海の日の休日。だいしホールへ向かうため白山公園横を通りましたら、ものすごい混雑でした。ブルーインパルスの展示飛行があるため、観覧場所として陸上競技場が開放されたこともあってのことのようです。
駐車場に入る車の長い行列を横目に、だいしホールへと車を進めました。ホール横のコインパーキングに車をとめ、だいしホールに入りますと、すでに開場待ちの列ができていて、係員に促されるまま、私もその列に並びました。予定開場時間よりかなり早めに開場され、いつもの左手中段に席を取りました。
チケット完売とのことですが、当日券の発売がありました。観客の皆さんの出だしは遅く、開演間近になってもかなりの空席が目立ちました。どうしたんでしょうね。交通渋滞のためでしょうか。結局、空席は全部埋まらないまま開演となりました。
さて、乾さんはギリシャ人の母と日本人の父との間でベルギーのブリュッセルで生まれました。ブリュッセルの音楽アカデミーと王立音楽院で学んだ後、パリ国立高等音楽院、ドイツのカールスルーエ国立音楽大で学び、いずれも首席で卒業し、数々のコンクールで優勝していますので、ものすごい経歴ですね。ベルギーで教えを受けた先生がイザイの直系の弟子であり、乾さんもイザイの直系ということになります。
お父さんが福島県出身であり、東日本大震災後は、毎年復興支援コンサートを開催しているそうです。私は見逃してしまいましたが、テレビ番組で紹介されたそうですね。
小柄な日本人体型の乾さんが登場して、イザイの無伴奏ヴァイオリンソナタ第3番で開演しました。単一楽章の曲でしたが、圧倒的演奏テクニックと音量豊かな豊潤な音色に魅了されました。
ここで、清水研作さんが登場して解説をし、イザイの無伴奏ヴァイオリンソナタ第5番が演奏されました。この曲は2楽章からなりますが、左手でのピッチカートなど、素人目にも高度な演奏技術を要しており、超絶的な演奏に息をのむばかりでした。
再び清水さんが登場して、自作曲の「情熱的詩曲」紹介をした後、演奏が始まりました。いかにも現代曲という曲であり、最初は凡人を拒絶すような威圧感を感じました。ヴァイオリンもピアノも不協和音を奏でながら、いつしか耳になじむようになり、やがて音の建築物を作り上げていきました。曲というより音の響きを楽しみました。
休憩後は乾さんと清水さんの対談で始まりましたが、話をする乾さんは日本人そのもの。5か国語を操るといいますからたいしたものですね。イザイについて、そして次に演奏するフランクについてなど、興味深いお話が聞けて良かったです。
一旦退場し、後半のフランクのヴァイオリンソナタが演奏されました。前半同様にヴァイオリンは力強い音色であり、重心の低い濃密な音楽が奏でられました。対峙するピアノも素晴らしく、甘さを排した男の音楽がそこにありました。
だいしホールのベーゼンドルファーの音色とよく合ったヴァイオリンの音色であり、ピアノの音を凌駕するほどにパワーあふれるヴァイオリンに驚嘆しました。メラメラと燃え上がる終楽章でホールを埋める聴衆を興奮させて演奏が終わりました。
拍手に応えて、ヴァイオリンとピアノにより、清水さんが乾さんに贈ったという「ふるさと」の編曲版が演奏され、さらに鳴り止まない拍手に応えて、パガニーニのカプリース第13番を演奏して、超絶技巧に驚嘆する中に終演となりました。
うわさには聞いていましたが、予想以上の演奏に大満足でした。こういう素晴らしい演奏家を招聘するだいしホールの眼力にも拍手を贈りたいと思います。
興奮した気持ちを抑えながら家路につきましたが、新潟市内は大渋滞。例のブルーインパルスの飛行が終わって、観客が一斉に帰る時間に重なり、新潟島から脱出すのに相当な時間を要してしまいました。暑さも半端じゃなく、バス待ちをする長い行列の皆さんが心配になりました。それにしましても、花火大会の後の様な大混雑には驚きました。
(客席:G-6、¥2000) |