ゲルギエフ指揮ロンドン交響楽団
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2010年11月27日(土) 18:30  新潟市民芸術文化会館コンサートホール
 
指揮: ワレリー・ゲルギエフ
ヴァイオリン: 諏訪内晶子
 
 
 
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 op.47

(休憩20分)

マーラー:交響曲第1番 ニ長調 「巨人」
 
 

 1995年に初めて聴いて以来ゲルギエフ・ファンになった私にとりましては、実は今シーズン一番楽しみにしていたコンサートです。ゲルギエフを聴きに、昨年は所沢まで行きましたし、一昨年は福島県のいわきまで遠征しました。何だかんだで毎年のように聴いているのですが、今年は新潟で聴けるので助かりました。それも「りゅーとぴあ友の会N-PACmate会員優待コンサート」として低料金で聴けるため、チケット発売日には良い席を取ろうと大騒ぎしました。電話はつながらず、りゅーとぴあのインフォに並んで何とかCブロックを確保することができました。

 ゲルギエフの新潟への来演は、1998年12月のりゅーとぴあ開館記念のキーロフ歌劇場(マリインスキー歌劇場)の連続演奏会に始まり、2000年4月にはロッテルダム・フィル、そして、2002年11月にはマリインスキー歌劇場管弦楽団との演奏会がありましたが、その後の来演がありませんでした。今回は実に8年ぶりとなります。日本には毎年来ているのに、新潟にはなかなか来てくれず、待ちに待ったという感じです。
 また、ロンドン交響楽団の新潟への来演は、2004年3月にコリン・デイヴィスと来て以来となりますから、6年ぶりになります。

 前置きが長くなってしまいましたが、今日は家内と末娘と3人で聴きに行きました。先週の穏やかな天候とは打って変わって、今週は冷たい雨の日が続き、憂鬱な日々でした。今日は天気予報とは裏腹に青空が広がり気持ち良かったですが、夕方には厚い雲に覆われ、雨がぱらついてしまいました。しかし、天候は何とか持ちこたえ、荒れないで良かったです。

 ホールに着くとロビーは開場待ちの人たちで賑わっていました。格安の公演であり、満席かと思いましたが、ステージ周囲や3階のサイド席などに空席が目立ちました。

 拍手の中楽員が入場。ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置で、コントラバスは第1ヴァイオリンの後方の一番左手に配置されていました。オケのサイズはいわゆる16型です。チューニングが終わった後にコンマスが登場しましたが、これはロンドン響の流儀のようです。

 背中が開いた濃紺のドレスの諏訪内さんとゲルギエフが登場して、前半はシベリウスです。最初の弦のトレモロから良い音がしていて、名演の予感がしました。浪々と響き渡る諏訪内さんのヴァイオリン(ドルフィン)は音色がきれいであり、うっとりと聴き入りました。音量豊かであり、妖艶さを感じさせる情熱的な演奏でした。芯の通ったヴァイオリンはオーケストラに埋もれることなく、凛としていました。この諏訪内さんを前にして、ゲルギエフの存在感も薄らいでいたように感じました。
 諏訪内さんを聴くのは、2004年9月にオーケストラアンサンブル金沢との共演以来になりますが、ますます油が乗って円熟味が増し、日本人のヴァイオリニストとしては現在最高ではないでしょうか。
 偶然でしょうが、このシベリウスの協奏曲は前回のロンドン響新潟公演でも演奏されています。そのときのソリストは庄司紗矢香さんでしたが、今日の演奏の方がずっと良かったです。諏訪内さんが演奏する姿は堂々として美しく、まるで女神が降臨しているようであり、ヴィジュアル的にも最高級でした。この演奏を聴けただけでも今日は満足という気分でした。
 拍手に応え、諏訪内さんのアンコールを期待しましたが、盛大な拍手が続いているにも関わらず、場内の照明が明るくされ、そのまま休憩に入ってしまいました。昨夜のサントリーホールではアンコールがあったというのに・・・。

 後半はメインのマーラーです。ステージいっぱいのオケは壮観です。演奏はやや早めのテンポで、いかにもゲルギエフらしいエネルギッシュな演奏でした。
 ゲルギエフはいつものように指揮棒は持たず、蝶が舞うような指使いで指揮していました。オケは良く鳴っており、迫力はありましたが、ピアニシモでも音量があり、繊細な美しさは感じられず、演奏は荒っぽく感じてしまいました。外面的な迫力はあったものの、内面的な深遠さは乏しかったように思います。
 もっとゆったりと歌わせるべきところは歌わせてほしかっと思いました。第4楽章中間部の甘美なメロディも感情豊かに演奏してほしかったのですが、足早に、そっけなく演奏されました。
 でも、最後のクライマックスで、指示通りホルンを起立させたのは良かったです。ここはこうじゃなきゃというのが私のこの曲での一番のこだわりです。
 なお、第3楽章の出だしは、通常コントラバスのソロで演奏されることが多いと思うのですが、コントラバス8台の合奏で演奏されました。

 実は、この曲はちょうど4週間前に、大阪でメータ指揮イスラエル・フィルの演奏で聴いたばかりなのですが、オケのアンサンブルや弦の音色、うねるような感情の表現など、演奏の質としてはイスラエル・フィルのほうが上だったと思います。でも、イスラエル・フィルはフィナーレでのホルンの起立がなくて、ちょっと欲求不満でしたが、今日はバッチリとホルンの起立があって迫力満点でした。終わり良ければ全て良し。ちょっと奥深さのない、雑な演奏という印象を持ちながら聴いていましたが、最後をうまく爆発させて感動をいただきました。
 
 時間的にもアンコールがあるものと思いましたが、カーテンコールもほどほどに、アンコールなしで終演となりました。昨日はサントリーホールで演奏し、明日は15時から文京シビックホールでの演奏があります。おそらく今日中に帰京するため終演を急いでいたのかもしれません。新潟には冷たいのかなあ・・。実際スケジュールが詰まりすぎているんでしょうね。

 前半のシベリウスは諏訪内さんの好演もあって大満足でしたが、後半はイマイチというのが正直な感想です。ゲルギエフ/ロンドン響のマーラーのCDは全て聴いていますが、残念ながら最高とはいえません。ロシア物では右に出る者はいないゲルギエフではありますが、マーラーに関してはもう一歩と思います。

 アンコールで盛り上げて終演となれば後味が良かったと思うのですが、2時間も経たない8時25分にあっけなく終演になったのは残念でした。期待しすぎていた分、満足感は8分目というところでしょうか。でも、末娘は鳥肌が立ったと感動していて、連れてきた甲斐がありました。

 外に出ると肌寒く、ライトアップされた公園の木々は落葉して寒々としています。天気予報が外れて、荒れないで良かったです。
  

(2階C7−8、 会員優待:10000円)