、PAを使用していましたが、美しいオーケストラの演奏に聴き入りました。
そして、水色の派手な衣裳の小原さんと水色のしっとりとしたドレスの島田さんが登場。「サウンド・オブ・ミュージック」の名曲(サウンド・オブ・ミュージック〜ひとりぼっちの山羊飼い〜マイ・フェイバリット・シングズ〜サウンド・オブ・ミュージック)がメドレーで歌われ、大きな感動の中に、予定のプログロムは終演となりました。
アンコールでは、毎回地元の合唱団を招いているとのことで、見附市はもちろんアルカディア少年少女合唱団です。中学生もいましたが、ほんとに小さな子もいて、ほのぼのとした雰囲気でした。インタビューでユーモアあふれる返答をした中学生に脱帽しました。
PAのない合唱団の歌声は聴き取りにくかったですが、島田さんと共に「見上げてごらん夜の星を」をしっとりと歌い、「ドレミの歌」を楽しく歌って、最後はポーズも決めて、大きい盛り上がりの中に終演となりました。
これだけ内容豊富なコンサートでしたので、終演はなんと16時50分頃。3時間近くのコスパは最高のコンサートでした。
コロナ対策にこだわりがありますので、帰りはもちろん客席のブロックごとの分散退場。私がホールを出られたときは17時を大きく回っていました。
堅苦しくない楽しいコンサート。小朝師匠のトークに笑い、懐かしい名曲をうっとりと聴きました。演奏の質を論じることなどは野暮であり、素直に音楽を楽しみました。たまにはこういうコンサートも良いですね。
帰りには、せっかく見附に来ましたので、近くにある「ほっとぴあ」で汗を流し、さっぱりしたところで農道経由で家路につきました。
(客席:18-13、¥2500) |