りゅーとぴあ・プライム・クラシック1500 vol.5
ヴァイオリン&ピアノ  
(Vn:松山冴花、Pf:津田裕也)
  ←前  次→
2009年5月15日(金) 19:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
ヴァイオリン:松山冴花
ピアノ:津田裕也
 
 
 

ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第5番 ヘ長調 Op.24 「春」

ドヴォルザーク:4つのロマンティックな小品 Op.75
          カヴァティーナ/カプリッチョ/ロマンス/エレジー

(休憩20分)

フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調

サラサーテ:カルメン幻想曲 Op.25

(アンコール)
サラサーテ:サバテアード
バッジーニ:妖精の踊り
 
 

 ヴァイオリンの松山さん、ピアノの津田さんともに、仙台国際音楽コンクールの第1位受賞者ということは知っていましたが、実際の演奏は聴いたことがなかったので、楽しみにしていました。ランチタイムに行われた1コイン・コンサート(\500)に引き続いての夜の部は、プライム・クラシック1500というシリーズで、\1500の低料金で新進気鋭の音楽家の演奏を楽しむことができます。
 ということで、早々にチケットを購入していたのですが、このところ仕事が多忙で、昨夜は寝ることができず、今日も朝から大忙し。頭は朦朧、疲れ切って今夜はパスしようかと思いましたが、こんな時こそストレスを解消しなければと考え、思い切って出かけることにしました。しかし、平日の7時開演に間に合うのは大変で、大急ぎで車を飛ばし、開演間際に着席することができました。
 ホールは1-2階席とも中央部分以外は空席が目立ちました。こんな低料金でお得なコンサートなのにもったいなく感じました。その分ゆったりと聴けて良かったですけれど。

 2人が登場して開演です。松山さんは黒のドレス。津田さんは燕尾服です。松山さんはアイドルっぽい名前なので、華奢な人かなと勝手に想像していたのですが、予想に反しての堂々としたお姿に驚きました。音楽家というよりアスリートという印象で、筋肉がしっかり付いています。先日のやせ細った枝並千花さんとは大違いです。小柄な津田さんをステージ上では圧倒していました。

 最初はスプリング・ソナタです。まず、ヴァイオリンの音の豊かさに感銘しました。しっかりとした体からはしっかりとした音が出ます。しかし、「春」という印象が感じられない重い演奏に感じられました。もっと軽快にさらりと演奏して欲しかったのですが、重厚すぎました。良く言えば燻し銀的な演奏ですが、中〜低音部の音量の豊かさに比して、高音の輝きが感じられません。昼の部の疲れが残っているのか、乗り切れていないように感じました。雑なようにも感じられ、もしかして、飛ばした音符もあるんじゃないのでしょうか。癖の強い濃い演奏で、私としましてはちょっと楽しめませんでした。

 ここで短いトークが入りました。津田さんの優しい語り口、松山さんの関西なまりの話は親近感が湧きましたが、あまりにあっけなく、もう少し話をしてくれても良かったかなと感じました。

 続いてはドヴォルザーク。同様に力強い音、重厚な音がして、濃厚な演奏ですが、曲調もあってか、前よりは聴きやすい演奏に感じました。まだまだ20代で若いはずなのですが、若さは感じられず、老練な巨匠的な演奏に感じました。

 以上のように、前半は音の豊かさ、重厚さがイマイチ乗り切れなさに繋がってしまったように感じてしましました。個性的な松山さんの前では影が薄くなってしまいますが、津田さんのピアノの音色はきれいでした。

 後半は先日枝並さんで聴いたばかりのフランクのソナタです。前半同様に音量豊かな力強い演奏が良い方向に発揮され、繊細さは欠けますが、情熱的な演奏が心に迫り、圧倒されてしまいました。ここまで音量豊かに、しっかりとした音を出せるなんて、やはりただ者ではないと感じました。枝並さんのフランクは線が細く感じられましたが、松山さんは堂々としたものでした。繊細な枝並さんの演奏も良かったのですけれど、松山さんの情熱的に迫ってくる演奏を聴かされると思わず興奮させられてしまいます。第2楽章終了後に拍手した人が多かったのは残念でしたが、拍手したくなる気持ちもわからないではない演奏でした。人柄の良さを彷彿させる津田さんのピアノも良かったのですが、松山さんに負けないで弾くのは大変だったと思います。

 ここでトークが入り、譜面台が片づけられ、最後にカルメン幻想曲が演奏されました。松山さんにはこういう曲がピッタリじゃないでしょうか。これでもかというぐらいに、音量豊かに、バリバリと弾きまくり、ノックアウトされたとう感じです。力で押し切られ、参ったというしかありませんでした。なぜか途中で拍手が入ってしまったのは興をそいでしまって残念でしたが。

 アンコールはマネージャーの指示と言うことで2曲。ともに超絶技巧を駆使した曲で、松山さんの力を誇示するには最適の選曲だったと思います。疲れた最後に演奏するには難曲のように思いましたが、大いに盛り上げて下さいました。

 以上のように、前半は少しものだりなく感じましたが、後半は圧倒されました。この若さで、これだけ濃厚な演奏を聴かせてくれるなんて、優秀な逸材なのでしょう。今後どうなるかが楽しみです。あれだけ豊かな音を出せるのは大きな強みと思います。あの音を出すには、あの体格、筋力が必要なのでしょう。体も楽器の一部です。ひ弱な体からは豊かな音は出ないんだろうな、などと根拠のない考えを巡らせています。枝並さんも体力・筋力をつけないといけないのでは・・、などと愚考している次第です。大きなお世話でしょうけれど。

 豪快な松山さんの演奏の蔭で、津田さんを忘れるところでした。年齢的には松山さんの弟分にあたり、小柄な体格で、松山さんに対等に渡り合ったのですから、津田さんも賞賛されなければならないでしょう。今度は是非単独のピアノリサイタルを聴かせていただきたいものです。

 こんなすばらしいコンサートを500円や1500円という低料金で開催してくれたりゅーとぴあには感謝すべきであり、
空席が多かったのは誠にもったいなく感じました。こういう恩恵に与れるのも新潟市民なればこそ。入場料収入だけではまかなえないはずであり、市からの補助金(税金)が入っているはずです。優良なる納税者としましては、こういう機会を逃さず、税金を取り返さねばなりません。これからも素晴らしい企画に期待したいと思います。


 蛇足ですが、譜めくりの女性は先日の枝並さんの譜めくりもしていたのじゃないでしょうか。なかなかチャーミングで、的確な動きは良かったと思います。ご苦労様でした。
  

(客席:2階D2-26、会員割引:1350円)