恋するクラシック 〜情熱の音〜
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2015年5月2日(土) 15:00  新潟市音楽文化会館
 
バリトン:品田広希、メゾソプラノ:中森千春
ピアノ:小林浩子、高橋沙紀子、本間 優
ヴァイオリン:野口万佑花
 
1.ヴァイオリン独奏 野口万佑花Pf:小林浩子
   エルガー:愛の挨拶
   モンティ:チャルダッシュ

2.メゾソプラノ独唱 中森千春、Pf:本間 優
   石川啄木・詩、越谷達之助・曲:初恋
   瀬戸内寂聴・詩、千原英喜:ある真夜中に

3.ピアノ独奏 小林浩子
   ブラームス:ピアノソナタ第3番 op.5 より 第2楽章

4.ピアノ連弾 高橋沙紀子、本間 優
   ビゼー/レブロヴィッチ・編:《カルメン組曲》より 前奏曲〜ハバネラ〜闘牛士の歌
   ピアソラ:リベルタンゴ

(休憩10分)

5.バリトン独唱 品田広希、Pf:小林浩子
   北原白秋・詩、山田耕筰・曲:待ちぼうけ
   ドナウディ:私の愛の日々

6.ヴァイオリン独奏 野口万佑花
Pf:小林浩子
   チャイコフスキー:バレエ音楽《眠れる森の美女》より “ワルツ”

7.ピアノ独奏 本間 優
   ベートーヴェン:ピアノソナタ第23番 op.57 <熱情>

(休憩10分)

8.バリトン独唱 品田広希、Pf:小林浩子
   武満 徹・詩/曲:小さな空

9.メゾソプラノ独唱 中森千春、Pf:本間 優、Vn:野口万佑花*
   岩谷時子・訳詩、モノー・曲:愛の賛歌
   サン=サーンス:歌劇《サムソンとデリラ》より “あなたの声に私の心は開く” *

10.ピアノ独奏 高橋沙紀子
   リスト:ファウスト・ワルツ

11.バリトン独唱 品田広希、Pf:小林浩子
   チャイコフスキー:歌劇《スペードの女王》より 
             “私はあなたを量りきれないほど愛しています”
 
 

 連休の初日、初夏を思わせる陽気の中、この新潟期待の若手演奏家が参集したジョイントコンサートに出かけました。
 駐車場に車をとめ、白山公園の空中庭園を散策しましたが、新緑が目に鮮やかであり、春爛漫を感じました。気候的には今が新潟のベストシーズン。このまま好天が続きますように・・・。

 さて、今日のコンサートのテーマは「恋するクラッシック 〜情熱の音〜」。このコンサート名を目にして、最初は一体どういう趣旨のコンサートか全く想像できませんでした。チラシを見ても、コンサートの趣旨については記載がありません。LFJ新潟の関連イベントであり、今年のテーマである「パシオン 〜恋する作曲家たち〜」にちなんでのネーミングと想像してコンサートに臨みました。

 昨年もLFJ新潟関連イベントとして「若手演奏家による三都物語」というジョイントコンサートが開催されましたが、これと同じ趣旨の演奏会ということが、最後の挨拶で初めて理解できました。
 昨年とメンバーは変わっていますが、本間 優さん、高橋沙紀子さんは昨年に引き続いての出演です。本当は昨年出演されたソプラノの加茂愛里も参加の予定だったのですが、体調不良とのことで出演できなくなり、演目の変更も余儀なくされました。早いご快復をお祈り申し上げます。

 コンサートの趣旨は別にしまして、出演者の中には、ファンである小林さん、中森さん、野口さんらの名前もあり、是非聴きに行かねばと思っていました。
 このメンバーの中で唯一聴いたことがなかったのが黒一点のバリトンの品田さんです。実は品田さんのご両親とは懇意にさせていただいており、このコンサートのお誘いを受けました。もともと行く予定にしていましたし、新潟市初登場の品田さんの歌声も楽しみでした。

 さて、昨年はスタジオAでしたが、今年は音楽文化会館です。さすがにこの大きなホールを満席にするのは困難であり、空席が多かったのは仕方ないところでしょう。会場には私の良く知った顔が多数ありました。

