新潟セントラルフィルハーモニー管弦楽団は、地元のプロの音楽家を中心に結成され、2011年から活動しているオーケストラです。当初は地元バレエ団の公演のために活動していましたが、その後オーケストラ独自の活動をすることになり、2014年8月に第1回演奏会が開催されました。私も聴かせていただきましたが、プロの音楽家によるアマオケとは一線を画す高水準な演奏に驚愕したことが思い出されます。
その後、演奏会を重ね、新潟の音楽家をソリストに迎えての協奏曲や、ベートーヴェンの交響曲シリーズで、地道な活動を積み重ね、楽しませてくれました。
私も何度か聴かせていただいて現在に至りますが、新潟では最も高水準なオーケストラであることは間違いなく、毎回大きな感動をいただきました。
創団13年目になる今年は、第10回の記念演奏会として、オール・ベートーヴェン・プログラムが組まれ、交響曲第5番「運命」のほか、名古屋フィルのコンサートマスターを務める日比浩一さんを迎えて、ヴァイオリン協奏曲が演奏されます。
この日比浩一さんとの関係について書かれた指揮の磯部省吾さんの文章がチラシの裏に載っていますが、なかなか読み応えがありますので、手元にある方は、是非ご一読ください。
私は、2021年12月の第8回演奏会は平日の開催であり、2022年3月の第9回演奏会は東響新潟定期と重なって聴けませんでしたので、2021年3月の第7回演奏会以来となります。
いつもは音楽文化会館とか秋葉区文化会館とか、小さなホールでの開催でしたが、今回は10回記念ということで、りゅーとぴあ・コンサートホールでの開催となりました。
昨日の昼までは天候が優れませんでしたが、午後から天候は回復して晴れ渡りました。今日も朝から青空が広がって、すがすがしい日曜日になり、春の到来を実感しました。
午前中はホームページを更新したあと、大雪で痛んだ庭木の剪定をし、昨日退院したネコと戯れました。ゆっくりと昼食を摂り、ネットで確定申告を済ませ、好天に誘われて、早めにりゅーとぴあへと向かいました。
駐車場から公園を歩いていますと、催しがあったらしく、県民会館前では若い女性がたくさんおられ、賑やかに談笑しておられました。
りゅーとぴあに行きますと、これまであった赤外線の体温モニターが撤去されており、ポストコロナの時代の到来が実感されました。
ロビーには、まだ開場待ちの列はできていませんでしたので、チラシ集めをし、東ロビーの出入り口から外に出て、信濃川を眺めて春の空気を満喫しました。次第に薄曇となり、風は冷たく感じましたが、気分は爽やかです。
再びりゅーとぴあに戻りますと、ロビーには開場待ちの列ができていましたので、私もその列に並んで開場を待ちました。
時間となり入場し、2階正面前方に席を取りました。配布されたプログラムのメンバーリストを見ますと、お馴染みの名前がずらり。見ているだけでわくわくします。私が考えるオールスターメンバーではないですが、新潟のプロ奏者が結集しているものと思います。
開演時間となり、拍手の中に団員が入場しました。オケはヴァイオリンが左右に別れる対向配置で、コントラバスとチェロが左、ヴィオラは右です。弦5部は、8-7-5-5-4
と小型です。
メンバー表を見ますと、コンマスは石井 泉さんですが、申し訳ないことに私は存じ上げません。2列目には潟響の美しきコンミスの松村さんがおられ、第2ヴァイオリンのトップは庄司愛さん、チェロのトップは渋谷陽子さんと、ベルガルモのお二人が要所におられました。
磯辺さんが登場して、フィデリオ序曲で開演しました。さすがにプロ奏者によるオケであり、美しいアンサンブルで、安心して音楽に没頭できました。コンサートの出だしとしましては、いい演奏だったと思います。
ステージが整えられ、独奏者用の譜面台が設置されました。日比さんと磯辺さんが登場して、本日のメインともいえるヴァイオリン協奏曲です。
