仲道郁代 ショパン ピアノ協奏曲 室内楽版演奏会
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2010年10月15日(金) 19:00  長岡リリックホール コンサートホール
 
ピアノ: 仲道郁代
ヴァイオリン: 島田真千子、井上静香、ヴィオラ: 大島 亮、チェロ: 植木昭雄
 
 


ショパン:ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21 (ピアノ&弦楽四重奏)

(休憩15分)

ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11 (ピアノ&弦楽四重奏)


(アンコール)
ショパン:ノクターン 遺作 嬰ハ短調
 
 

 何とも素敵なチラシです。仲道さんの微笑みに悩殺され、予定も考えぬままチケットを買ってしまいました。平日夜に長岡でコンサートを聴くなんて、冷静に考えれば無理なのは明らか。2000円と格安でもあり、だめを承知で買ったしだいです。チケットは早々に完売となり、何とか有効にせねばと思案しました。
 今年は夏休みを取っていませんし、たまには早く帰らせていただくことにして、職場に根回しして、5時に帰らせていただくことにしました。無事開演に間に合い、コンサートに臨むことができました。

 仲道さんは長岡では毎年コンサートを開催しているのに、新潟市には来てくれません。昨年は新発田市でのコンサートに駆けつけて感動をいただきました。今日はピアノ協奏曲の室内楽版という興味あるプログラムであり、期待が膨らみました。

 ホールに入場するとピアノの調律が入念に行われていました。チケット完売だけあって、ホール内はにぎやかです。程よい大きさ、程よい響きのホールはピアノや室内楽には最適です。

 クリーム色のドレスの仲道さんが登場して、曲目の解説がありました。室内楽版の楽譜はショパン自身の手によるものだそうですが、演奏される機会はほとんどなく、仲道さんも今夜が始めての演奏だそうです。昨日初めて弦楽四重奏と合わせたそうでした。

 仲道さんは一旦退場し、弦楽四重奏のメンバーと一緒に登場していよいよ開演です。第2ヴァイオリンの井上さんは新潟出身でお馴染みですが、他メンバーは存じ上げません。
 番号順じゃなく作曲順ということで、前半は第2番の演奏です。室内楽版のピアノパートは通常と若干異なっているためか、仲道さんは楽譜を見ながらの演奏で、譜めくりのお姉さんも大忙しでした。

 弦楽四重奏は良い音色であり、アンサンブルもお見事。各奏者の実力の高さがすぐにわかりました。仲道さんの演奏は当然ながら美しく、視覚も含めてうっとりしましたが、ピアノ協奏曲として考えると問題も感じました。
 通常のオーケストラ版に慣れ親しんでいますので、ピアノ五重奏としての演奏は、淡白に聴こえます。ピアノと弦が対峙するのではなく、互いに寄り添うような調和を求めた演奏に感じました。
 それはそれで魅力あるものではあります。しかし、弦楽四重奏は透明感はあるものの、当然ながら音の厚みに乏しく、ロマンチックな感傷は排除され、今ひとつ感動しきれない感じがありました。斜め前に落ち着きなくコソコソ話している母娘がいたのも悪要因だったと思います。

 休憩後、仲道さんは水色のドレスに衣裳替えし、弦楽メンバーと一緒に登場しました。演奏に先立ち、仲道さんによる弦楽メンバーの紹介とインタビューがありました。ヴィオラやチェロパートにおいしいメロディがたくさん出てくるので、オケで演奏するより楽しいと話していたことが面白かったです。

 そのまま第1番の演奏に入りました。前半で慣れたせいか、演奏を楽しむことができました。贅肉がそぎ落とされた弦楽四重奏は緊張感にあふれ、その演奏は胸に迫ります。しかし、濃厚なロマン性は薄められ、やはり欲求不満は禁じ得ません。新しいピアノ五重奏曲と考えれば良いのでしょうけれど。

 仲道さん単独のアンコ−ルは素晴らしかったです。ノクターンの悲しいメロディが心の琴線を刺激します。このままピアノをもっと聴いていたく感じましたが、残念ながら終演となりました。

 室内楽版という試みは賞賛に値すると思いますが、中途半端な印象を感じました。どうせ協奏曲をやるなら、小編成でも良いので、オケとやるべきかと思います。弦楽四重奏と共演するなら、別の曲が良かったかも・・。

 と、いろいろ感じる点は多かったのですが、仲道さんはいいですねえ・・。年齢を超越した美しさ、愛らしさ、トークのうまさ、つぶやきながらの演奏の姿も素晴らしく、ヴィジュアル的にも一級品です。ますますファンになってしまうのでした。
 

(客席:14−30、2000円)