 時間となり、野口さんのヴァイオリン演奏で開演です。野口さんといえば、2013年9月のコンチェルト・インストアライブでの神懸り的演奏が記憶に強く残っており、密かに楽しみにしていました。
 演奏は、客観的には十分に素晴らしい演奏だったと思いますが、緊張されていたのか、ちょっと実力を出しきれていなかったかもしれません。
 愛の挨拶をさらりとそつなく弾いて、上々かと思いましたが、チャルダッシュの聴かせどころの最高音部の音程が定まらなかったのが少し残念でした。この曲は2週間前に佐々木友子さんの演奏を聴いたばかりなのですが、若者はベテランには及ばずというところでしょうか。

 次は中森さんの独唱です。中森さんはこれまで何度も聴かせていただいており、今年に入っても2月のシューベルティアーデで聴いたばかりです。聴く度に成長を遂げている中森さんには驚くばかりです。今回も朗々とした歌声は安定感があり、年齢からは想像できないような落ち着きと風格を感じます。デビュー当初から陰ながら見守っている私としましては、感慨もひとしおです。

 続いては小林さんのピアノです。小林さんも、これまでいろんな機会に演奏を聴かせていただいていますが、成長目覚しく、この春に音大を卒業されて、大人のピアノを聴かせてくれました。力で押すのではなく、むしろ力を抜いて、優しい調べに心は癒されました。

 次は高橋さんと本間さんの連弾です。二人の連弾は昨年も聴いていますが、なかなか聴かせる演奏だったと思います。ただし、若干息が合わなかった場面もあり、ダイナミックさのほかに、繊細さを併せ持つともっと良かったかもしれません。

 休憩後は期待の品田さんの独唱です。最初小林さんだけステージに出てきて演奏を始め、どうなるかと思ったのですが、品田さんは客席から登場し、コミカルな演技を交えての歌声で、会場を和ませてくれました。なかなか芸達者であり、声量も豊かですので、オペラで本領を発揮されるのではないでしょうか。期待に違わぬ素晴らしい歌い手です。

 次は再び野口さんのヴァイオリンでしたが、演奏を楽しむ間もなく、短くあっけなく終わってしまい、拍子抜けというのが実感でした。もっとじっくりと聴かせて欲しかったです。

 続いては本間さんの独奏です。これは爆演というべきでしょう。気分爽快。参りましたというしかありません。ダイナミックに、猛スピードに飛ばし、ダンプカーが一般道を疾走するような、スリル満点の度肝を抜くような演奏でした。ただし、ダイナミックさと乱暴さは紙一重であり、崩壊ぎりぎりのところで踏ん張っていたと思います。十分満足できましたが、もう少し繊細さがあれば最高かもしれません。

 二度目の休憩があり、再び品田さんの歌です。武満徹の名曲をしっとりと歌い、しみじみと心に染み渡るような感動を与えてくれました。

 次は中森さんの歌です。前半同様に、落ち着きがあり、情感にあふれた歌声に聴き惚れるばかりでした。「サムソンとデリラ」では野口さんのヴァイオリンも加わって、ロマンチックな歌声に酔いしれましt。

 続いては高橋さんのピアノ独奏です。男性的で、有無を言わさず力でねじ伏せるような本間さんとは裏腹に、繊細で優雅な演奏を聴かせてくれました。女性らしい美しい響きに感動しました。

 最後は品田さんです。コンサートを締めくくるにふさわしい歌声に満足感を感じました。新潟の声楽界は、女性に比して男性の影が薄いように思いますが、男も負けていないことを実感しました。

 カーテンコールでは全員登場し、リーダー的存在の本間さんの挨拶の後、男一人の品田さんもスピーチして終演となりました。

 曲目は多彩であり、和洋混交、硬軟いろいろ。一貫性が感じられず、「恋するクラシック」というタイトルとどう結びつくのか疑問を感じないではありませんでしたが、結果として十二分に楽しませていただきました。

 出演者のそれぞれが魅力的でしたが、中森さん、品田さんの歌声は良かったです。伴奏に、独奏に、連弾にと大活躍されたピアノの皆さんも賞賛したいと思います。
 中でも小林さんは良かったと思います。独奏もさることながら、伴奏での柔らかな音色が心に残っています。独奏者を引き立てる演奏は、ため息が出るほどに美しかったです。

 加茂さんが出演できなかったのは残念でしたが、内容豊富で、充実したコンサートだったと思います。品田さんは今回が新潟市初登場でしたが、新潟市の聴衆に存在感をアピールできたものと思います。今後も是非来演して欲しいと思います。

 新潟の若手音楽家の素晴らしさを再認識し、明るい気分でホールを後にしました。

 

(客席:9-12、¥1000)