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「ピアノの森」は、一色まことの名作漫画です。 森に捨てられたピアノと、少年・海の出会いから始まり、成長して最後はショパン国際ピアノコンクールに挑戦するという物語ですが、
コミック全26巻を発売の度に購入し、わくわくしながら読み進めました。映画化、TVアニメ化もされ、人気を博しています。この「ピアノの森」にちなんでイープラスが企画したのが「ピアノの森コンサート」です。
今年のコンサートは TVアニメでピアノ演奏した髙木竜馬とニュウニュウが出演し、7月30日～9月14日が髙木竜馬による「SUMMER」と題されたコンサート、10月18日～11月16日がニュウニュウによる「AUTUMN」と題されたコンサートで、ショパンの名曲をプログラムとして、全国各地で公演されます。
この公演の間を縫って、10月5日（横浜）、11日（軽井沢）、13日（新潟）の3日間には「SPECIAL」と題されたコンサートが開催され、髙木竜馬とニュウニュウの2人が出演します。ショパンのピアノ協奏曲の2曲を、それぞれが弦楽五重奏とともに1曲ずつ演奏し、2人の連弾もあるという特別な演奏会になっています。
現在5年に1度のショパン国際ピアノコンクールの真っ最中であり、ファイナルではピアノ協奏曲第1番か第2番のどちらかを演奏します。この時期にこの両者をまとめて聴けるという「SPECIAL」な演奏会が企画されたとなれば聴くしかありません。
ということで、「ピアノの森」ファンの私は、チケットの発売開始とともに、後先考えずにネット購入してしまいました。私がチケットを購入した後に、遅れてチラシができましたが、いいチラシですよね。
なお、私はイープラスのサイトからチケットを買ったのですが、入金してからチケットの発券が可能になるまで2か月以上待たされ、大丈夫なのかと心配でした。これまでこんなことはなく、今回はどうしたんでしょうね。
さて、今回出演する髙木竜馬さんは、今年の3月22日の五泉市でのリサイタルを聴いたばかりで、大きな感動をいただいたことを思い出します。
また、ニュウニュウ（牛牛）は、2010年8月に、当時13歳のときのリサイタルを聴いており、サイン会でサインをいただいています。あれから15年経ち、どのように成長したのか確かめるのも楽しみでした。
昨日は、たまたま長岡で辻井伸行さんのピアノ独奏と、三浦文彰さん率いるARKソロイスツメンバーによる弦楽五重奏によるショパンのピアノ協奏曲第1番の室内楽版を聴いたばかりなのですが、今日も同じ曲を聴くことになりました。
オーケストラパートが弦楽五重奏になりますと、どうしても薄味にならざるを得ず、響きのないホールで聴いたこともあって、さすがの辻井さんの演奏でも満足感は今ひとつだったのですが、メンバーもホールも違う今日は、どんな演奏になりますでしょうか。
実は過去にショパンのピアノ協奏曲の室内楽版を2曲まとめて聴いたことが過去にありました。2010年10月に、長岡市で仲道郁代さんのピアノでの演奏聴いていましたので、今回は15年ぶりということになります。大いに期待しましょう。
ということで、スポーツの日の朝を迎えました。昨日は雨が降りましたが、今日は曇り空から次第に晴れ間が見えるようになり、穏やかな天候になりました。
ゆっくりと昼食をとり、りゅーとぴあへと車を進めました。白山公園駐車場に車をとめて公園の小道を通りましたが、桜の木々は紅葉し、落葉もみられて、秋の深まりを感じました。
日差しを浴びて、すがすがしい気分で館内に入りますと、ちょうど開場が始まりましたので、私も入場し、ロビーでこの原稿を書きながら開場を待ちました。
開演時間が迫ったところでホールに入りますと、ステージ中央にピアノが置かれ、その前に弦楽五重奏用の椅子と譜面台が設置されていました。そして、その前に額縁に入れられた「ピアノの森」の原画が飾られていました。
客席は3階席は使用されませんでしたが、それなりの入りというところでしょうか。昨日の満席の熱気に満ちた大ホールとは異なり、穏やかな空気感に満たされていました。客層はいつもと異なり、若い人たちが多くみられました。
