宮川彬良とアンサンブル・ベガといえば、かつては毎年続けてりゅーとぴあのニューイヤーコンサートで楽しませてくれていて、私も2013年に聴かせていただいたことがありました。
しかし、その後来演が途絶えてしまい、最近は2016年4月のラ・フォル・ジュルネ新潟での演奏以来新潟への来演はなく、寂しく思っていましたので、今回は是非とも聴かねばと思っていました。
ロビーコンサートを最後まで楽しみ、コンサートホールに移動して開演を待ちました。3階席は発売されませんでしたが、発売された席はなかなかの入りになりました。
開演時間となり場内が暗転し、薄暗い中にメンバーが入場し。明るくなるとともに、アンサンブル・ベガのコンサートでは毎回演奏されるオープニング曲「すみれの花咲く部屋」で開演しました。
宝塚生まれのアンサンブル・ベガならではの曲であり、宝塚歌劇団を象徴する曲である「すみれの花咲く頃」を室内楽版にアレンジした曲です。
ステージ左から、第1ヴァイオリン:辻井淳さん、第2ヴァイオリン:日比浩一さん、ヴィオラ:馬渕昌子さん、クラリネット:鈴木豊人さん、ファゴット:佐久間大作さん、ホルン:池田重一さん、チェロ:近藤浩志さん、その後方にコントラバス:新眞二さん、そして左手後方にピアノの宮川彬良さんです。
メンバーはオケのコンサートマスターや首席奏者を中心に集められており、その演奏の質の高さには驚かせられます。中でも大阪フィル主席のチェロの近藤さんは他人とは思えません。(分かる人にはわかるかな・・)
以後、宮川さんの楽しいトークと解説で演奏が進められました。編曲の妙と卓越した演奏技術で、楽しく心地良い音楽を聴かせてくれました。総勢9人での演奏に関わらず、これで十分と思えるほどの音の厚みを感じさせてくれました。
機関車が走るように快活な「ロコモーション」、哀愁を漂わせながら優しく歌う「大きな古時計」、楽しく表現力豊かに楽しませてくれたアンダーソンの2曲。音楽の楽しさを伝えてくれました。
続いては、「アンサンブル・ベガ名物♪音符の国ツアー」というコーナーで、今回はベートーヴェンの交響曲第5番「運命」の第1楽章を取り上げて、曲に込められた秘密を解き明かしてくれました。
身振り手振りを交えて、面白おかしく解説してくれましたが、繰り出される音楽はすばらしいもの。クラシック音楽を身近なものに感じさせてくれたのではないでしょうか。
休憩の後の後半は、新潟市ジュニア合唱団を迎えて、宮川さんの作曲による合唱組曲「きのう・きょう・あした」から4曲歌われました。
この曲は、2012年に、ひばり児童合唱団創立70周年記念に作曲したものだそうですが、アンサンブル・ベガ版はこれが初演だそうです。
優しさに溢れる清廉な音楽。面白おかしく親しみやすい歌詞を、楽しくも胸を打つ音楽に昇華させ、感動の涙を誘いました。
ここはジュニア合唱団のすばらしさを賞賛すべきでしょう。宮川さんも新潟市の宝だと絶賛していましたが、まさにその通り。感動をありがとう!
続いては「宇宙戦艦ヤマト」の室内楽版。父の残した数々の音楽を基に、様々に組み合わせ、変化させ、新たな音楽へと創り上げ、たった9人の演奏とは思えない壮大な交響詩として聴かせてくれました。
そして最後は組曲「白雪姫」。いうまでもない誰もが知るディズニー映画から4曲を選んで、組曲として演奏しました。軽快に、楽しげに、ファンタジーの世界を示現していました。曲もさることながら、演奏のすばらしさに感激しました。
鳴り止まない拍手に応えて、アンコールを3曲。これもまた極上の心打つ演奏でした。「P.S. I LOVE YOU」を、ビロードのように、柔らかく穏やかに演奏し、感動のステージを、極上のデザートを添えて締めくくってくれました。
音楽の楽しさ、喜びを伝えてくれる伝道師・宮川さん。作曲家・編曲家としてのすばらしさは言うまでもなく、人柄の良さがにじみ出ています。
そして、アンサンブル・ベガの面々。日頃はトップ奏者としてクラシック音楽に取り組んでおられるわけですが、このようなファミリー向けの演奏会でも抜群のパフォーマンスで魅せてくれます。
私はもうジジイですが、若い人たちが馴染みやすいプログラムを一流の演奏で聴くことにより、音楽を身近なもの、楽しいものと感じてくれたらと思います。
爽やかな感動を胸に、宮川さん、そしてアンサンブル・ベガの皆さんに感謝しながら会場を後にしました。次の来演を楽しみに待ちたいと思います。
(客席:2階C3-7、会員割引:¥2700) |