東京バレエ団 金森穣「かぐや姫」第1幕/イリ・キリアン「ドリーム・タイム」
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2021年11月20日(土)13:00 新潟市民芸術文化会館 劇場
東京バレエ団
 

「ドリーム・タイム」

振付・演出:イリキリアン 振付助手:エルケ・シェパース
音楽:武満徹 オーケストラのための「夢の時」(1981)
装置・衣装デザイン:ジョン・F.マクファーレン
照明デザイン:イリ・キリアン(コンセプト)、ヨープ・カボルト(製作)
技術監督、装置・照明改訂:ケース・チェッペス:

出演 沖香菜子、三雲友里加、金子仁美、宮川新大、岡崎隼也

(休憩20分)

「かぐや姫」第1幕 世界初演

演出振付:金森穣
音楽:クロード・ドビュッシー
衣裳デザイン:廣川玉枝(SOMA DESIGN)
美術:近藤正樹 映像:遠藤龍 照明:伊藤雅一(RYU)、金森穣
演出助手:井関佐和子 衣裳製作:武田園子(Veronique)
テクニカル・コーディネーター:夏目雅也

出演 かぐや姫:秋山 瑛 道児:柄本 弾 翁:飯田宗孝 ほか
 

 東京バレエ団が、オリジナルの新作として、新潟が世界に誇るNoismの芸術監督・金森穣による「かぐや姫」を制作し、東京公演に引き続いての新潟公演です。
 全3幕からなる作品で、数年かけての長期プロジェクトとなるようですが、今回は第1幕のみ上演されることになりました。世界初演との触れ込みですが、すでに11月6日、7日に東京文化会館での上演を終えていますので、新潟公演は初演という表現は当たらないかもしれませんね。

 誰もが知る日本の昔話の「かぐや姫」をバレエにするというのは、どうもピンとこないのですが、今回演じられる第1幕は、竹から生まれたかぐや姫が翁のもとで成長し、初恋を体験し、京に旅立つまでが描かれるそうです。ドビュッシーの音楽とともにどのように演じられるのか興味深く思われました。
 また、同時上演されるのは、金森氏と関係が深いイリ・キリアンの「ドリーム・タイム」です。武満徹の音楽とともにどのようなバレエが展開するのか、これも興味深く思われました。

 東京公演では、この2作のほかに、ベジャール作の「中国の不思議な役人」も上演されましたが、新潟では上演されないのは残念です。1日2回公演ということで割愛されたのでしょうね。

 さて、バレエには疎い私ですので、バレエ公演を観る機会はほとんどなかったのですが、東京バレエ団の公演は、2011年6月に「白鳥の湖」を観ており、今回は10年半ぶりになります。

 今回の公演は、13時と17時の2回公演で、ダブルキャストが組まれるようですが、13時の公演を観させていただくことにし、チケット発売早々に購入しました。
 その後夕方に仕事が入ってしまい、どうしようかと心配しましたが、13時に開演して、15時前に終演すれば何とか仕事には間に合いそうでした。17時の公演を買わないで良かったと胸をなで下ろしました。


 昨夜の雨も上がり、今日は雲は多いものの日が差して、過ごしやすい土曜日となりました。雑務をこなし、りゆーとぴあへと向かいました。
 落葉して冬枯れの白山公園を抜けてりゅーとぴあに入館しますと、ロビーは某中学校の生徒たちでごったがえしていました。創立記念の式典があるようですね。
 劇場は既に開場されており、私も早めに入場しました。チラシの束が渡されましたが、今回の公演に関してのプログラムは、A4の紙1枚のみ。ちゃんとしたプログラムは1500円で売っていました。ちょっと高いので、買わないで席に着き、この原稿を書きながら開演を待ちました。

 チケット完売とのことで、開演時間が近付くにつれ客席は埋まり、久々の満席の劇場は壮観です。感染が小康状態で何よりです。

 5分遅れで前半の「ドリーム・タイム」が開演しました。場内が暗転して幕が上がりますと、ステージ上には3人の女性ダンサーがいて、無音の中で舞踊が始まりました。
 静寂の中で、緊張感は高まり、無音の時間が長く感じられました。武満の音楽が流れて男性ダンサーが1人現れて、各女性ダンサーと順に踊り、女性ダンサーがひとりずつ去り、最後は男女ひとりずつの踊りとなりました。
 やがてもう1人の男性ダンサーが現れ、先の2人は去り、男性1人の踊りとなり、さらに男性2人の踊り、男性2人と女性1人と、次々に形を変えての舞踊が続き、最後は初めと同じに女性3人となり、照明が落とされて暗闇の中に終演となりました。
 武満の透明感溢れる深淵な音楽とともに、緊張感漂う舞踊に心地よい疲労感を感じました。Noismの新作と言われても違和感のない内容であり、金森の世界と通じるものがありそうに感じました。

 休憩後の後半は、いよいよ「かぐや姫」第1幕です。ステージ左前方には翁の家のセットが置かれていました。場内が暗転し、白いスクリーン「KAGUYAHIME」という文字が投影されて開演しました。
 スクリーンが上がりますと、月が空に浮かび、竹林をイメージさせる緑の精たち24人の群舞が始まり、その美しさに目を奪われました。最初はドビュッシーの「海」が使われたりしてましたので、月夜の海かと思ったのですが、よく考えれば竹林ですよね。
 この竹林の中にかぐや姫が生を受け、翁の手の中で家へと運ばれ、瞬く間に成長し、天真爛漫な少女となり、村の童たちといたずらしたり・・。道児との初恋、そして別れ。
 聴き馴染みのあるドビュッシーの美しい音楽とともに踊られる美しいバレエ。優雅に美しく、ときにおどけたりと、あっという間に物語りは進みました。「月の光」にのせて、かぐや姫と道児の2人による踊りが一番の見せ場でしょうか。
 都に旅立って終演となりましたが、あっけなく終わった感じであり、続きが早く観たいですね。第2幕単独上演は2023年4月、第3幕を加えた全幕上演は2023年10月になる予定だそうですので、まだまだ先ですね。中途半端な第1幕だけでの上演の意図は分かりませんが、これはこれで楽しませていただきました。総じて、Noism1&2のメンバーでもやれそうな印象もありました。
 
 上演時間は短く、東京と同様にもう1演目観たかったかなというのが正直な感想でしたが、楽しませていただきました。
 分散退場で外に出ますと、青空が広がり、穏やかな晩秋の空気が感じられました。気分も爽やかに、16時からの仕事に備えて帰路を急ぎました。
 

 
(客席:2階16-24、S席:¥8000)