開演時間となり、ステージ前方に飾られていた「ピアノの森」の原画か片付けられて、場内が暗転し、弦楽五重奏のメンバーが入場して席に着きました。
左から第1ヴァイオリン：東 亮汰さん、第2ヴァイオリン：橘和美優さん、ヴィオラ：川本嘉子さん、チェロ：矢部優典さん、コントラバス：吉田
秀さんで、いずれも実力者揃いです。
ピアノの髙木さんが譜めくりとともに入場してチューニングとなりました。通常コンチェルトは暗譜での演奏と思っていましたが、今回は楽譜を見ながらの演奏でした。譜めくりの美しい女性はどこかで見たような・・・。
準備が整い、ショパンのピアノ協奏曲第2番の演奏開始です。第1楽章の長い序奏が始まりましたが、ふくよかで豊潤な弦楽五重奏のサウンドに驚きました。同じ編成にも関わらず、昨日の長岡市立劇場で聴いた音とは大違いで、昨日はいったいなんだったんだろうと思うほどでした。この弦楽の美しい音色を聴いただけで、ピアノを聴く前から今日のコンサートが素晴らしいものになることが確信されました。
クリアに輝くようなピアノが加わり、ショパンの音楽世界に一気に没入できました。楽譜を見ながらの演奏で、譜めくりさんも大忙しでしたが、髙木さんのピアノは情感に溢れて素晴らしかったです。
第2楽章は、ゆったりとピアノが歌い、熱く盛り上げて緊迫感を生み、静寂の中からクリスタルのようなピアノのサウンドが静かに沸き上がり、その輝きと優しさにうっとりとしました。極上の弦楽五重奏と優しさに満ちたピアノ。夢幻の世界へと誘われました。
第3楽章は、力強く、軽快に走りぬけ、高揚感を生み出しました。緩急を繰り返して、熱くエネルギーを高めてフィナーレとなり、大きな拍手が贈られました。
昨日のドライフラワーのようなといいますか、干物のようなサウンドとは大違いに、弦楽五重奏は豊潤に響き渡り、ピアノも輝きを感じました。
オーケストラ版とは違って、協奏曲としての楽しみのほか、ピアノ六重奏曲としての楽しみを感じ、魅力溢れる演奏に、大きな満足感をいただき、休憩に入りました。
休憩時間中は念入りなピアノの調律がなされていました。ロビーに出ますと、CD販売で賑わっており、その横に開演前にステージに飾られていた「ピアノの森」の原画が展示されていて、写真撮影可との掲示がありました。
休憩時間が終わり、髙木さんが登場して挨拶がありました。髙木さんは、りゅーとぴあは2回目であること、これから登場するニュウニュウさんは13歳のときにここで演奏していることなどを紹介してくれました。
なお、今日使用しているピアノは、カワイの最高峰モデルであるSHIGERU KAWAIのSK-EXを運び込んだそうです。
また、今回の「ピアノの森」のコンサートは、TVアニメの放送とともに始まり、今年は5年目だそうです。演奏曲目の紹介がありましたが、今日は番号順でなく、作曲順で演奏し、前半が作曲が早かったものの出版が遅くなった第2番を演奏し、後半に後から作曲した第1番を演奏することなどを話され、現在開催中のショパン･コンクールではピアノ協奏曲第1番か第2番かを演奏しますが、第2番を弾いて優勝した人は2人だけということなど、楽しく話してくれました。
そして、弦楽五重奏のメンバーの紹介を行い、髙木さんがステージから去りました。少し間を置いてから弦楽五重奏のメンバーが登場して着席し、長身でイケメンのニュウニュウさんが登場してチューニングになりました。髙木さんとは違って、楽譜なしでの演奏です。
いよいよ後半のピアノ協奏曲第1番の演奏開始です。弦楽五重奏の長大な序奏により第1楽章が始まりました。昨日聴いたばかりの曲ですが、全く違ったサウンドであり、前半同様に弦楽五重奏のふくよかで豊潤な響きは美しさに満ちていました。
ピアノが加わって演奏が進みましたが、ピアノの音も前半の髙木さんと同様に、輝きがあり、クリアなサウンドが美しく響きました。
ゆったりと歌わせて、ピアノと弦楽のふくよかで潤いのある音がしみじみと響きました。そして熱く燃えて、緩急の波を繰り返しました。緩徐部での美しさは格別であり、しっとりとしたメランコリックな世界に身を委ねました。ゆったりと熱き思いを次第に高めて行き、スピードを上げて熱量を上げ、再び静けさが訪れて楽章を閉じました。
