クリスチャン・ツィメルマン ピアノ・リサイタル 2015
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2015年11月28日(土) 17:00  柏崎市文化会館アルフォーレ 大ホール
 
ピアノ: クリスチャン・ツィメルマン
 

オール・シューベルト・特別プログラム


7つの軽快な変奏曲 ト長調 Anh.I-12

ピアノ・ソナタ第20番 イ長調 D.959

(休憩20分)

ピアノ・ソナタ第21番 変ロ長調 D.960

 2007年7月中越沖地震の後、復興を祈念して、柏崎市の産業文化会館で市民を招待してのコンサートが開催されました。そのときに、新しいホールができたら再び柏崎でコンサートを開催するという約束をしたそうです。今日は、少し遅れましたが、その約束にこたえてのコンサートです。今回のリサイタルでは、日本海側では柏崎だけだそうです。
 柏崎といえば、13年の単身赴任生活をし、その後も10年間毎週通った思い入れの強い町です。この柏崎にツィメルマンが来演すると知り、早々にチケットを買い求めました。

 ツィメルマンは度々新潟に来演しており、これまで 2008年7月2010年6月2012年12月の3回聴いたことがありますので、今回は4回目ということになります。毎回プログラムは多彩ですが、今回はオール・シューベルトということで、どんなコンサートになるか期待が膨らみました。

 曇天の新潟市を出発し、国道116号線で柏崎へと向かいました。出雲崎を過ぎるころから雨が降り出し、柏崎に入りましたら本格的な雨模様となってしまいました。

 開演までには時間がありましたので、なじみの「ソルトスパ潮風」で一休みすることにしました。温泉に浸かっていい気分になり、ふと横を見ましたら、なんと私の同級の友人がいるではないですか。もう、びっくりしてしまいました。話しを聞きましたら、やはりツィメルマンを聴きに来たとのこと。県内はここだけですから、聴きに来るのはわかりますが、まさか同じ時間に、同じ温泉の、同じ浴槽に、肩を並べて浸かっているなんて、何という偶然でしょう。

 話がそれてしまいましたが、一休みした後、アルフォーレへと向かいました。このホールは、2012年9月の開館記念コンサートを聴きに来て以来、何度か来ています。1102席で、2層構造の重厚感がある豪華なホールですが、すべての客席はステージ中央を向き、傾斜もついていて、見やすいのが特徴です。最新のホールだけあって、音響も十分に検討されており、美しい響きを堪能できます。

 開場時間となり、開場待ちの長い行列の最後尾について入場しました。S席エリアはほぼ埋まっていましたが、A席エリアの空席が目立ちました。ステージ中央にスタインウェイが置かれていましたが、今回もツィメルマンが持参したピアノと思われます。

 開演時間となり、白髪が美しいツィメルマンが登場し、シューベルトが13歳のときの作といわれる「7つの軽快な変奏曲」で演奏が始まりました。以後演奏は楽譜を見ながら行われました。ほのぼのとした主題提示に始まり、その後は軽やかな変奏が奏でられ、一気に演奏に引き込まれました。

 その後退場することなく、すぐに「ピアノ・ソナタ第20番」に入りました。私にとりましてはほとんど聴く機会がない曲であり、ちょっと馴染みにくく感じます。音楽が次々と形を変え、静かと思えば急に燃え上がったり、唐突な休止が入ったりと、ちょっと付いて行くのが難しかったですが、巨匠然とした演奏と、繰り出される音のきらめきに、只ならぬものを感じました。

 休憩後は「ピアノ・ソナタ第21番」です。これも前半同様に、自由に曲が展開し、よどみなく流れ出るきらびやかな音の洪水に身をゆだね、至福のひと時をすごしました。最後は立ち上がって、これでもかというような一撃を加え、演奏が終わりました。

 何度かのカーテンコールがありましたが、アンコールなしで終演となりました。曲数としては少なかったですが、内容は十分でした。前菜とメインディッシュが2つ。13歳の作品と最晩年のソナタ2曲というプログラムは、深い意味があってのことと思います。

 現代最高のピアニストのひとりであるツィメルマンを聴くことができたことは幸せでした。先日のトリスターノも良かったですが、熟年の創り出す音楽は、やはり別格です。精神性あふれる音楽に、心地良い疲労を感じながら外へ出ますと、冷たい雨が降りしきっていました。

 雨の国道を快適に走り、1時間20分で自宅に到着。こちらも雨模様でした。気温は低く肌寒さを感じますが、心は熱いままです。良い音楽を聴けた幸せに、今夜は美味しいお酒が飲めそうです。
 
   

(客席:1階15-13、S席:¥6000)