大瀧拓哉 ピアノリサイタル
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2014年8月10日(日) 14:00  スタジオスガマタ
 
ピアノ:大瀧拓哉
 


リゲティ:ピアノのための練習曲集より
       第7番 ガランボロン(悲しい鳩9
       第11番 不安定なままに
       第6番 ワルシャワの秋

ドビュッシー:12の練習曲より
       第1番 5本の指のために(ツェルニー氏による)
       第6番 8本の指のために
       第5番 オクターブのために

プロコフィエフ:戦争ソナタ第7番 Op.83

(休憩15分)

シューマン:幻想曲 ハ長調 Op.17

(アンコール)J.S.バッハ:フランス組曲第5番より サラバンド
 
 

 長岡市出身で、現在ドイツ留学中の大瀧さん。噂には聞いていましたが、実際の演奏に接したことはなく、どんなものかと気になり聴かせていただくことにしました。

 台風襲来中で、本日開催予定の新潟まつり花火大会も延期となってしまいました。でも、音楽には関係ありません。ゆっくりと昼食を食べ、スタジオスガマタへと向かいました。狭いスタジオですが、たくさんの音楽ファンで賑わっていました。

 黒いスーツが凛々しい大瀧さんが登場し、曲目解説を挟めながら演奏が進められました。若さ溢れる俊敏で強靭な打鍵に圧倒されました。狭い空間に置かれたヤマハのフルコンサート・グランドピアノを思う存分鳴らしていましたが、決して音に濁りはなく、サウンドはあくまでもクリアでした。圧巻は戦争ソナタ。終楽章の激しさには息を呑むばかり。音の攻撃にひれ伏すしかありませんでした。

 情熱溢れ、血沸き肉踊る演奏に驚愕し、休憩時間も席を立つことができませんでした。音の余韻をかみしめ、後半に備えて息を整えていました。

 そして後半はシューマンの幻想曲。自分なりの曲の解釈を説明して演奏に入りました。ベートーヴェンの歌曲をモチーフに作られたというこの曲には、クララとの切ない恋、熱き思いが込められているとのこと。そんな思いが伝わってきました。
 前半同様のダイナミックな演奏の中に、ロマン性が感じられ、終楽章は胸に染みるものがありました。おそらくシューマンがこの曲を作曲したのは大瀧さんとほぼ同じ年齢。現在の大瀧さんだからこそ成しえた演奏だったのかもしれません。

 アンコールにバッハを優しく演奏し、終演となりましたが、ヘビーな料理の後に、上等なデザートをいただいたような気分でした。

 噂には聞きましたが、これほどの実力者とは驚きでした。このような若き俊才が新潟から育っていたとは、新潟県人としてうれしく、誇らしく感じます。ドイツ留学2年目とのこと、これからどれほど花開いていくのか期待は膨らみます。

 良い音楽を聴いた後は心も弾みます。台風が近付き強風が吹いていますが、嵐のような演奏を聴いた後にはそよ風でしかありません。


 最後に、このような才能ある若者を見つけ出し、紹介してくれるコンチェルトの佐藤さんにも感謝せねばなりません。ありがとうございました。


*その後過去の記録を眺めていましたら、大瀧さんの演奏を以前聴いていたことが判明しました。2011年のLFJ新潟の交流ステージで、紫竹友梨さんとの共演でした。
   


(客席:正面3列目、\1000)