宮田 大 & 大萩康司 デュオ・コンサート
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2021年7月21日(水)19:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
チェロ:宮田 大
ギター:大萩康司
 

サティ:ジュ・トゥ・ヴ
ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ
ニャタリ:チェロとギターのためのソナタ
ピアソラ:タンゴの歴史〜カフェ1930

(休憩20分)

ピアソラ:タンティ・アンニ・プリマ
ピアソラ:ブエノスアイレスの冬
ピアソラ:ブエノスアイレスの夏

(アンコール)
ピアソラ:オブリビオン
ミヨー:コルコバド
ルグラン:ロシュフォールの恋人たち より キャラバンの到着

 りゅーとぴあの会員増を図るために、以前にも会員優待コンサートが開催されたことがありましたが、今年度は3回シリーズで会員限定のコンサートが開催されることになり、その第1回が本日のチェロの宮田大さんとギターの大萩康司さんのデュオ・コンサートです。

 チェロの宮田さんの演奏は、2012年1月に水戸室内管弦楽団(指揮:小澤征爾)とサントリーホールでの共演を聴いたのが初めてです。その時は当時の天皇・皇后両陛下がご臨席になってのコンサートで、思い出深いものとなりました。
 次に聴いたのは、2015年8月の、東京交響楽団第91回新潟定期演奏会(指揮:沼尻竜典)で、情熱的なチェロの音色に魅了されました。
 そして最後が、2016年6月に京都で聴いたリサイタルで、卓越したボウイングから繰り出される緩急自在な音楽に魂を揺さぶられました。
 あれから5年。宮田さんの活躍は目覚ましく、もはや日本のトップ奏者として人気を博し、新潟が誇る横坂源さんとともに、これからの日本のチェロ界を牽引していくことは間違いなく、今日のコンサートでの演奏が楽しみでした。

 一方、大萩康司さんは、新潟に度々来演されており、私個人としましては、2016年4月の荘村清志さん林美智子さんとのコンサート、2019年4月の鈴木大介さんとのコンサート以来、2年ぶり3回目となります。日本を代表するギタリストの一人であり、今日も卓越したテクニックを披露してくれるものと期待されました。

 それぞれ単独でも素晴らしいというのに、低料金で二人まとめて聴けるというのは何とも贅沢です。りゅーとぴあ会員の恩恵を享受することにしましょう。
 チェロとギターの組み合わせはこれまで聴いたことはなく、非常に興味深く思われ、早々にチケットを買って楽しみにしていました。

 連日の猛暑でうんざりの毎日です。早くも夏バテ気味の私ですが、弱った体に鞭打って働き、早めに職場を退勤し、大急ぎでりゅーとぴあへと車を進め、開演10分前に入場しました。
 入場に際しての感染予防策がこれまでと変更され、モニターでの体温チェックでなく、手の消毒液のスタンドと一体化した体温モニターを使用し、入場の直前に手の消毒と体温チェックを同時に行う方式になっていました。
 入館時に同じシステムでの手の消毒と体温チェックしたばかりで、連続して同じことをすることになり、あれっと思いましたが、それだけ感染管理をしているということでしょうか。

 さて、今回は会員限定コンサートということで、集客が危惧されましたが、1階席はかなり埋まり、2階席もそれなりに席は埋まっていました。
 私はいつもの2階席正面前方です。客席は制限されずに通常通りに発売され、密集密接が目立ちましたが、私の横は空席で、気兼ねなくコンサートに臨めました。

 開演時間となり、宮田さんと大萩さんが登場。宮田さんが右、大萩さんが左に着席。大萩さんの前にはマイクが設置され、後方に小さなスピーカーが置かれていました。

 最初の曲は、サティの「ジュ・トゥ・ヴ」です。ギターとチェロの音量差はアンプで調整されていましたが、音量豊かに響き渡るチェロと優しく響くギターが絶妙に絡み合い、心地良く感じられました。パリの街角イメージさせるような洒落た演奏に心が和みました。

 ここで宮田さんがリードをとり、挨拶と曲目紹介があり、以後も二人の楽しいトークと曲目紹介を挟めながら演奏が進められました。チェロもギターも、ホールの気温・湿度、照明等により調弦が狂うので、MCの間で調整するというのも目的だそうです。

 2曲目はラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」です。ビロードのように柔らかく、ふくよかなチェロの音色が優しく響き、澄んだギターとの音色とともに、聴く者の心に癒やしをもたらしてくました。

 ここで一旦退場し、次はニャタリの「チェロとギターのためのソナタ」です。題名の通りチェロとギターのためのオリジナル曲です。第1楽章は、官能的な響きでギターとチェロとが絡み合い、第2楽章は、ちょっとけだるくて切ない嘆きを感じさせ、第3楽章は、激しい変拍子の音楽で、チェロとギターが自己主張し、激しいバトルが交わされました。初めて聴く曲でしたが、聴き応えありました。

 再び退場した後、前半最後はピアソラの「タンゴの歴史」から「カフェ1930」です。紫煙漂う場末のカフェ。けだるいチェロが大人の世界を感じさせました。

 休憩後の後半は、ピアソラ生誕100周年を記念して、前半最後に引き続いてオール・ピアソラ・プログラムとなりました。「タンティ・アンニ・プリマ」は、ゆったりとして甘美なメロディが心をなだめ、心を明るくしてくれました。

 そして、プログラム最後に「ブエノスアイレスの冬」と「ブエノスアイレスの夏」が続けて演奏されました。時にしっとりと、しみじみと、時にもの悲しく、時にかっこ良く、曲調がめまぐるしく変わるピアソラの音楽をじっくりと味わい、心に染み渡る音楽に身を委ねました。

 大きな拍手に応えて、アンコールに「オブリビオン」を情感豊かにしっとりと演奏し、しみじみとした余韻の中に終演と思いきや、つづいてミヨーの「コルコバド」の変わったメロディで楽しませ、最後はミッシェル・ルグランの「ロシュフォールの恋人たち」よりの「キャラバンの到着」をかっこ良く演奏して盛り上げて、明るい気分の中にお開きとなりました。

 二人の演奏の素晴らしさはいうまでもなく、トークの面白さでも楽しませてくれました。ニャタリのソナタ以外は編曲物でしたが、編曲の良さもあって違和感も無く、オリジナル曲のように楽しむことができました。

 宮田さん、大萩さんの素晴らしさを再認識できた内容の濃いコンサートでした。特に宮田さんが純クラシック以外にもこういうコンサートでも才能を発揮していることに感銘を受け、今後のさらなる活躍が確信されました。

 暑い夏には熱い音楽。良い音楽を聴いた満足感を胸に、外に出ますと、まだ暑さが残っていましたが、心は爽やかでした。
 帰り道にテレビの音声だけ聴いて運転しようと選局しますと、ちょうど女子サッカーで同点ゴールが決まるところでした。暑い夏はこれからさらに熱く燃えそうです。

 

(客席:2階C3-7、¥3000)