フランクフルト放送交響楽団
  ←前  次→
2000年11月1日  新潟テルサ
 
指揮:エリアフ・インバル
 

ワーグナー:楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲

マーラー:交響曲第5番嬰ハ短調


 

 
 
 今回の日本ツアーは、NHK放送開始75周年記念事業によります。新潟公演の会場は何故か新潟テルサ。新潟テルサの運営元の新潟勤労者福祉振興協会との共催なのでこの会場になったようです。
 りゅーとぴあ(新潟市民芸術文化会館)という立派なコンサートホールがあるのに、どうしてこんな多目的ホールで一流オケを聴かねばならないんだろうと、少し残念というのが正直な気持ちです。

 ともあれ、インバル/フランクフルト放送響といえばマーラー演奏では定評があり、楽しみでした。スケジュール調整にも気を遣っていたのですが、突然の出張命令でどうなるかと思いました。幸いどうにか時間までに新潟に帰ることができました。あいにくの天気で冷たい雨が降り続いていました。

 さて、今日の曲目は、10月24日、NHK-FMでNHKホールから生中継されていたものと同じプログラムです。車のラジオで聴いたのですが、すばらしい演奏のようであり、本日の公演も期待が膨らみます。

 まずは、マイスタージンガー前奏曲。特に癖のない正統的ながっしりした演奏でした。私の席はワンフロアだけのホールのほぼ中央。意外に残響が良いのに驚きましたが、音の厚みが希薄に思えました。良く言えば、団子状にならず、分解能の良い音とも言えましょう。演奏自身は重厚すぎることなく程良い味加減。前菜としては上等でした。

 楽員の入れ替えだけで休憩なくマーラーに入りました。例のトランペット・ソロで演奏開始。第1楽章の葬送行進曲も暗すぎることなく、重々しくなりすぎず、適度の緊張感で演奏が続きます。節回し、アクセントの付け方でアレッと思うところが新鮮に思えます。
 間をおかず第2楽章を続けて演奏。そして第3楽章と、寄せては返す波のごとく、音楽の波が打ち寄せます。ホールにこだまする音の洪水の中にただ身をゆだねました。
 第3楽章終了後、ヴァイオリン奏者の弦の張り替えを待つため数分の休憩。この間の無音のホールの緊張感。これも生演奏の楽しみ。
 チューニングの後第4楽章アダージェット。ゆっくりと情感豊に演奏が進みます。かといって感情移入しすぎることもなく、ムード音楽にもなりません。抑制を利かせながら胸に染み込んできます。そして連続して終楽章へ。巨大な音のうねりの中でクライマックスを迎えました。

 最後の音が消えないうちにブラボーの嵐。熱狂的な拍手の中でコンサートは終了しました。ホールのせいか演奏のせいかは分からないですが、マスとしての重厚さは希薄ですが、各楽器の音の艶やかさが鮮明に感じられました。演奏者の技量はすばらしく、金管は最高でした。

 有名でありながら、このような大曲を聴く機会は意外とありません。特に新潟のような地方都市ではなおさらであす。私も5番を生で聴くのは、ずいぶん前(94年)に東京でベルティーニ/ケルン放送響で聴いて以来です。今度はいつになるかなあ・・。

 外は雨が降り続いています。そうか、今日から11月か。冬の足音がいよいよ近づきます。