小曽根真 60th Birthday Solo OZONE60 Classic×Jazz
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2021年12月4日(土)14:00 長岡リリックホール コンサートホール
ピアノ:小曽根真
 
第1部
Makoto Ozone:Gotta Be Happy
Makoto Ozone:Struttin' in Kitano
Moszkowski:20Petit Etudes op.91, No.20
Makoto Ozone:Need To Walk
Johnny Green:Body and Soul
Prokofiev:Piano Sonata No.7 3rd movement

(休憩)

第2部
Ravel:Piano Concerto in Gmajor 2nd movement
Makoto Ozone:Always Together
Makoto Ozone:Listen
Makoto Ozone:O'berek
Makoto Ozone:For Someone

(アンコール)
Chick Corea:Spain
Makoto Ozone:Reborn
 
 小曽根真さんは、日本を代表するジャズピアニストでありながら、20年前からクラシック音楽も演奏するようになり、ジャンルにとらわれない多彩な活動をされています。
 即興を交えた演奏は原曲の新たな魅力を引き出し、クラシックファンの心も魅了しました。新潟では、2013年のラ・フォル・ジュルネ新潟や、2017年1月のNHK交響楽団新潟公演でモーツァルトの「ジュノム」を演奏し、新潟の音楽ファンを熱狂させました。

 今回は、小曽根真さんの60歳を記念してのコンサートです。プログラムは、60歳の記念アルバムの2枚組CD「OZONE 60」の収録曲を中心に組まれているとのことです。
 今年3月のサントリーホールでの公演でスタートして、2022年3月まで、1年かけて全国を巡演中です。新潟県では、新潟市ではなく、長岡市での開催となりました。

 雨の中、いつもの分水―与板―広域農道経由で長岡入りしました。いつもながら、この道は信号も少なく、私の家から49km。快適なドライブでリリックホールに到着できますので、高い高速料金を払うより便利です。

 雨が降り続く中にリリックホールに入りますと、ロビーでは多くの人が開場を待っておられ、CD販売が行われていて賑わっていました。
 ほどなくして開場され、席に着いてこの原稿を書きながら開演を待ちました。入場時には、アンケート用紙とチラシが渡されましたが、コンサートのプログラムに類するものは全くなく、ちょっと不親切に感じました。

 ステージ中央にはスタインウェイが置かれており、ステージとバックには赤い照明が当てられ、クラシックコンサートとは違った空気感を演出しており、ステージ前方にはOZONEという文字が浮かび上がっていました。開演が近付くに連れ客席は埋まり、ほぼ満席の大盛況となりました。

 時間となり、シルバーとゴールドの燕尾服様の奇妙な衣装の小曽根さんが登場して「ガッタ・ビー・ハピー」で開演しました。照明効果も交えながら、緩―急―緩と、様々に形を変えてスイングし、足踏みしたりのノリノリの演奏にホールの空気を一気に自分のものとしました。

 ここで小曽根さんの挨拶があり、以後小曽根さんの楽しいトークを挟みながら演奏が進められました。「ストラッティン・イン・キタノ」を熱く演奏した後、モシュコフスキーの20の小練習曲第20番をしっとりと演奏しましたが、美しいバラードという感じで、言われないとクラシック曲とは思えませんでした。
 続いてコロナの自粛期間で運動不足になったときに作ったというブルースの「ニード・トゥー・ウォーク」、さらにラフマニノフやドビュッシーのメロディが見え隠れする「ボディ・アンド・ソウル」と演奏し、前半最後はプロコフィエフの「戦争ソナタ」の第3楽章を激しく演奏して聴衆をノックアウトさせました。

 休憩後の後半は、赤い衣裳で登場。還暦を意識してのものでしょうか。最初はラヴェルのピアノ協奏曲の第2楽章でしたが、美しい演奏に夢幻の境地に誘われました。
 その後、「オールウェイズ・トゥゲザー」、「リスン(耳をすませて)」と演奏が進み、「オベレック」では赤い照明に変わって、手拍子・足拍子さらにピアノを叩いたりと激しい演奏にボルテージは上がりました。
 そしてプログラム最後は、「誰かのために」をしっとりと演奏し、無音の静寂の中にコンサートのプログラムを締めくくりました。

 静寂から一転して大きな拍手が贈られ、アンコールは今年急逝したチックコリアを偲んで「スペイン」が演奏されました。アランフェス協奏曲のメロディから「スペイン」へと移り、感動と熱狂を誘いました。
 場内は明るくなり、退席し始めた人もいましたが、拍手が続き、アンコール2曲目として「リボーン」が演奏され、興奮と感動のコンサートは終演となりました。

 常に即興演奏が加わっていますので、同じ演奏は二度とないものと思われます。小曽根さん自身も、CDでの演奏と大きく違っていて、原曲がどうなっているのかはCDを聴いて欲しいと話されていました。

 オリジナル曲とクラシック曲を交えてのプログラムでしたが、クラシック曲はもちろん楽譜どおりではなく、小曽根流に大きく味付けされ、原曲の魅力は残しつつ、オルジナル曲に作り変えられていて、大いに楽しめました。

 小曽根さんも開口一番に話されていましたが、リリックホールの音響の良さ、ピアノのブリリアントな響きの美しさに感激しました。
 リリックホールには毎年何度も来ていますが、これほど美しいピアノの響きはかつてなかったように思います。先日柏崎でツィメルマンのピアノの音の美しさに感動しましたが、それに匹敵するようにすら感じました。鍵盤を叩くジャズ奏法での強奏でも全く濁りはなく、粒立ちの良い輝きのある音に魅了されました。

 いいホール、いいピアノ、そして小曽根さん。一期一会の素晴らしい演奏に出会えた感動に胸を熱くし、疲れた心と身体に元気をいただき、強い雨が降る中、広域農道を走って家路に着きました。


 なお、事前にプログラムが配布されず、演奏曲目を一生懸命聞き取ってメモしていたのですが、帰りに受付で演奏曲目が掲示されていました。頑張ったのに拍子抜けでした。

 小曽根さんは、今日は長岡でしたが、明日は15時から三重県文化会館で演奏されます。長距離移動ご苦労様です。
 この「OZONE60」の全国ツァーは、来年3月24日の福井公演まで続き、この間に東京都響、神奈川フィル、NHK交響楽団等との共演もあります。還暦を過ぎての活発な演奏活動に脱帽です。
 
 
(客席:13-10、¥5000)