今回の新潟定期は独自のプログラムで、協奏曲3曲です。昨年8月の第91回新潟定期で、ヴァイオリン協奏曲、チェロ協奏曲、ピアノ協奏曲の3本立てというのがありましたが、今回はピアノ協奏曲の3本立てです。それも横山幸雄さんが一人で演奏するという信じがたいものです。
横山さんの演奏を聴くのは2011年8月の新潟でのリサイタルを聴いて以来です。また、指揮は1984年生まれという若き指揮者・川瀬賢太郎さんですが、もちろん聴くのは初めてです。
ピアノ協奏曲の名曲が3曲聴けるという魅力あるプログラムというためか、客の入りは良く、9割ほどでしょうか。最近の新潟定期では最も良いように思います。
いつものように拍手の中団員が入場しました。最後にニキティンさんが登場して大きな拍手が贈られました。オケの配置はコントラバスとチェロが左、ヴィオラが右側の、ヴァイオリンが左右に分かれる対抗配置です。
横山さんと小柄な川瀬さんが登場して、リストで開演しました。横山さんはこれからの持久戦に備えてか、上着は着ず、白シャツに黒のベストという姿です。
パワーにあふれ、一直線に突き進むような横山さんのピアノ。劇的な出だしに始まり、メランコリックさを排除しながら力強い演奏が続きました。ロマンティックに歌わせてほしかった第2楽章も、さらりと駆け抜けました。その後は軽快にフィナーレへと疾走しました。開演前に舞台上で練習していたトライアングルは良く響いていました。なかなかの難曲と思うのですが、あっという間に、何の苦も無くという感じで演奏が終わりました。
続いてはショパンです。これもリストと同様に、力強く突き進みました。甘く切ない第2楽章も、感傷を排除して、素っ気ないくらいでした。軽快に第3楽章を締めくくり前半は終了しました。
後半はラフマニノフです。横山さんは前半と反対に、黒シャツに白いベスト姿で登場しました。この曲も、基本的には前半同様に力強さを前面に出しながら、淀みなく駆け抜けていきました。さすがに第2楽章は甘く切ないメロディで泣かせてくれました。そして怒涛のフィナーレへ。オーケストラも豪快に、音量豊かに鳴らして、興奮の中に終演を迎えました。
アンコールは横山さん自身の編曲によるアヴェ・マリア。これまでの力強さとは対極的なやさしい調べに、心を和ませてくれました。パワーあふれる演奏の後の、一服の清涼剤のように感じました。
今日の主役はやはり横山さんです。ピアノ協奏曲の名曲を、一度に3曲演奏する機会は珍しいはずであり、こんなプログラムをやってのけるのは横山さんならではと思います。若き指揮者が率いる東響は、パワーあふれる横山さんに負けることなく対等に渡り合い、横山さんの快演を支えていたと思います。
とまあ、素晴らしい演奏ではありましたが、へそ曲がりの私としましては、甘く切ない歌わせどころは、思いっきり感傷的に泣かせてほしかったかなと思います。3曲とも受けた印象は同じであり、すべてが横山流に味付けされ、悪く言えば一本調子に横山幸雄の世界が作られ、作曲者の違い、曲の違いが感じられにくかったように思います。
でも、最後までパワーを失わず、アンコールまでサービスしてくれた横山さんの実力はすごいと思います。時々汗を拭いたりはしていましたが、疲労を感じさせることなく、力強くも美しい音楽を作り続けました。これは賞賛されるべきであり、ブラボーを贈りたいと思います。
(客席:2階C*−*、S席:定期会員 \4900) |