東京交響楽団第91回新潟定期演奏会
←前  次→
2015年8月23日(日) 17:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:沼尻竜典
ヴァイオリン:神尾真由子
チェロ:宮田 大
ピアノ:ミロスラフ・クルティシェフ
コンサートマスター:林 悠介
 


メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64

エルガー:チェロ協奏曲 ホ短調 作品85

 (ソリストアンコール)J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第3番より ブーレ

(休憩20分)

チャイコフスキー:ピアノ協奏曲 第1番 変ロ短調 作品23

 (ソリストアンコール)ショパン:練習曲作品10-12 「革命」

 東響新潟定期は、東京、川崎での定期演奏会の翌日に新潟で同じ演目を演奏するというのが特色であり、地方では聴けないような大曲や珍しい曲を聴けるのが魅力です。
 今回は新潟定期初めての試みで、ヴァイオリン、チェロ、ピアノの名協奏曲が一気に聴ける「お楽しみ協奏曲特集」だそうです。今月は東京・川崎での定期演奏会はありませんので、新潟独自の企画かと思ったのですが、昨日所沢で「東響プレミアムコンサート」として同じ演目が演奏されていました。前日に実演でのリハーサルを積んで新潟での演奏に臨むというスタンスは今回も維持されています。

 私は、今日の指揮者の沼尻さんを聴くのは初めてです。ヴァイオリンの神尾さんの演奏を聴くのは、2004年7月の第27回東響新潟定期以来です。当時は18歳でしたが、あれから11年が過ぎ、どんな演奏を聴かせてくれるのか楽しみです。
 (その後、2004年11月に、ミューザ川崎で、ノセダ指揮BBCフィルと今日の演目であるメンデルスゾーンの協奏曲を聴いていたことを思い出しました。)
 また、チェロの宮田さんは、2012年1月の水戸室内管弦楽団との共演を聴いて以来です。そのときは、病身の小澤征爾さんの指揮で、天皇・皇后両陛下を迎えての演奏でしたが、そのときの興奮と感動は、今直記憶に鮮明に残っています。
 クルティシェフについては、これまで実演・録音ともに聴いたことがなく、今回名前を初めて知ったくらいですので、予備知識もなく公演に臨みました。

 昼のロビーコンサートの後、だいしホールでの森麻季さんのリサイタルを聴き、大急ぎでりゅーとぴあに戻りました。こんな強行軍をする物好きは私くらいかと思いましたが、同じ行動パターンをとった音楽好きも多かったようです。

 馴染みやすい名曲揃いというためか、いつもより客の入りは良く、客席は9割方は埋まっていたように思います。ここ最近では、一番の入りじゃないでしょうか。

 いつものように拍手の中に団員が入場。今日のコンマスは客演の林さんです。東響の3人のコンマス陣は夏休みでしょうか。
 オケの配置は、ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で、コントラバスが左、チェロが正面、ヴィオラが右側になっていました。オケの編成はやや小振りで、第1ヴァイオリンは12人でした。指揮台の高さはかなり高めです。

 ブルーのドレスの神尾さんと沼尻さんが登場して、最初はメンデルスゾーンのヴァイオリン・コンチェルトです。出だしが蚊の鳴くようなか細い音で、どうなるかと心配しましたが、次第に盛り上がって安心しました。第2楽章を情感豊かに歌わせ、第3楽章を盛り上げて、うまくまとめてくれました。神尾さんのヴァイオリンは1717年製のストラディヴァリウスだそうですが、鳴りは良くなく、終始音は細く感じました。

 続いては宮田さんを迎えて、エルガーのチェロ協奏曲です。冒頭のレチタティーヴォから、宮田ワールド全開です。音量豊かに、朗々と響き渡り、情熱的なチェロの音色に心奪われました。切々と心に響くメロディに、胸が痛くなりました。期待以上の名演にホールも興奮に包まれました。
 アンコールのバッハも味わい深く、日本の若手チェリストのトップは間違いないことを知らしめてくれました。素晴らしい演奏にめぐり合えて、早くも大満足でした。

 休憩後はクルティシェフとのチャイコフスキーのピアノ協奏曲です。これは前半の感動が霞むほどの爆演、快演でした。速いテンポで猛スピードで突進し、興奮と感動の音楽を生み出していました。淀みなく繰り出されるピアノの泉に、ただただ聴きほれるばかりでした。超絶的な指回しは曲芸的ですらあり、それに呼応して、東響も大爆発しました。こんなに燃え上がる東響も珍しいのではないでしょうか。沼尻さんの曲作りの賜物でしょうか。

 こんな演奏を聴かされて盛り上がらないはずはなく。ホールは興奮のるつぼと化しました。アンコールのショパンも大爆発。こんなショパンは初めてです。さすがに第13回チャイコフスキー・コンクールで1位なしの2位になっただけのものはありますね。

 名曲コンサート的なプログラムに、最初は軽い気持ちでコンサートに臨んだのですが、見事に裏切られ、ノックアウトされられました。三者三様の、内容の濃い演奏にお腹いっぱいになりました。良い音楽を聴いて、気分は爽やか。ウキウキ気分で帰路に着きました。

*後で知ったのですが、神尾さんとクルティシェフさんは、2013年7月に結婚していたんですね。今年お子さんを出産され、子連れで新潟に来られていたそうです。夫婦で出演というのは、東響も粋な計らいですね。
 
 

(客席:2階C*−*、S席:定期会員 \5000)