東京交響楽団川崎定期演奏会第75回 Live from Muza!
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2020年12月16日(水) 19:00  ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:原田慶太楼
コンサートマスター(客演):小林壱成
 


藤倉大:海

ブリテン:歌劇「ピーター・グライムズ」より、4つの海の間奏曲
 T 夜明け U 日曜の朝 V 月の光 W 嵐

(休憩:20分)

ニールセン:序曲「ヘリオス」op.17

エルガー:エニグマ変奏曲op.36
 

 今日の演奏会は、4月26日に開催されるはずだった「川崎定期演奏会第75回」の振替公演です。次期東京交響楽団正指揮者に就任する原田さんの川崎定期初登場という記念すべき演奏会です。
 当然ながら川崎まで聴きに行くことなどできませんが、「Live from Muza!」として無料生配信されましたので視聴させていただくことにしました。オンタイムは仕事で視聴できませんでしたので、タイムシフトで視聴させていただきました。
 東京交響楽団の無料配信を視聴するのはこれで9回目となります。毎回素晴らしい内容であり、東京交響楽団の実力と魅力を全国に知らしめてくれています。今回も素晴らしい演奏が期待でき、視聴させていただくことにしました。

 ニコニコ生放送のサイトにアクセスしますと、ミューザ川崎のステージが映し出されており、コントラバス、チェロが音出ししていました。無人だった客席に少しずつ客が入りだし、ティンパニ、大太鼓、ハープと、パラパラと団員が出てきて音出しをしたかと思うと下がったりしていました。

 開演のアナウンスが始まるとともに、団員が順次出てきて、緊張感と期待感が高まってきました。画面から見える客席はまばらで、オルガン前の席は無人です。

 拍手のない中に団員が入場するのは、新潟方式に慣れていますと寂しく感じます。全員揃ってしばらくして客演コンマスの小林さんが登場して拍手を受け、チューニングとなりました。
 客演の小林さんについては何も知らなかったのですが、1996年生まれの新進気鋭の音楽家で、活発な活動をされています。東響とのつながりはわかりませんが、どう演奏をまとめてくれるのか期待しましょう。
 オケの配置は、ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で、弦5部は私の目視で 14-12-10-8-7 で、いわゆる14型の通常サイズです。今日の次席は廣岡さん。弦セクションはいつものようにマスク着用ですが、コンマスの小林さんはマスクなしです。

 マスクなしの原田さんが指揮棒なしで登場し、藤倉大の「海」で開演です。藤倉さんについては全く知りませんでしたが、世界的に活躍する現代音楽の作曲家で、数々の受賞歴を持っておられます。
 神秘的な低弦の響きで始まり、緊張感が高まりました。いかにも現代曲というような響きが深淵ですが、映画音楽的な空気感もあり、聴きやすい音楽です。どういう海なのか感が巡らしながら聴いていましたが、イマイチ良くわかりませんでした。
 原田さんが両手を大きく拳上し、いつしか曲は終わりました。意味するところはよく分かりませんが、音の響きとしては美しく、心に響く音楽ではありました。

 管楽器、打楽器の入れ替え、増強があり、2曲目はブリテンの歌劇「ピーター・グライムス」より「4つの海の間奏曲」です。
 フルート2本の悲しげな旋律に導かれて、朝霧漂う北の夜明けの海を思い起こさせるメロディが流れました。朝日が昇り、小鳥が歌い、動物たちも活動を始め、悲しげな旋律の中に、やがて朝の営みが動き出しました。教会の鐘が鳴り、そして夜となりました。悲しげな旋律、おごろおどろしい音楽は死者の行進のよう。嵐が訪れ、雷鳴がとどろき、稲妻が光り、荒れ狂う海。嵐が去り、安堵のなかに終わるかと思うも、不安な空気が流れる中に曲は終わりました。
 この歌劇のことなど全く知りませんが、こんな情景を勝手に思い浮かべながら聴いていました。聴く前はどういう趣旨の音楽なのか全く理解できていませんでしたが、胸に染みる深淵な音楽は、私には新鮮に感じられました。

 休憩時間に入ってもステージにコントラバスが残って音出しをし、しばらくして漸く下がって無人となりました。暫くの後、コントラバスが真っ先にステージに出てきて音出しを始め、その後に開演の鐘とアナウンスがありました。コントラバスの皆さんの熱心さには驚きです。

 拍手のない中に団員が入場し、最後にコンマスが登場して拍手が贈られ、チューニングとなりました。原田さんが登場し、後半最初は、ニールセンの序曲「ヘリオス」です。
 有名な曲のようですが、ニールセンといえば、昨年9月の「新潟メモリアルオーケストラ第29回定期演奏会」で聴いた交響曲第4番「不滅」くらいしか知らない私ですので、この曲はおそらくは初めて聴くよう思います。

 コントラバスとチェロのの重々しい序奏に始まり、ホルンが遠吠えを奏で、夜明けを迎えて、静まり返った街並みに朝日が差し込みました。日が昇り晴れ渡った空のもと、賑やかに活動が始まり、ギラギラ太陽がまぶしく感じられました。夕方となり、日は次第に落ちていき、静かに夕暮れが訪れました。
 そんな情景が眼前に広がる色彩感ある音楽であり、演奏だったと思います。音楽が消え、しばし宵闇の静寂を味わって拍手が贈られましたが、なかなかいい音楽でした。

 団員の出入りがあってチューニング。プログラム最後は、エルガーの「エニグマ変奏曲」です。この曲は、2002年の第19回新潟定期演奏会で秋山さんの指揮で演奏されています。第9変奏の「ニムロッド」を聴く機会は多いですが、全曲を聴くことはめったにありません。

 哀愁を感じさせる美しいメロディが奏でられ、さまざまに形を変えて、ときに軽快に生き生きと、ときに重厚に、変幻する14の変奏に身をゆだねました。
 有名な第9変奏「ニムロッド」はやっぱり良いですね。胸を熱くしました。その後も様々な変奏が続きましたが、どれもが魅力的です。特に第12変奏もいいですね。第14変奏のフィナーレではパイプオルガンも加わって、壮大に音楽を締めくくりました。曲の良さを再認識させてくれる素晴らしい演奏でした。

 前半・後半通して、原田さんの創り出す音楽はわかりやすく、ダイレクトに胸に迫ります。その実力が示された素晴らしい演奏会だったと思います。

 原田さんは、既に8月の「オーケストラはキミのともだちで」新潟に来演し、感動を届けてくれましたが、次シーズンからは東京交響楽団の正指揮者としてさらなる活躍が期待されます。楽しみにしましょう。
 
 

(客席:自宅:ネット配信、無料)