だいし銀行主催で、毎回素晴らしい奏者を招いて開催されるだいしライフアップコンサート。今回は森麻季さんの登場です。
森さんは、東響定期で何度か聴かせていただいていますが、リサイタルを聴くのは今回が初めてです。チケットはすぐに完売となり、私が買ったプレイガイドでは、私のチケットが最後の1枚でした。
自由席ですので、早くから並んで良い席を確保したかったのですが、東響ロビーコンサートを聴きましたので、終演とともに、大急ぎでだいしホールへと向かいました。
ホールに着きますと、すでに開場待ちの長い列ができていて、整理券が配布され、整理券の番号順にグループごとに入場しました。私は第5グループで、良い席はないかと心配したのですが、杞憂に終わり、いつものお気に入りの席を確保できました。
クリーム色のドレスが麗しい森さんとピアノの山岸さんが登場し、“宝石の歌”で開演となりました。以後、森さんの簡潔でわかりやすい曲目紹介を交えながら、演奏が進められました。森さんの歌声はリリカルであり、高音のきらめきが美しいです。
山岸さんのピアノも、森さんの歌声に合わせてか、色彩感と輝きがあり、いつものベーゼンドルファーの音とは違うような印象も受けました。
歌の合間にはピアノの独奏もありましたが、歌心のある流れるような演奏でした。リスト、モーツァルト、ガーシュウィン、ショパンと、ピアノソロの曲目は多彩でしたが、それぞれに絶妙な味付けがなされ、芸達者振りが感じとられました。伴奏ピアニストとして活躍しておられますが、さすがにスペシャリストだけあって、森さんの歌声を存分に引き立てていました。
休憩時間は入念なピアノ調律がされていましたが、音色にこだわっていたのでしょうか。高音のきらめきが印象に残っています。
さて、当初のプログラムでは、前半最後はモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」からのアリアでしたが、グノーの“私は夢に生きたい”に変更になりました。後半最初も、バーンスタインの「キャンディード」からのアリアのはずでしたが、マイヤベーアの“影の歌”に変更になりました。
森さんが得意とするコルラトゥーラを駆使できる曲に変えたとのことです。聴き映えのする曲に変更して、実力を知らしめようという演出でしょうか。
後半はブルーのドレスで登場し、最後のプッチーニでは再びカラフルなドレスに着替えて登場と、視覚的にも楽しませていただきました。
アンコールを2曲歌って終演となりましたが、期待通りの歌声に満足感を感じました。曲目は和洋様々でしたが、いずれも曲の魅力が伝わってきました。
ただし、声量豊かに突き抜けるような高音部は鮮烈ですが、声の張り、特に低音部の響きに難を感じないでもありませんでした。私の好みの問題でしかないのでしょうけれど。
実は今日の演目の多くは、偶然にもつい最近、新潟の誇る歌手である鈴木愛美さんや今井あいさん、櫻井綾さんらの歌で聴いています。
歌声だけに限って言えば、私が好きな鈴木愛美さんの方が上じゃないかと感じることもありましたが、さすがに森さんは堂々としたもので、スターのオーラを発散しておられました。歌のほか、落ち着いた話し方、華麗な容姿、振る舞いを含めて、舞台人として完成されたものを持っておられます。さすがだと思いました。
帰り際、エレベーターに乗り込む森さんとニアミスするという幸運にも恵まれました。美しい人が美しい声で歌うと、美しい歌は、もっと美しくなります。
芸術に容姿は関係ないという人もいますが、舞台芸術という視点で考えますと、ヴィジュアル面も大切なことだと思います。
(客席:E-6、¥2500) |