ベルリン・フィル八重奏団は、名門ベルリン・フィルの首席クラスからなるアンサンブルですが、今回は日本が誇る第1コンサートマスターの樫本大進出演ということで、期待を持ってチケットを買っていました。
樫本さんの新潟への来演は、2010年12月以来となります。この時はコンマス就任決定直後でしたが、あれから3年が過ぎ、実績を重ねて円熟した樫本さんの演奏が聴けるものと楽しみでした。しかし、平日開催のコンサートはなかなか行きにくく、どうなるかと心配したのですが、何とか都合をつけて行くことができました。
出張先から車を飛ばし、開演15分前に到着しました。3階席は発売されませんでしたが、客席は9割方埋まっていて、客の入りは良かったです。私の席は2階Cブロック左寄りです。
ヴァイオリン(樫本)、コントラバス、ファゴット、ホルン、クラリネットが登場。1曲目は、R.シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないだずら」を五重奏用に編曲した「もう一人のティル・オイレンシュピーゲル」です。5人は立っての演奏でした。
最初の音を聴いて、「きれいだなあ・・、うまいなあ・・」というのが第一印象でした。ベルリン・フィルを代表する奏者たちですから、良いに決まっているのですが、期待は裏切りませんでした。編曲もすばらしく、5人のアンサンブルで、この曲の面白さを良く表現しており、フルオケ版に負けないほどに楽しめました。特にホルンの響きがきれいであり、低音部を支えるコントラバスも良かったです。
2曲目は、弦楽四重奏にクラリネットを加えて、モーツァルトのクラリネット五重奏曲です。今度は椅子が出されて、全員座っての演奏でした。柔らかなビロードのようなサウンドで、上品さが感じられる極上の美しい音色に聴きほれました。第2楽章は天国にいるかのようであり、第3楽章、第4楽章と進むにつれ、あまりの心地よさに、意識が遠のきそうになるほどでした。上品すぎて刺激が少なすぎたと言えなくもありませんが・・。
休憩後はメインプログラムの八重奏曲です。左から、ヴァイオリン1、ヴァイオリン2、ヴィオラ、チェロ、コントラバス、ホルン、ファゴット、クラリネットと並び、チェロ以外は立っての演奏でした。八重奏ながらもミニオーケストラというべき音色と色彩感で楽しませてくれました。
6楽章からなり、演奏時間が1時間近くの長大な曲ですが、楽章ごとに性格が異なり、それぞれが単独でも楽しめます。特にビデオクリップで紹介されていた第3楽章、そして各人の名人芸が楽しめた終楽章は特に聴き応えがありました。でも、室内楽にしては長い曲ですね。良い演奏には違いないですが、ちょっと冗長に感じないでもありませんでした。アンコールなしで終演となりましたが、ボリュームたっぷりの内容であり、お腹いっぱいになりました。
今回の日本ツアーは1月23日から2月2日まで、11日間で10公演という忙しさです。移動を考えますと、かなりの強行スケジュールです。新潟は6日目で疲労も蓄積しているものと思います。でも、そんなことは微塵も感じさせず、むしろ演奏が重ねられ、アンサンブルが熟成されてきたとも言えそうです。いずれの演目も良かったですが、1曲目が特に面白く聴けました。
ベルリン・フィルは、これまで1回しか聴いたことがないのですが、このアンサンブルからベルリン・フィルの香りを嗅ぐことができたように思いました。今度はベルリン・フィルの新潟への来演を楽しみにしたいと思います。われらが樫本さんは、堂々とした演奏ぶりで、頼もしく感じました。今後の発展を応援したいと思います。
(客席:2階C7-11、S席:会員割引¥6750) |