今日は2018年10月以来、久しぶりのN響の演奏会です。前回は井上道義さんの指揮でしたが、今回は沼尻竜典さんの指揮です。メインのシューマンの交響曲は好きではないので、演目に魅力は感じませんが、せっかくの新潟公演ですので、聴かせていただくことにしました。
沼尻さんの演奏を聴くのは、2021年3月の東響新潟特別演奏会以来ですので、3年振りになります。このときの演奏は素晴らしいもので、「2021年コンサート・マイ・ベスト10」に載せさせていただきましたので、今日も天下のN響から素晴らしい演奏を引き出してくれるものと期待が高まりました。
なお、この2020/21年のシーズンは、新型コロナ禍で定期演奏会は全て中止になり、新潟特別演奏会として6回の演奏会が開催されました。今となっては懐かしい思い出です。
そして、チェロのカミーユ・トマは、1988年にパリで生まれたフランスのチェリストだそうですが、不勉強な私は、今回初めてその名前を知りました。美貌もさることながら、N響が招聘するほどのソリストですので、それなりの演奏は期待できそうに思い、楽しみにしました。
さて、この演奏会はNHK新潟放送局とNHK交響楽団の主催ですが、チラシの下端に大きく協賛企業の広告が印刷されていました。見苦しいですので、上のチラシの写真では削除しましたが、公共放送とはいえ、経費削減のためチラシにも広告を載せるようになったのですね。できれば広告は裏面にしてほしかったですけれど。
なお、この公演と同じプログラムで、2月21日に東京芸術劇場、22日に松本のキッセイ文化ホールで公演が行われ、明日は金沢で公演が予定されていましたが、能登半島地震の関係で中止になりました。今日は3公演目ですので、こなれた演奏が聴けるものと期待されました。
暖冬で雪が消え、春が来たかのような陽気になりましたが、今週は一気に冬に逆戻りして、雪が降ったり、肌寒い日が続いています。
今日も朝から曇り空でしたが、雨や雪は降らず、肌寒さはあるものの、過ごしやすい土曜日になりました。与えられた雑務をこなし、某所で安価な昼食を摂り、りゅーとぴあへと向かいました。
今日は、このコンサートのほかに、県民会館では坂東玉三郎の公演、音楽文化会館では某高校吹奏楽部の演奏会、劇場では人気落語家の公演、スタジオAでは演奏サークルぽんぽこの公演があり、スタジオBではNoismの公開リハーサル、能楽堂でも催しがあり、各会場ともフル稼働のため、駐車場は大混雑となりました。
私はそれを見越して早めに行きましが、白山公園駐車場はすでに満車になっていて、陸上競技場駐車場に駐車しました。賑わって何よりと思います。
県民会館を覗いてりゅーとぴあ入りし、インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、チラシ集めをしているうちに開場となりました。早めに席に着いて、この原稿を書きながら開演を待ちました。
ステージでは団員の皆さんが音出しをしており、気分が盛り上がりました。開演時間が近付くに連れ、客席の各ブロックとも満遍なく席が埋まり、大盛況となりました。さすがN響ですね。東響新潟定期もこれくらい入ってくれると良いのですけれど。
開演時間となり、拍手の中に団員が入場し、全員揃うまで起立して待ち、最後にゲストコンマスの郷古さんが登場して大きな拍手が贈られ、チューニングとなりました。オケは通常の並びで14型で、弦5部は
14-12-10-8-6 です。指揮台には、珍しく手摺が付けられていました。
沼尻さんが登場して、1曲目はドヴォルザークのスラブ舞曲第1番です。厚みのあるゴージャスなサウンドで、さすがN響と感じさせました。
ただし、音響的には美しかったですが、賑やかにパワフルに鳴らしすぎて、私がイメージするスラブ舞曲らしさは感じられませんでした。私の好みとしては、豪快さよりも、軽快さ、しなやかさがほしいところでした。
ステージが整えられてチェロの演奏台が設置され、弦の編成が小さくなり12型(12-10-8-6-4)となりました。水色基調に赤が入ったドレス姿が美しい長身のトマさんと沼尻さんが登場して、2曲目はドヴォルザークのチェロ協奏曲です。
長い序奏にじらされた後にチェロが加わります。チェロに期待していたのですが、チェロの鳴りが良くなく、音量・パワーに欠けて、潤いのない枯れたサウンドに感じました。
