アレクサンデル・ガジェヴ ピアノリサイタル
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2016年7月6日(水) 19:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
ピアノ:アレクサンデル・ガジェヴ
 


ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調 Op.110

ショパン: ピアノ・ソナタ第2番「葬送」 変ロ短調 Op.35

(休憩20分)

バッハ/ブゾーニ: シャコンヌ 二短調

ラフマニノフ: 絵画的練習曲「音の絵」 Op.39-2 ロ短調、Op.39-5 変ホ短調

リスト: ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178

(アンコール)
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女
ドビュッシー:12のエチュード 第 11番
プロコフィエフ:ソナタ第7番 戦争ソナタ 第3楽章

 1991年から3年に一度開催されている浜松国際ピアノコンクールの2015年(第9回)の優勝者のガジェヴのコンサートです。優勝者による全国ツアーの一環での新潟公演です。
 ガジェヴは1994年生まれですので、コンクール優勝時は20歳、今年22歳になるという若者です。当然初めて知ったピアニストですが、どんな演奏を聴かせてくれるか期待が膨らみました。

 平日開催のコンサートは厳しいものがありますが、何とか仕事を切り上げホールに駆けつけました。ネームバリューがないためか、あるいはこのところのコンサート続きのためか、客の入りは程々というところでしょうか。通常3000円の席が会員優待で1500円で聴けるお得なコンサートですので、もっとたくさんの人に来てもらいたかったですね。

 遠目で見ますと年齢より老けて見えるガジェヴが登場して演奏開始です。ピアノはコンクールで使用された河合のSK-EXです。河合楽器がスポンサーになっており、自社最高機種を持ち込んでの演奏なのでしょう。

 最初はベートーヴェンの31番。明るく色彩感のあるピアノ。流麗に音楽が流れていきます。音量も豊かに、いつも聴くスタインウェイとは違った音色に魅了されました。

 ステージから下がらず、続いてショパンの「葬送」が演奏されました。早めの演奏で、ダイナミックで色彩感がありました。葬送行進曲も暗さは感じさせず、むしろ力強さと未来への希望を感じさせました。

 後半は「シャコンヌ」で開演しました。前半以上にピアノの音量は豊かであり、響きすぎるほどに豊潤な音が残響豊かなホールを満たしました。音の洪水に身をゆだねるような恍惚感を感じました。この曲は新潟では小黒亜紀さんの伝説の名演奏が記憶に残っていますが、そのとき以来の感動でした。

 ステージから下がらずに、すぐに演奏されたラフマニノフは、これまで同様にダイナミックに流麗に、輝きのある音楽が流れ、まさに「音の絵」を見るかのようでした。

 一旦ステージに下がったガジェヴは上着を脱いで白シャツだけで登場。気合を入れて本日メインのリストのロ短調ソナタに挑みました。
 これはメインプログラムだけあり、聴き応えある演奏でした。難曲であるはずのこの曲も、スピード感豊かに、ダイナミックに演奏し、スポーツカーが駆け抜けるかのようでした。ダイナミックレンジも広く、音楽的にも音響的にも聴衆を魅了しました。

 こんな演奏に感動しないわけはなく、聴衆は興奮し、大きな拍手が贈られました。ガジェヴは上着を着て登場し、アンコールが演奏されました。
 これまでの激しい演奏とは真逆に「亜麻色の髪の乙女」を情感豊かにしっとりと演奏し、続くエチュードでは再びダイナミックな音楽を聴かせ、最後は戦争ソナタで爆発し、完全にノックアウトされました。
 この戦争ソナタはいつか聴いたことがあったように思い、過去の記録を振り返ってみましたら、昨年10月に牛田智大さんがアンコールで弾いていましたし、2014年8月に大瀧拓哉さんが弾いていました。

 若さの爆発を感じさせるすばらしい演奏でした。まだまだ21歳の若者です。これまでの優勝者と同様に、浜松の優勝をステップとして、これからさらに羽ばたいていくことが予想されます。そのデビューリサイタルを聴くことができて良かったと思います。次に新潟に来るときにはどんな大物になっているのか楽しみです。

 梅雨空を吹き飛ばすような爽快な音楽を聴くことができて、気分良く家路に着きました。

 

(客席:2階C5−11、S席:会員優待 \1500)