五來貴洋 ヴァイオリンリサイタル
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2017年9月3日(土)14:00 だいしホール
 
ウァイオリン:五來貴洋
ピアノ:吉兼加奈子
 
クライスラー:コレルリの主題による変奏曲

バッハ:無伴奏パルティータ第2番 ニ短調 BWV1004 より シャコンヌ

イザイ:サン=サーンスの〜「ワルツ形式の練習曲」によるカプリース 作品52

(休憩20分)

コルンゴルト:組曲「から騒ぎ」 作品11
 T.新婚夫婦の寝室の中の女中
 U.林檎とスローベローワイン
 V.庭園の情景
 W.仮装舞踏会

フランク:ピアノとウァイオリンのためのソナタ イ長調


(アンコール)
R.シュトラウス:子守歌

 かつて新潟大学管弦楽団の名コンサートマスターとして活躍され、その後、ウィーンで研鑽を積まれた五來さんの初リサイタルです。
 新潟大学時代のシェエラザードの伝説の名演は、今も印象に残っていますが、あれから11年にもなるんですね。その後音楽家としてどのように成長されたか大変楽しみでした。初リサイタルの地として、学生時代をすごした第二の故郷・新潟を選んでくれたことはありがたいことです。

 家でゆっくりと昼食を摂り、昨日も参加したフルマチクラシックフェスタに立ち寄り、SHIMOHONCHO QUARTETの皆さんの演奏を少しだけ聴かせていただきました。
 高橋さんご夫婦のクラリネット、奥村さんの筝、そして山際さんのキーボードと歌。ちょっと変わった編成ですが、素晴らしい音楽を聴かせてくれます。
 箏とキーボードのパワーあふれる演奏に引き続いて、山際さんの美しい歌声にうっとりと聴き入りました。ピアニストとしての山際さん、歌手としての山際さん、いずれも魅力的ですね。
 もっと聴きたいところではありましたが、五來さんの開場時間が過ぎていましたので、急いでだいしホールへと向かいました。

 いつもの左前方に席を取り、開演を待ちました。客の入りとしましては、ほどほどでしょうか。新潟出身というわけではなく、知名度は低いと言わざるをえないことを考えますと、まずまずの集客ができたのではないでしょうか。
 ピアノの右横には華やかな生花が飾られていました。天井からの吊り下げマイクのほかに、ステージ上には、ヴァイオリン用、ピアノ用の独立したマイクが設置され、録音にも気を遣っているようでした。

 五來さんと青緑色のドレスの吉兼さんが登場して、クライスラーで開演しました。最初は緊張した印象を受けましたが、実直で誠実な演奏振りに感銘を受けました。
 シャコンヌは渾身の演奏と申しましょうか、内に秘めたパワーが聴く者の心にも響いてきました。前半最後のイザイでも演奏技巧の素晴らしさを感じさせました。

 休憩後の後半はコルンゴルトで開演しました。流れるようにメロディを歌わせ、優しい調べに酔いしれました。終曲は華やかな舞踏会が目に浮かぶような躍動感を感じました。

 そして圧巻はフランクのソナタです。これまで控えめに伴奏していた吉兼さんも、パワー全開に力を発揮しました。ピアノとヴァイオリンが甘く語り合ったかと思えば、情熱豊かに交わり合い、聴き応えある音楽世界を作り出していました。

 カーテンコールと花束贈呈の後、五來さんの挨拶があり、アンコールにリヒャルト・シュトラウスの子守歌を演奏して終演となりました。帰りには、一人ひとり見送ってくださり、温かな気分にしてくれました。

 残半、後半のそれぞれ1曲目に、留学していたウィーンに縁の作曲家の曲を取り上げ、多彩・多様なプログラムが組まれました。名曲コンサートに終わらない意欲的なプログラムは、初リサイタルへの強い意気込みを感じさせました。

 ヴァイオリンは、低音から高音まで音が良く出ていて、音量豊かに、ホールいっぱいに濁りのない、クリアな音が響き渡りました。
 初リサイタルながらも高水準な演奏を聴かせてくれて、これからの更なる発展が楽しみです。陰ながら応援していきたいと思います。

 若き俊英の旅立ちに立ち会うことができた幸せを感じながら、爽やかな気分で家路につきました。
  

(客席::F-6、\2000)