楽器は日本財団から貸与されているストラディヴァリウス「フォイアマン」とのことですが、サウンドは私好みではありません。楽器のせいなのか演奏のせいなのかわかりませんが、少なくともドヴォルザークとは合わないように感じました。
バックのオケは、1曲目と同様に、明るく華やかで、力強くグイグイと突き進み、チェロはオケに埋没していました。
第1楽章が終わると、遅れて入場した多数の観客の足音で小休止し、静まるのを待って第2楽章が開始されました。緩徐楽章ですので、音量のないチェロでも聴き所が多く、うっとりと聴き入る場面も多々ありましたが、枯れた印象は変わりありませんでした。
終楽章も同様であり、明るく、ふくよかで豊潤なオケに、チェロは埋もれていました。そんな弱々しいチェロにお構いなしに、オケは同じリズムを刻み続け、チェリストに寄り添うことなく、力でねじ伏せていました。
これはこれで、豪快さのある気持ちよい演奏ではありましたが、チェロに寄り添う優しさがあっても良かったかなと感じました。
カーテンコールでは、大きな拍手が贈られ、ブラボーの声も聞かれて、ソリストアンコールを期待しましたが、そのまま休憩に入りました。
休憩時間に新潟の音楽界の重鎮のS氏とお話し、前半の演奏の感想をお聞きしましたが、私と同じように、いろいろと思うところが多かったようでした。
休憩時間が終わって、拍手の中に団員が入場。最後にコンマスが入場して大きな拍手が贈られました。弦は14型の編成に戻りましたが、コントラバスが7人になっていました。(14型で演奏した1曲目は6人だったように思いましたが・・)
沼尻さんが登場して、後半はシューマンの交響曲第1番です。春の訪れを告げる金管のファンファーレで演奏開始です。
前半の印象と同様に、厚みのある豊潤なサウンドで、スピード感に溢れる豪快な演奏でしたが、終始力で押しのけるように突き進み、しなやかさには欠けて、穏やかな春の情景を感じさせず、逆に重々しさを感じました。
第2楽章も力でねじ伏せられ、優しさが感じられませんでした。もっとゆったりと、起伏を付けて歌わせたら良いのでは、などと愚考していました。
切れ目なく第3楽章へ突入しましたが、これまで同様に、ずしんと重く響いてきて、過度に力が入った重苦しさを感じました。
アタッカで第4楽章が始まりましたが、曲調もあって、ここではしなやかさも感じられました。スピーディに疾走する音楽は爽快でした。ホルンとフルートに導かれて、軽やかにリズムを刻み、パワーを蓄えながらスピードを上げて、猛スピードでフィナーレへと駆け抜けました。
ちょっと一本調子な印象の演奏でしたが、重戦車がフルスピードで走り抜けるようなパワーに溢れた演奏は、繊細さには欠けましたが、これはこれで気分爽快で心地良いものでした。少なくとも、シューマン嫌いな私でも、文句を付けながらも飽きずに楽しませていただきました。
拍手に応えて、アンコールにドヴォルザークのスラブ舞曲第2番が演奏されました。これもこれまでの演奏を象徴するような演奏で、豪快にオケを鳴らしましたが、荒っぽさと紙一重でした。
スラブ舞曲の中でも、哀愁に満ちた人気曲ですが、そんな哀愁など切り捨てて、賑やかに演奏して終演となりました。個人的には、もうちょっと情感を込めて、しっとりと演奏してほしかったですが・・。
カーテンコールでは写真撮影OKとのことでしたので、私も記念に撮らせていただきました。東響定期も東京ではカーテンコールの撮影可能ですので、いずれ新潟定期もこうなるかもしれませんね。
いろいろと文句を付けたりもしましたが、天下のN響への期待の大きさによるものとご理解ください。オーケストラを聴いたという満足感を感じさせるゴージャスなサウンドは、N響ならではと思います。
まあ、地方公演ですので、繊細さよりも賑やかにオケを鳴らして、理屈ぬきに聴衆を沸かせようという作戦だったのかもしれませんが、私も雑念を排して、素直に感動したいと思います。ただし、チェロはもう少し頑張ってほしかったかな。
粗探しをせずに素直に振り返れば、十分に満足できた演奏会であり、オーケストラの醍醐味を楽しむことができました。
気分晴れやかにホールを後にしますと、夕方5時を過ぎていましたが、まだ明るさが残っており、日没が遅くなっていることを実感しました。白山公園の桜は、まだ壷が膨らんでいませんが、春近しを感じました。
なるほど、シューマンの交響曲第1番をプログラムに選んだのは、春を待つこの時期を考えてのものだったんだなあと思い巡らしながら、急ぎ足で駐車場へと向かいました。
(客席:2階C5-11、S席:¥6000) |