トリオ・ベルガルモ演奏会  織りなす色彩
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2013年6月22日(土) 14:00  新潟県立近代美術館 講堂
 
Vn:庄司 愛、Vc:渋谷陽子、Pf:石井朋子
 
 

 
グリーグ:アンダンテ・コン・モート ハ短調

武満 徹:ビトゥイーン・タイズ 〜ヴァイオリン、チェロ、ピアノのための〜

(休憩10分)

ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調

(アンコール)
サティ:Je te veux
 
 

 先週に引き続いての長岡です。トリオ・ベルガルモのファンを自認する私は、このコンサートは是非聴かねばなりません。本来なら、新潟公演を聴くべきなのでしょうが、新潟の昼の部は、潟響定期と重なりますし、夜の部は所用で聴けません。ということで、長岡までの遠征となりました。幸い今日は、6月唯一の土曜休みが取れましたので、遠征が実現できました。
 ベルガルモは、5月の「新潟クラシックストリート」で聴いていますが、ちゃんとしたコンサートは昨年12月のクリスマスコンサート以来になります。

 今日は午前中は曇り空で、小雨がぱらついたりもありましたが、その後は晴れ間も見えて、暑すぎもせず、過ごしやすく感じました。いつものように、分水・与板から農道経由で長岡入り。自宅から50km、75分の快適なドライブで、高速を使うより便利です。

 予定より早めに着きましたので、美術館で開催されていた「新潟の風景」という展覧会を見てからコンサートに臨みました。このホールは初めてですが、講堂とあるように、音楽専用ではなく、椅子にはテーブルも格納されていました。補助椅子を入れて200席程度とのことで、「だいしホール」を一回り小さくしたような大きさです。椅子は座り心地が良かったです。

 自由席でしたので、私は開場とともに入場し、最前列正面に席を取りました。客の入りは、残念ながら多くはありませんでしたが、あまり宣伝していませんでしたし、当日券の販売もしないということでしたので、仕方ないところでしょう。私のように新潟からの遠征者も数人おられたようです。

 ブルーのドレスの庄司さん、黒のドレスの渋谷さん、グリーンのドレスの石井さんが登場して開演です。最初はグリーグの曲。5月の「新潟クラシックストリート」でも演奏された曲です。3人の息もピッタリの演奏に、早くも心奪われました。

 続いては武満の曲。これは、現代曲だけあって、ちょっと馴染みがたい曲でした。こういう曲を楽しむだけの素養は私にはありませんが、演奏そのものは良かったのではないでしょうか。

 休憩の後は、メインのラヴェルの三重奏曲です。第1楽章、第2楽章と、3人がせめぎ合ったり、寄り添ったりと、迫真の演奏に、高揚感を感じました。思わず第2楽章の後に拍手する人もいましたが、その気持ちも理解できました。
 第3楽章は、ピアノの地を這うような低音の演奏に始まり、それにチェロが低音で応え、ヴァイオリンがその後を受けるという構成で、三者三様の朗々とした歌わせぶりが心に染みました。
 続けて演奏された第4楽章は、いかにもラヴェルというような色彩感のある演奏で楽しませてくれました。安定感のある石井さんのピアノに支えられて、力強く響かせる渋谷さんのチェロと繊細で輝きのある庄司さんのヴァイオリンが重なり合って、それぞれの個性が生かされた、躍動感ある音楽を創り出していました。良い音楽を聴いたという満足感を感じました。

 庄司さんの挨拶があって、アンコールはラヴェルとのフランスつながりということで、「Je te veux」が演奏されました。編曲も良く、洒落た演奏で、極上のデザートをいただいたという感じでした。最後を締めくくるに良かったと思います。

 最前列正面ということで、音はダイレクトに届いて、演奏の隅々まで堪能することができました。音響的には少し前過ぎたかもしれませんが、ヴィジュアル的にはこれ以上のものはありません。3人の演奏姿にもうっとりとしてしまいました。蛇足ながら、譜めくりの女性も美しかったです。

 終演は3時25分。時間的にはもう1曲あっても良かったかなと思いましたが、濃厚な演奏でしたので、ヴォリューム的には十分に満足でした。長岡まで聴きに来た甲斐のある良い演奏でした。ホールも、音楽専用ではないものの、奏者が身近に感じられるサロン的雰囲気があり、室内楽を聴くには最適に感じました。

 明日は新潟(りゅーとぴあ・スタジオA)での2公演があります。今日がリハーサル代わりとなり、より素晴らしい演奏が期待できるものと思います。

 新潟の誇るミューズたち。今後の益々の活躍を、陰ながら応援したと思います。
 

(客席:B-4、全席自由:¥1500)