第2楽章は、繊細で透明感のある弦楽に導かれて、ピアノがゆっくりと、柔らかく加わり、ロマン溢れる夢の世界に身を委ねました。
美しいピアノと極上の弦楽アンサンブル。昨日の演奏はいったい何だったのだろうと自問しました。人気と実力を兼ね備えた昨日のメンバーの演奏よりも数倍美しく感じました。
思いっきりゆったりと情感豊かに歌わせて、沸き上がる感動を抑え切れませんでした。美しいニュウニュウさんのピアノ、そして豊潤な弦楽五重奏。昨日の干からびた音楽ではなく、生きた音楽が眼前にありました。
力強い弦楽とともに第3楽章へ。軽快に、跳ねるように、明るく音楽が展開されました。楽しそうに演奏するニュウニュウさんの表情も良かったです。
緩急を繰り返しながら、熱い思いを次第に高めて、ピアノと弦楽五重奏とが絡み合い、大きなエネルギーとなって昇華し、興奮と感動のフィナーレへと駆け上がりました。
客席から大きな拍手が贈られ、6人のメンバーが何度も拍手に応えていました。全員下がって、これで終わりかと思わせましたが、プログラムにはもう1曲ありました。
髙木さんが出てきて挨拶があり、この間にピアノに椅子がもう1脚準備され、「茶色の小瓶」を演奏する旨のお話しがありました。
この曲はジャズのスタンダードナンバーですが、ニュウニュウさんが編曲したものだそうです。「ピアノの森」では、カイが小学生のときに、音楽室で阿字野が弾いてくれた曲で、ショパンコンクールのガラコンサートのアンコールでカイが演奏した曲だとの解説がありました。
髙木さんが下がって、少し間を置いて7人のメンバーが登場して席に着き、髙木さんとニュウニュウさんの連弾での「茶色の小瓶」の演奏が始まりました。1stがニュウニュウさん、2ndが髙木さんです。
コントラバスが刻むリズムにのせて、ジャジーな雰囲気で軽やかに、楽しく演奏が始まりました。一転してゆったりと、雄大に歌わせて、再びジャジーになって、洒落た雰囲気でスウィングして演奏を締めくくりました。
大きな感動と興奮をもたらして大きな拍手が贈られ、カーテンコールが何度も繰り返されました。ステージの前方に全員が1列に並んで、もうこれで終わりで、「茶色の小瓶」がアンコール代わりだったのかと思わせました。
しかし、拍手が続く中に髙木さんとニュウニュウさんの二人が登場して、連弾（1st：ニュウニュウ、2nd：髙木）で「トルコ行進曲」が驚きの猛スピードで演奏され、これまで以上の興奮をもたらしてくれました。
再び全員がステージに出てきて並び、拍手に何度も応えて、感動の演奏会は終演となりました。終演後はCD購入者のサイン会も開催され、女性方で賑わっていました。
髙木さん、ニュウニュウさんのピアノ、そして弦楽メンバーのいずれもが素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれました。
特に13歳のときのニュウニュウさんの演奏を聴いている私としましては、長身でイケメンに成長した姿を目にして、我が子の成長をみるかのような感慨に浸りました。いいピアニストに成長してうれしく思いました。
昨日同じ曲を、同じ編成で聴いているのですが、全く違った印象でした。昨日は辻井伸行さん、三浦文彰さんなどの豪華メンバーでの演奏で、わざわざ長岡まで遠征したこともあり、感動しなければ損だという思いで聴いていたのが真実かもしれません。
昨日の演奏は悪いはずはなかったのですが、音が良くありませんでした。残響のない巨大な容積のホールで聴く室内楽は、潤いが全くなく、感動もイマイチでした。
今日の演奏は、演奏の良さと、ホールの豊潤な響きが相乗的に作用して、感動を何倍にも高めてくれたものと思います。
ホールも楽器だという事実をまざまざと見せ付けられたように思います。図らずもりゅーとぴあの素晴らしさを再認識させてくれた演奏会でした。
また、特別に搬入されたカワイの最高峰モデルのSK-EXの豊潤な音色にも感嘆しました。さすが今年のショパン・コンクールでスタインウェイに続いて多くのコンテスタントに選ばれたピアノだけはありますね。
大きな感動とともに外に出ますと、雲は多いものの爽やかな秋の風が吹き渡り、気分良く駐車場へと向かいました。西日に向かって車を進め、帰宅の途に着きました。
（客席：2階C5-11、￥6000） |
