東京交響楽団 東京オペラシティシリーズ 第104回
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2018年7月22日(日) 14:00  東京オペラシティ コンサートホール
 
指揮:秋山和慶
ピアノ:北村朋幹 、ヴァイオリン:山根一仁、チェロ:横坂 源
コンサートマスター:水谷 晃
 


ベートーヴェン:序曲「コリオラン」 op.62

ベートーヴェン:交響曲 第1番 ハ長調 op.21

(休憩20分)

ベートーヴェン:ピアノ、ヴァイオリン、チェロと管弦楽のための三重協奏曲 ハ長調 op.56

(ソリストアンコール)
シューベルト:ピアノ・トリオ 第2番 op.100 より 第3楽章
 

 先週に引き続いて、今週も東京への出張でした。昼で仕事は終わりましたので、新潟への帰りを遅らせて、このコンサートを聴くことにしました。
 今回は東響新潟定期会員の招待枠で、無料招待させていただきました。こういう特典があるのは良いのですが、上京する日程と合致することは少なく、めったに利用できないのが残念です。この制度を利用したのは2014年4月以来になります。

 仕事を終えて初台のオペラシティに到着。ここは新宿区ですが、すぐ隣の新国立劇場は渋谷区というのが面白いですね。
 開場まで少し時間がありましたので、広々とした館内を散策しましたが、きれいすぎて田舎者にはアウェイ感を感じ、ホールのすぐ下の階にある本屋で時間調整しました。

 ほどなくして開場時間となり、受付で招待券とチケットを交換して入場しました。割り当てられた席は、1階の中央。S席(7000円)エリアのなかなか良い場所です。東響新潟定期会員の特権をありがたく享受させていただきました。

 オペラシティのコンサートホールは、高い三角天井のシューボックス型のホールで、3階席まであり、1階席はほぼ平土間と言って良い作りです。天井の三角窓から日光が降り注ぐ斬新な構造です。このホールに来たのは何年ぶりでしょうか。かなり久しぶりになります。

 ホールに入場しますと、ステージ上ではチェロ奏者が練習中であり、開演直前まで熱心に練習に励んでおられました。
 開演時間となり、天井の三角窓が閉じられ、拍手のない中に団員が入場。最後にコンマスの水谷さんが登場して初めて拍手が贈られました。
 これが通常の東京方式で、拍手で迎えて団員も起立して応える新潟方式は特別ということをあらためて実感しました。今日の次席は廣岡さんで、田尻さんはお休みのようです。

 チューニングが終わり、白髪がきれいな秋山さんが登場して、「コリオラン」で開演です。まず、音の美しさに驚きました。いつもりゅーとぴあで聴く東響の音とは違って、重心の低いサウンドに感じました。
 残響が豊かで、天井から音が降り注ぎ、四方から音に包まれるような感覚でした。ホールの違いによるのでしょうが、たまに別のホールで聴くのも新鮮で良いですね。
 でも、音響、視覚面を含めて、わがホームグランドのりゅーとぴあの方が好きですけれど・・。演奏は素晴らしく、快活で躍動感が感じられ、1曲目から早速ブラボーが贈られました。

 続いては、交響曲第1番です。この曲は、ベートーヴェンの交響曲の中でも2番と並んで演奏される機会は少ないと思いますが、学生時代にベートーヴェンの交響曲を聴くと単位がもらえるという講義を取り、この曲も何度か聴いていて、メロディが頭に残っています。
 そんな若き日の想い出を思い起こしながら聴いていましたが、スピード感があり、明るく生き生きとして踊り出したくなるような演奏に、精神的高揚感を感じました。
 年齢的には老練の域にあるはずの秋山さんが、これほどにも若々しく清々しい音楽を聴かせてくれるなんて、予想していませんでした。東響の皆さんも見事なアンサンブルで秋山さんの指揮に応えていました。
 交響曲第1番がこれほど魅力的だとはこれまで思うことはなく、この曲に対しての認識を新たにしました。まさに秋山マジックと言えましょうか。ホールは熱気に包まれ、大きな拍手とブラボーが贈られました。

 休憩後の後半は、ピアノの北村さん、ヴァイオリンの山根さん、チェロの横坂さんを迎えて、三重協奏曲です。特にわが郷土の誇りである横坂さんの演奏に期待が高まりました。
 この曲は、録音・録画で聴いたことはありますが、これまで生で聴いたことはなく、どんな演奏を聴かせてくれるか楽しみでした。
 曲のせいもあるのでしょうが、各ソリストともやや抑え気味な演奏で、繊細さを感じさせました。低弦の序奏で始まり、これにヴァイオリンが加わりますと、山根さんも弦楽合奏に加わり出番を待っておられました。
 そしてチェロ、ヴァイオリン、ピアノと、3人が順にソロをとり、その後は互いに競い合うことなく、寄り添い合い、爽やかな音楽を作り出していました。
 曲自身が独奏者が超絶技巧をひけらかすような曲ではありませんので、3人のソリストを要する割りには地味に感じます。曲の魅力という点では特に優れているとは思えませんが、ソリストと東響の皆さんの好演もあって、気持ち良く聴かせていただきました。
 才能溢れる次代を担う若き俊英たちを熟練の秋山さんが優しくサポートし、心もほっとするような、心温まる音楽に感動しました。

 鳴り止まない大きな拍手とブラボーに応えて、アンコールにシューベルトのピアノトリオが演奏され、爽やかな感動の中に終演となりました。

 最初はちょっとと言いますか、かなり地味なプログラムに感じましたが、終わってみれば感動の演奏会になっていました。これは秋山さんのなせる技であり、さすがに東響の桂冠指揮者だけはありますね。
 秋山さんは新潟でも何度も指揮をされており、今年の3月の新潟定期にも来演されていますが、毎回はずれはありません。今シーズンの来演は予定されていませんが、次の来演を楽しみに待ちたいと思います。

 コンサートが終わり新潟への帰路に着きました。オペラシティに直結している京王新線の初台駅から新宿駅へ。中央線快速に乗り換えて東京駅へ。そして今、新幹線の車中でこの文章を書いています。

 ここまで書き終わったところで大清水トンネルに入り、ちょうど新潟県に入りました。新潟駅に着くまでもう少し時間があります。スマホを閉じて、ひと休みしましょう。
 

(客席:1階17-23、S席:新潟定期会員招待)