ティンパニの連打に導かれて木管が美しいアンサンブルで続き、長いオーケストラの序奏が始まりました。満を持して日比さんのヴァイオリンが加わって演奏が進みました。
ヴァイオリンは、音量豊かに朗々と鳴り響くというわけではなく、繊細な響きで、終始緊張感が漂い、聴く方も精神集中を要求されました。冷静さを失わず、修行僧の如く音楽に対峙する演奏は、これはこれで素晴らしかったです。聴かせどころの第1楽章終盤の長大なカデンツァは鬼気迫るものがあり、圧倒されました。バックを支えるオケも見事なアンサンブルでした。演奏の素晴らしさに客席も呼応して、第1楽章の後に拍手が沸き起こりました。
第2楽章はゆったりと歌わせましたが、第1楽章の緊張感と疲労感が持続し、繊細な演奏を聴き逃すまいと精神集中して臨みましたので、心が休む間もなく、うっとりと聴き入る境地にはなりませんでした。
カデンツァから切れ目なく第3楽章へ突入。ときに、あれっ?と思う個所もありましたが、これまでの流れ同様に、緊張感を失うことなく演奏が続きました。長大なカデンツァから、一糸乱れぬオケとともに、フィナーレを迎えました。
客席からは大きな拍手が贈られましたが、終始緊張感漂う演奏でしたので、精神的疲労を感じました。もともとが長大な曲ですが、精神集中した分だけ、実時間よりも長い演奏に感じられました。
私の個人的好みとしましては、もっと音量豊かに響かせて、感情の赴くまま、情熱的に歌わせてくれたら気兼ねなく楽しめたかな、などと思いました。ソリストアンコールを期待して拍手を続けましたが、そのまま休憩に入りました。
休憩後の後半は、交響曲第5番「運命」です。先ほど協奏曲を演奏したばかりの日比さんが、コンミスの隣に座り、演奏に加わりましたので、第1ヴァイオリンは9人になりました。磯部さんが登場して演奏開始です。
これは何も言うことはありません。第1楽章冒頭の運命の動機から、一気に演奏に引き込まれました。磯部さん率いるオケは、小型の強みを発揮して、機動性があり、スピード感に溢れていました。アンサンブルの乱れなどなく、躍動感にあふれる演奏は、聴く方の気分も爽快で、胸が高鳴ります。
第2楽章はゆったりと進めましたが、気持ちは緩むことはありません。第3楽章の聴かせどころの低弦の咆哮もお見事。ヴィオラもよく聴こえていましたが、対向配置の効果でしょうか。
ピチカートからティンパニの弱音の連打、つなぎのメロディを経て第4楽章へ突入。高らかにファンファーレを奏でました。エンジン全開に突き進み、感動と興奮のフィナーレへと駆け抜けました。
各奏者とも自分の力を遺憾なく発揮し、エネルギー感溢れる音楽にひれ伏しました。さすがプロで固めたオケだけはあります。県内のオケで聴く最高水準の演奏だったと思います。
これまでの集大成となる10回記念にふさわしい演奏は、お見事というしかありません。思わず客席からはブラボーの声も出かかりました。私も精いっぱいの拍手で讃えました。
アンコールは、オール・ベートーヴェン・プログラムということで、5番つながりで弦楽四重奏曲第5番の第3楽章が弦楽だけで演奏されました。アンサンブルの美しさに息を呑み、このオケの水準の高さを再認識しました。
大きな感動を胸に、心地よい疲労感とともにホールを後にしました。今日の天気のように爽やかな気分で家路につきました。このまま春になると良いですね。
なお、新潟セントラルフィルは、賛助会員制度を設け、今後会員募集を始めるそうです。これに関連して、4月16日には、第1回のファンミーティングも行われます。今後の発展と活動の活発化に期待したいと思います。
次回は、11月4日(土)、新潟市音楽文化会館で開催され、ワーグナーのジークフリート牧歌、ハイドンのトランペット協奏曲、メンデルスゾーンの交響曲第3番「スコットランド」が演奏されます。これも楽しみですね。
(客席:2階C2-9、\3000) |