インバル指揮 ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団
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2019年7月3日(水) 19:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:エリアフ・インバル
 



ワーグナー:楽劇「トリスタンとイゾルデ」から "前奏曲と愛の死"

(休憩15分)

マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調

 7月となり、2019年も後半戦に突入です。7月最初の演奏会は、インバル指揮のベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団です。メインの曲目は、私が好きなマーラーの交響曲第5番であり、これは何としても聴きに行かねばと思い焦がれていました。

 マーラー好きの私ですが、新潟ではマーラーを聴く機会はなかなかありません。マーラーの5番を聴くのは、2011年5月の東京交響楽団第65回新潟定期演奏会以来8年振りとなります。
 昨年5月に、りゅーとぴあ開館20周年記念として、メータ指揮イスラエルフィルでマーラーの5番が演奏されるはずだったのですが、メータが急病のため来日できず、残念ながら中止になってしまいました。あれから1年、インバルの指揮で聴けることになったのは良かったです。

 インバルといえばマーラーを得意とし、フランクフルト放送交響楽団との交響曲全集が名録音として注目されたほか、日本でも東京都交響楽団と2回マーラー・ツィクルスを完結し、CD録音を残しています。私も2014年3月に、横浜まで聴きに行ったことがあり、そのときのライブ録音がCDになって発売され、思い出に残っています。
 また、インバルは、2000年11月に、フランクフルト放送交響楽団とともに新潟に来演しており、そのときの曲目もマーラーの5番でした。新潟には19年振りということになります。

 今日のコンサートは、「東響定期+α オーケストラシリーズ」と題され、東響定期会員はいつもの席で、無料で聴けるという特典公演であり、定期会員席以外の空いた席が一般発売されました。
 このシリーズは今回で10回目となりますが、これまでは国内オケばかりでしたが、今年初めて海外オケの公演となりました。一般料金はS席11000円ですので、非常にお得な演奏会となりました。もっとも、無料招待といっても、実際は定期会員の年会費の中に含まれているというべきでしょうね。

 今日は、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団の日本ツアー全8公演の初日になります。83歳の老練の指揮者・インバルと、どんな演奏を聴かせてくれるのか期待が高まりました。

 前置きが長くなってしまいましたが、スケジュール調整し、夜の予定を入れずにコンサートに臨みました。水曜日の夜、平日開催ということで、時間的に厳しかったのですが、何とか仕事をやり繰りして、6時に職場を出発することができました。安全運転の範囲内で、大急ぎで車を走らせ、駐車場から駆け足し、開演5分前に何とか到着できました。
 かなりの集客を予想しましたが、東響定期会員の特典コンサートということで、客の入りはいつもの定期演奏会+αというところでしょうか。

 拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待ち、全員揃ったところで着席してチューニングとなりました。
オケは16型のフル編成で、ステージいっぱいのオケは視覚的にも豪華です。弦の配置は、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、右奥にコントラバスというオーソドックスな配置です。

 インバルが颯爽と登場し、前半はワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」です。最初のチェロの序奏から一気にワーグナーの楽劇の世界に引き込まれました。
 演奏は素晴らしいものでしたが、気だるく、官能的な、私がこの曲に勝手に抱いているイメージとは裏腹の、質実剛健とでも言いますか、男性的な演奏に感じ、悪く言えば、荒っぽく感じなくもありませんでした。
 管楽器は美しく響いて文句のつけようもなかったですが、弦に蜜がしたたり落ちるような艶があればと感じました。
 あくまで個人的好みであり、客観的には感動的な美しい演奏だったと思います。指揮棒が下され、しばしの静寂を聴取が共有したあと、大きな拍手が湧き上がりました。

 後半はマーラーの5番です。前半は男性のコンマスでしたが、今度は女性のコンミス(日下紗矢子さん)に交代しました。
 演奏は、前半に感じたオケの印象がすべて良い方に転じて、パワーあふれる、血沸き、肉躍るような、燃える演奏でした。
 第1楽章冒頭のトランペットソロがばっちりと決まり、名演が約束されました。力強く葬送行進曲を刻み、アタッカで第2楽章へつなげ、パワーあふれる音楽のうねりで酔わせました。第3楽章のホルンもお見事。第4楽章の弦楽だけでのアダージェットは思いっきり歌わせ、かといって甘くなりすぎることもなく、夢幻の世界に誘いました。アタッカで第4楽章へつなげ、興奮と感動のフィナーレへと駆け上がりました。

 インバルは、速めのテンポでグイグイとオケをドライブし、一糸乱れぬアンサンブルで絢爛豪華なオーケストラサウンドを作り出し、燃え上がる思いを爆発させました。年齢を感じさせない力強い指揮ぶりに驚きを感じました。ホールは感動の渦に包まれ、ブラボーの声がこだましました。

 素晴らしい演奏にノックアウトされ、たまったストレスも払拭されました。良い音楽を聴けて良かったです。湧き上がる興奮を抑えながら、家路につきました。

 明日は広島、明後日は三重と連日のコンサートが続きます。移動距離は半端でなく、団員の移動、楽器の搬送も大変だろうなあと心配してしまいます。広島までどう行くんでしょうね。お疲れさまです。日本ツアーが無事に終わりますように・・・。

 なお、他公演ではアリス=紗良・オットとの共演もあります。多発性硬化症で療養という話も聞いていましたが、快復されたんですね。よかった、よかった。

 

(客席:2階 C*-**、東響定期会員招待)