ロンドン交響楽団
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2004年3月10日 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:サー・コリン・デイヴィズ
ヴァイオリン:庄司紗矢香
 
シベリウス:交響詩「大洋の女神」op.73

シベリウス:ヴァイオリン協奏曲ニ短調 op.47

(アンコール) 
イザイ:ソナタ第2番より プレリュード

(休憩20分)

ストラヴィンスキー:バレエ音楽「火の鳥」全曲

(アンコール)
チャイコフスキー:歌劇「エフゲニオネーギン」よりポロネーズ

 
 
 

 昨年から楽しみにしていたコンサートです。個人的にはデイヴィスが指揮する「火の鳥」が楽しみ。アナログ時代の末期に、デイヴィスはコンセルトヘボウとの組み合わせで、フィリップスにストラヴィンスキーのすばらしい録音を残しており、当時は愛聴していました。
 その後社会人となり、忙しさから音楽を楽しむ余裕のなかった時期が続き、その間に世の中はCDの時代へと変わって行きました。たくさんのLPは実家の倉庫に埃をかぶり、今となっては再生装置もありません。
 そんな中でコリン・デイヴィスの新譜を買うこともなく、彼の名は私の記憶から薄れようとしてしていたところでしたが、久しぶりに聞くデイヴィスの名に懐かしさと期待感が沸き上がり、LP時代に感動した若き日の熱き思いが胸の中を駆けめぐりました。あれから25年も経ってるのか・・・。

 そして、もうひとつの楽しみはやはり庄司紗矢香。2001年7月に、アシュケナージ指揮フィルハーモニア管弦楽団と当地新潟でメンデルスゾーンの協奏曲を演奏して感動を与えてくれました。その後東響定期で来演するはずでしたがベルリンフィルとの共演が決まりキャンセルになったという経緯もあります。若手ヴァイオリニストとして今最も活躍しているひとりであり、その成長ぶりに期待が膨らみます。

 さて、このところ忙しく、前夜も当直勤務で頭がボーッとして重いです。眠気を覚えながらも何とか開演10分前にホールに到着。プログラムを買って席へと急ぎました。(このプログラムは1000円で販売していたのですが、内容と比較するとあまりに高いです。) 
 客席は両サイドに空席が目立ち、7分程度の入りでしょうか。完売間違いなしの人気公演と勝手に思い込んでいたので驚きでした。

 予定時間から少し遅れて楽員が入場。チューニングが終わった後に漸くコンマスが入場。(コンマスはチューニングしなくていいのかなあ・・。) そしてデイヴィス登場。今年77歳になるはずですが、お元気そうです。

 1曲目は初めて聴く曲。シベリウスは一部の有名曲以外はあまり聴くことはなかったのですが、他にもなかなかいい曲があるんだなあと感銘を受けました。オーケストラの音色も美しかったです。余韻を味わおうと思ったらブラボー屋さんが間髪を入れずに大きな拍手。いつもながら困ったものです。余韻を味わう精神的余裕を持ってほしいなあ。

 そして2曲目は庄司紗矢香登場。グリーンのドレスが瑞々しいです。繊細な緊張感あふれる演奏であり、聴く方も疲れました。決して派手な演奏ではなく、音量もやや少なめで、疲れがたまってボーッとした頭には試練のひとときでした。
 これまでCDで何気なく聴いていた曲とは同じに思えませんでした。生演奏でのこういう緊張感がたまりません。演奏者と観客との勝負です。ときにオケと噛み合わないで浮き上がったり、逆にオケに埋没したりということもありましたが、若さ、初々しさとは裏腹の精神性の高い演奏に、ボーッとした頭で臨んでいた私は打ちのめされました。この若さで、こんなに昇華した演奏でいいのでしょうか。もっと若さいっぱい元気いっぱいの演奏の方が聴く方は疲れないに違いありません。疲労困憊し、意識もうろうとなりかけましたが、ブラボー屋さんの大声でふと我に帰りました。
疲れのみが残り、精神的高揚に至らなかったのはなぜでしょうか。聴く側のコンディションの問題も大きかったのだろうと思います。

 演奏終了後の小柄で可憐な庄司さんの笑顔や仕草は何ともチャーミングでした。アンコールでイザイを演奏。これがまた堂々とした巨匠然とした演奏。やっぱりただ者じゃないです。楽員からも盛大なる拍手が送られていました。天才少女と騒がれ注目された彼女も今年21歳。もはや少女と表現するのも失礼ですし、海外で着実に実績を積み上げています。これからの活躍をさらに期待させました。

 休憩の後、後半は「火の鳥」。組曲版と違って全曲版は聴く方も大変です。導入部の不気味な低弦の響きが緊張感を高めましたが、前半同様にもうろう頭で臨んだので初めはやや退屈しました。
 しかし、「王女たちのロンド」以降どんどん演奏に引き込まれていきました。オケは良く鳴り、アンサンブルも乱れません。ダイナミックなデイヴィスの指揮にオケも良く応えていました。
 これぞオーケストラの醍醐味。曲自身が大好きなこともありますましが、久し振りに精神の高揚を感じた。さすがデイヴィス。若かりし頃、デイヴィスのLPでストラヴィンスキーにのめり込んでいたことを思い起こします。数年前に東京で聴いたゲルギエフ指揮キーロフ歌劇場管を聴いたときの感動ほどではなかったですが、満足感で幸せ気分でした。
 アンコールもダイナミックな力あふれる演奏。(ちょっと力が入りすぎて荒削りにも感じましたが。) 満席でないのが不思議なくらいのすばらしいコンサートでした。

(客席:2階C8−23、S席)