Ludwig Chamber Players〜日本×ドイツ 多彩なる室内楽の夕べ〜
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2015年4月29日(水) 16:00  西新潟市民会館
 
Ludwig Chamber Players
 Vn:白井 圭、Va:ヤニス・リーバルディス、Vc:横坂 源、Cb:幣 隆太郎
 Cl:ディルク・アルトマン、Fg:ハンノ・ドネヴェーグ、Hr:ヴォルフガング・ヴィプフラー
 

J.シュトラウスII(ウッキ編):喜歌劇〈こうもり〉序曲

R.シュトラウス(ハーゼンエール編):〈ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら〜もう一人のティル・オイレンシュピーゲル〜〉

黛敏郎:無伴奏チェロによる〈文楽〉

(休憩15分)

ベートーヴェン:七重奏曲 変ホ長調 Op.20

(アンコール)
リムスキー=コルサコフ:くまん蜂の飛行
 
 

 新潟市西区と新潟大学教育学部音楽科が提携して開催される「暮らしっく広場」が今年も今日から開催されます。西区民である私は、昨年も3公演聴かせていただきましたが、今年も参加させていただくことにしました。
 今年は最終年だそうで、西区国際音楽祭と題して、全部で3公演が予定されています。今日はその第1回目で、 Ludwig Chamber Players の演奏会です。

 このアンサンブルは、シュトゥットガルト放送交響楽団のメンバーと日本の若手演奏家を中心に2013年に結成されたそうです。西区出身の横坂さんが参加しているのが注目されます。

 会場の西新潟市民会館は新潟市西区小針の住宅街にあり、300席の多目的ホールを有しますが、いわゆる公民館です。新潟市内にはよくある形ですが、客席は収納式で、前方は平土間に椅子が並べられています。ステージには音響反射板はなく、仮設の小さな反射板が並べられていました。

 自由席でしたので、早めに会場入りし、階段状になる部分の最前列中央に席を取りました。1ヵ月前にはチケット完売したというだけあって、地元の方々で満席となりました。新潟大学教育学部音楽科の学生さんの運営でコンサートが進められました。

 最初はお馴染みの「こうもり」序曲で開演しました。ステージ上は、左からヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ホルン、ファゴット、クラリネットの7人が並び、チェロとコントラバス以外は立っての演奏でした。
 各奏者とも良い音色であり、個々の演奏技術の素晴らしさを感じさせましたが、特にヴァイオリンがリードして、アンサンブルをうまくまとめていたように感じました。
 ホールの響きは決して良いとは言えませんが、聴く側も良く集中し、雑音もなく、音楽を楽しむには不満はありませんでした。

 続いては、編成がヴァイオリン、コントラバス、ホルン、ファゴット、クラリネットの5人になって、、「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」の室内楽版である「もう一人のティル・オイレンシュピーゲル」が演奏されました。
 この曲は変わった編成ですが、昨年1月のベルリンフィル八重奏団のコンサートでも同じ編成で演奏したのを聴いたことがありました。今日の演奏も、ベルリンフィルの面々に引けとらない演奏で、曲を存分に楽しむことができました。

 その後、地元西区出身の横坂さんの挨拶とクラリネットのアルトマンさんへのインタビューがあり、客席からの質問にも答えてくださって、楽しませていただきました。

 続いての横坂さんの独奏による「無伴奏チェロによる<文楽>」が圧感でした。黛敏郎作曲による曲の良さもありますが、横坂さんの演奏技術の凄さに驚嘆しました。さまざまなテクニックを要求される曲で、左手で弦を弾きながら右手の弓での演奏も同時に行うというのは曲芸的にすら感じました。
 和の静けさ、繊細さを感じさせながら、ダイナミックな響きも聴かせ、心が揺さぶられるような感動を与える演奏だったと思います。

 休憩後は全員登場して、ベートーヴェンの七重奏曲です。CDは持っているものの、日頃聴く曲ではなく、実演を聴くのも初めてです。ここでも各奏者の演奏が際立っていて、素晴らしいアンサンブルを作り出していました。
 明るい曲調もありますが、心が躍るような、元気を与えてくれるような演奏に、ホールは明るい空気に包まれ、感動と興奮のフィナーレを迎えました。

 アンコールは何と「熊蜂の飛行」。ほーっとため息をつかせるような猛スピードの演奏に歓喜し、最後を〆るにふさわしい演奏を十分に楽しませていただきました。

 学生たちの企画・運営によるアットホームな雰囲気の中で、小編成の室内楽ならではの楽しみを感じることができました。日本の才能あふれる若者を、熟練のドイツオケの面々がサポートし、盛り上げて、熱気あふれ、生命感と躍動感あふれる音楽を創造していました。

 新潟市でコンサートといえば音楽ホールがある中央区ばかり。住宅街の西区で、このような本格的な演奏を聴けるというのは幸せだと思います。西区役所と新潟大学の協力に感謝したいと思います。

 この Ludwig Chamber Players の公演は5月8日に長岡市でも開催されます。前半の曲目は今日とは違うようですが、後半は同じです。きっと長岡に人たちにも素晴らしい音楽を提供してくれるものと思います。長岡の皆さん、是非お聴きください。

 

(客席:F-12、¥1500)