實川 風 ベーゼンドルファーピアノコンサート
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2023年3月3日(金)19:00 五泉市さくらんど会館
ピアノ:實川 風
 
シューマン:子供の情景 Op.15 より
       見知らぬ土地と人々
       トロイメライ

シューベルト=リスト:野ばら D.257
シューベルト=リスト:魔王 D.328

フォーレ:ノクターン第4番 変ホ長調 Op.36

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第23番 ヘ短調「熱情」Op.57

(アンコール)
ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作
J.S.バッハ:主よ、人の望みの喜びよ

 今回は、五泉市の「さくらんど会館」で開催されたコンサートに行ってきました。五泉市の村松地区にある「五泉市さくらんど会館」は、合併前の村松町が建設した施設で、体育館風のイベントホールがあり、パイプ椅子を並べて、最大1000席のイベントが開催できます。

 ステージには音響反射板を備え、ピアノは何とベーゼンドルファーの model290 インペリアルです。この豪華なピアノを活用するため、毎年このピアノによるコンサートが開催されています。昨年は務川慧伍さんでしたが、今年は實川 風さんで、開館30周年記念と題されています。
 これまでもコンサートが開催されるたびに聴きに行きたいと思っていましたが、なかなか行くことはできず、2012年9月の三船優子さんのリサイタル以来ですので10年半振りになります。

 今回は昼・夜の2回公演でしたが、平日ですので昼の部には行けませんが、夜の部には何とか行けそうでした。以前のコンサートで、当日券目当てで行ったところ、チケット完売で入場できなかったことがありましたので、今回は事前にチケットを手配して、参加させていただくことにしました。
 五泉市役所の特設サイトにネットで申し込みますと、後日に料金の納付書が送られてきましたが、銀行の窓口でしか納付できず面倒でした。現地払いかコンビニ払いできると良いのですけれど。

 實川 風(じつかわ かおる)さんは、1989年生まれで、東京藝術大学附属高校・東京藝術大学を首席で卒業し、同大学院で学ばれた後、グラーツ国立音楽大学ポストグラデュエート課程を修了。2015年のロン・ティボー・クレスパン国際コンクール第3位(1位なし)で、最優秀リサイタル賞、最優秀新曲演奏賞を受賞。2016年のカラーリョ国際ピアノコンクールにて第1位・聴衆賞を受賞という経歴を誇ります。国内外で活躍されていますが、私が実演を聴くのは今回が初めてです。
 なお、實川さんは、10月4日の「りゅーとぴあ・1コイン・コンサート」への出演が決まっていますが、平日ですので聴きに行けないことが確定しており、今回のコンサートは貴重です。

 さて、このところ新潟ではなぜかピアノリサイタルが続いており、私は2月以来1か月で4回目のピアノリサイタルとなります。これまで聴いたリサイタルはいずれも素晴らしく、今回も期待が高まりました。
 實川さんは、昨晩五泉入りして、今日の2回公演に備えていたそうです。リハーサルの模様はTwitterで紹介されています。


 今日は3月3日のひな祭り。春を祝いたいところですが、今日は雪が降ったりして天候は落ち着きませんでした。でも、もう少しの辛抱ですね。
 仕事を早めに終えて、阿賀野市から五泉市へと向かいました。五泉市の村松地区と言えば、村松公園を始め、桜の名所として知られています。この名物の桜にちなんだ「さくらんど温泉」にはしばしば行くのですが、「さくらんど会館」は久しぶりです。
 村松市街の中心部、五泉市村松支所の向かいにありますが、国道290号線から細い路地を入った先にありますので、初めての人には分かりにくいかもしれません。

 駐車場に車をとめて、係員の指示で検温を受けて入館。受付で予約券をチケットに引き換えて入場しました。入ってすぐに、過去のコンサートのチラシと出演者のサイン色紙が展示されていて、興味深く拝見しました。
 衝立ての奥に進みますと、いかにも体育館風の平土間の大きなホールに、緑のカーペットが敷かれ、パイプ椅子が間隔を空けて並べられていました。広い空間に客席は250席ですので、余裕は十分すぎて殺風景にも感じます。各椅子の背には大きな文字で席番号が書かれた紙が貼られ、座面にはプログラムと五泉市のガイドブックが置かれていました。
 ステージには、自慢のベーゼンドルファーが鎮座し、調律が行われていました。指定された席は、中盤の左端でしたが、演奏席への見通しは良い場所でした。

 開演時間となり、スリムでイケメンの實川さんが、楽譜用のタブレットを持って登場し、ピアノに設置して開演です。
 1曲目は、シューマンの「見知らぬ土地と人々」を爽やかに、憂いを秘めながら、ゆったりと演奏して、聴衆の心を引きつけました。ここで實川さんの挨拶があり、以後トークと曲目紹介を交えながら演奏が進められました。

 2曲目は、シューマンの「トロイメライ」を、心にしみるように静かに演奏しましたが、ピアニシモは空調の音に隠れてしまうのは残念でした。

 続いては、リスト編曲によるシューベルトの「野ばら」と「魔王」が続けて演奏されました。可憐で爽やかな「野ばら」と、おどろおどろしい「魔王」の対比が鮮やかで、ベーゼンドルファーのふくよかな低音が迫力を生んでいました。

 続いてフォーレの「ノクターン」がしっとりと演奏されましたが、耳が不自由だったフォーレのについてのお話も興味深く拝聴しました。

 そしてプログラム最後は、ベートーヴェンの「熱情」です。實川さんは2年振りの演奏だそうです。これは實川さんの魅力が全開で、パワーも全開でした。
 いかにも熱情という熱い演奏で、第1楽章だけでも圧倒される演奏でした。第2楽章をゆったりと歌わせ、怒濤の第3楽章。グイグイと攻めてくる演奏に胸の鼓動は否応なく高まり、興奮のフィナーレヘと駆け上がりました。

 熱い演奏の後のアンコールは、ショパンのノクターン「遺作」を、しっとりと演奏し、切々と迫ってくる美しいピアノに胸が締め付けられました。
 そしてバッハの「主よ、人の望みの喜びよ」をゆったりと演奏し、しっとりとした感動の中に演奏会は終了しました。

 休憩なしの70分強の演奏会でしたが、内容豊富で楽しませていただきました。演奏もトークも素晴らしく、實川さんの誠実な人柄と魅力が如実に示され、今度は音楽ホールでじっくりと聴いてみたくなりました。

 体育館風の巨大なホール空間に、豪華なピアノが1台。場違いな感じもするのですが、ピアノが大切にされ、街の自慢になっていることが伝わってきました。弾きこまないとピアノが劣化しますから、定期的に演奏会を企画して有効利用しているのは良いことですね。
 五泉市の生涯学習課の皆さんによる手作り感溢れる運営も素晴らしく、気持ち良くコンサートを楽しむことができました。担当職員の皆さん、お疲れ様でした。次回も楽しみにしたいと思います。

 帰りは村松市街から五泉市街を抜けて阿賀野川の堤防沿いを進み、横越で国道49号線にのって、快適に自宅に到着しました。

   

(客席:H-1、\1000)