新潟交響楽団創立90周年記念第107回定期演奏会
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2021年11月21日(日)14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:松沼俊彦
オルガン:石丸由佳
 

ベルリオーズ:序曲「ローマの謝肉祭」

ミヨー:バレエ音楽「屋根の上の牛」

(休憩15分)

サン=サーンス:交響曲第3番「オルガン付き」

(アンコール)
サン=サーンス:歌劇「サムソンとデリラ」より バッカナール
 

 今日はいくつもコンサートが重なり、悩ましい日曜日になりました。長岡では東京フィルの演奏会があり、能楽堂では毎回お誘いを受けて聴かせていただいているプロジェクト・リュリの演奏会があります。
 長岡はあきらめるにしても、プロジェクト・リュリには行かねばと思い、悩みましたが、結局は潟響の90周年記念公演を選ばせていただきました。せっかくお誘いいただいたのに申し訳ありません。

 なぜ潟響にしたかといいますと、指揮者が松沼俊彦さんというのが一番です。毎回熱い演奏を聴かせてくれた松沼さんですが、2015年11月の第97回定期演奏会を最後に来演がなく、今回は6年振りになります。久しぶりの松沼さんがどんな演奏を引き出してくれるか大いに楽しみでした。
 また、石丸由佳さんが共演するというのも大きな魅力です。石丸さんは、りゅーとぴあの専属オルガニストといいながらも東京に拠点を持ち、全国を舞台に活躍する最も旬なオルガン奏者といえましょう。来週の11月28日にはサントリーホールでのリサイタルを控えておられます。そんな石丸さんが松沼さんと共演するサン=サーンスの交響曲第3番は、否が応でも期待が高まりました。この曲は数々のプロオケと共演を重ねておられますので、きっと素晴らしい演奏になること間違いなしです。

 ということで、今年6月の第106回定期演奏会に引き続いて、5ヶ月振りの潟響です。関係者より自由席券をいただいたのですが、混雑と密を避けるため、1席おきに間隔を開けて発売された指定席券を奮発しました。
 
 ゆっくりと昼食を摂り、猫と戯れ、りゅーとぴあへと出かけました。薄曇りではありますが、時おり日差しも見えて、過ごしやすい日曜日になりました。
 駐車場に車をとめ、りゅーとぴあに入りますと、劇場では万代太鼓の公演があって賑わいをみせ、コンサートホール側では、潟響の開場待ちの列ができていました。私は指定券を買っていましたので、列を横目に奥のロビーに行ってひと休みし、開場が進んだところで入場しました。

 ホールに入りますとステージには花が飾られ、創立90周年を祝っていました。配布されたプログラムを見ますと、松沼さんは潟響の名誉指揮者とのことで、創立80周年に引き続いて90周年も指揮することになったようです。
 さすがに90周年記念公演のためか、集客はいつもより多く、自由席エリアはかなり混みあっていました。指定券を買って正解でした。指定席エリアに関わらず、自由席券の人が紛れ込んたりもありました。

 駐車場が混雑しているとのことで、開演時間が5分遅れました。拍手の中に団員が入場。最後に松村さんが登場して大きな拍手が贈られました。オケのサイズは12型でしょうか。

 白髪になった松沼さんが登場して、1曲目は、ベルリオーズの「ローマの謝肉祭」です。最初のオケの和音を聴いて今日のコンサートの素晴らしさが確信されました。
 冒頭のクラリネットのソロがバッチリと決まり、弦のアンサンブルも美しく、いつもの潟響から一皮むけたようなサウンドは、目を閉じれば東響かと思うほどでした。
 全身を使ってエネルギッシュに指揮する松沼さんに応えて、潟響は渾身の演奏を聴かせてくれました。最初から予想以上の素晴らしさに驚嘆しました。

 オケの編成が小さくなって8型となり、2曲目は、ミヨーの「屋根の上の牛」です。奇妙な曲名の如く、ちょっと捕らえ所のない曲ですが、大いに楽しませてもらいました。
 サンバ調の洒落たリズムが心地良く、混沌として摩訶不思議な世界に誘われました。おとぎの国のカーニバルに紛れ込んでしまったかのようで、酔っ払いたちが千鳥足でふらふらと踊り狂い、ウキウキするような夢の時間を過ごしました。
 単純そうでいて複雑な音楽ですが、松沼さんの指揮の下、潟響の皆さんが見事な演奏で具現化し、楽しませてくれました。

 休憩後の後半はオケが大きくなって12型に戻り、メインのサン=サーンスの交響曲第3番です。団員の皆さんが揃ってチューニングが終わった後に、石丸さんが登場し、拍手の中にオルガン席に着きました。松沼さんが登場して演奏開始です。
 さざ波のような弦楽のゆっくりとした緊張感ある出だしから、次第に熱を帯び、ひとしきり盛り上がった後に訪れた静けさの中にオルガンの重低音が加わり、夢幻の世界へと誘われました。
 ホールいっぱいに柔らかく響き渡るオルガンと美しい弦楽の響きが絡み合い、病んだ心が癒されるようで、うっとりと聴き入りました。この部分がこの曲の一番の魅力だと個人的には思っています。
 癒しのひと時から一転して激しく切り刻むような第2楽章。さまざまに畳み掛けるように音楽が展開し、ピアノがかき鳴らされ、緊張感を高めました。
 束の間の静けさをオルガンの全奏が蹴散らしてホールいっぱいに響き渡り、オケも次第に熱を帯びながらギアチェンジし、スピードとパワーを上げて突進しました。大音量で鳴り響くオルガンに負けずとばかりに、オケもフルパワーで駆け抜けて、興奮と感動のフィナーレを迎えました。

 大オルガンを備えたこのホールならではの曲であり、録音では決して味わえない生演奏の迫力を肌で感じ、今この時間に、このホールにいることの幸せと至福の喜びを感じました。
 数々の本番をこなしてきた石丸さんの安定感のあるオルガンはさすがであり、熱い演奏を潟響から引き出した松沼さんの素晴らしさを賞賛したいと思います。

 蛇足ですが、圧倒的演奏に対してオルガン席の石丸さんが大きな拍手を受けている真っ最中に、P席に出てきて、石丸さんと共に拍手を受けていた女性がおられましたが、たいした度胸と感銘を受けました。でも、空気を読むべきでしょうね。

 松沼さんに花束が贈られ、アンコールはサン=サーンス続きで「バッカナール」です。これがまた爆演・快演でした。アラビア風メロディの聴かせどころもバッチリで、松沼さんがオケをグイグイと煽り上げて、パワー全開で大爆発して終演となりました。
 90周年記念演奏会の最後を飾るに相応しい盛り上がりに、ホールの熱気も最高潮となり、興奮と感動の中にコンミスの松村さんが礼をして、コンサートは終わりました。

 次回の定期演奏会は2022年6月5日(日)14時から、りゅーとぴあでの開催です。指揮者は平川範幸さんとのこと。松沼さん潟響に復活したものと喜んだのですが、記念演奏会の今回だけだったのですね。
 次の演目は、モーツァルトの「魔笛」序曲、メンデルスゾーンの交響曲第5番「宗教改革」、チャイコフスキーの交響曲第5番です。新たな指揮者で、どんな演奏を聴かせてくれるか期待しましょう。

 外に出ますと、寒くもなく、晩秋の穏やかな空気が感じられました。いい音楽を聴いて、晴れやかな気分で家路に着きました。
 

 
(客席:2階C3-11、指定席:¥1500)