NHK交響楽団 第1935回定期公演 Aプログラム
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2020年2月15日(土) 18:00 NHKホール
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ
ホルン:シュテファン・ドール
コンサートマスター:篠崎史紀
 


アブラハムセン:ホルン協奏曲(2019)

(休憩20分)

ブルックナー:交響曲 第7番 ホ長調

 東京芸術劇場でのコンサート終えて、池袋駅から山手線で原宿駅に移動し、代々木公園横をNHKホールへと移動しました。NHKホールに来るのは2012年9月以来ですので、ずいぶんと久しぶりになります。

 今日のプログラムは、デンマークの作曲家・アブラハムセンのホルン協奏曲(日本初演)とブルックナーの交響曲第7番です。もちろん私の目当ては、N響首席指揮者のヤルヴィによるブルックナーです。

 私がN響を聴くのは2018年10月以来、そしてヤルヴィ&N響の演奏を聴くのは、2016年9月以来になります。ホルン協奏曲で共演するシュテファン・ドールは、ラデク・バボラークと並んで、現代のホルン奏者の最高峰であり、これも期待が高まりました。

 開場とともに入場し、ゆっくりと前の演奏会の感想を書きながら開演を待ちました。私の席はC席で、巨大なホールの2階正面の最後方です。ステージは良く見渡せますが、3階席が頭上を覆い、音響的には良くはないものと思われます。まあ、チケット代けちったせいであり、値段相応でしょうから、文句は言えません。

 開演時間となり、拍手のない中、団員が入場。コンマスの篠崎さんが立ち上がってチューニングとなりました。オケの配置は、ヴァイオリンが左右に別れ、コントラバスとチェロが左、ヴィオラが右の対向配置です。

 ヤルヴィとシュテファン・ドールが登場して、アブラハムセンのホルン協奏曲です。この曲はドールに献呈され、1月29日にベルリンで初演されたばかりで、今日が日本初演となります。ベルリンでの世界初演は、今日と同様にドールとヤルヴィによってなされ、オケはベルリン・フィルでした。
 曲は3楽章からなりますが、切れ目なく、続けて演奏されました。音楽は静寂の中に始まり、深遠なる音世界は和のテイストも感じさせました。
 その後は不協和音が鳴り響く混沌とした世界となり、その後再び朝霧が立ち込めたような幽玄な世界に回帰したものの、嵐が近づき雷鳴がとどろく中に、カオスの世界へと誘い込まれました。
 芸術的素養のない私には、現代音楽は理解し難く、作曲者の意図をくむことなどできませんが、この曲は聴きやすく、音響として音楽を堪能することができました。こういう音楽はホールでしか味わえず、コンサートの醍醐味と言えましょう。
 大きな拍手に応えて、作曲者もステージに呼び出され、日本初演を観客とともに祝福しました。私も、日本初演に立ち会えて幸運でした。

 休憩後の後半は、ブルックナーの交響曲第7番です。これは端正な音楽とでも言いましょうか、ヤルヴィとN響の蜜月ぶりが感じ取られ、王道を行くような、安定感ある音楽が奏でられました。
 荒れることなく、抑制されたブラスの調べ。乱れることなく、制御されたアンサンブル。第2楽章のアダージョなど、もっと歌わせてもいいかなとは思いましたが、統制の取れた音楽に隙はありません。乱れることのない優等生的演奏ではありましたが、安定感ある音楽は、聴き応え十分でした。今日の演奏は、FMとBS8Kで生中継されていましたが、お聴きになった方はどんな感想を持たれたでしょうか。

 極上の音楽ではありましたが、私の席での音は良くありませんでした。席の問題はありましょうが、ホールの問題も大きいものと思います。響きの乏しいデッドなホール。おそらくPAが使用された音響は、こもったような音で、クリアさは感じられませんでした。残響の豊かなコンサートホールではもっと違った印象だったに違いありません。
 まあ、音はともあれ、いい音楽を聴かせていただきました。幸せ気分で外に出て、冬らしからぬ暖かな空気の中、渋谷の雑踏へと身をゆだねました。

 と、ホテル近くで、天婦羅を肴に生ビールを飲みながらこの原稿を書き始め、夜中に目覚めたホテルのベッドで、眼前に広がる首都の夜景を横目に、原稿を書き上げました。また寝ようかな・・・。

 

(客席:2階C19-5、C席:\4700)