日本フィルハーモニー交響楽団 第645回 東京定期演奏会
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2012年11月9日(金) 19:00  サントリーホール
 
指揮:山田和樹
ピアノ:パスカル・ロジェ
コンサートミストレス:江口有香
 



山田和樹 正指揮者就任披露演奏会

野平一郎:グリーティング・プレリュード

ガーシュウィン:ピアノ協奏曲 ヘ調

  ソリストアンコール:サティ:グノシェンヌ第2番

(休憩15分)

ヴァレーズ:チューニング・アップ

ムソルグスキー(ストコフスキー編):組曲「展覧会の絵」

 
 

 東京出張の夜、芸術にいそしむため、このコンサートを選択しました。今一番輝いている若手指揮者といえば、山田和樹の名を上げないわけにはいかないでしょう。その山田和樹氏が日本フィルの正指揮者に就任し、そのお披露目公演が今日のコンサートです。ちょうど東京出張の日に当たり、大変幸運でした。

 さて、私が日本フィルを聴くのは、コバケンさんの指揮で聴いた昨年5月の第630回東京定期演奏会以来です。また山田さんの指揮を聴くのは2度目です。実は山田さんは新潟で指揮をしているのです。それは2010年8月に開催された「ジュニアオーケストラ・フェスティバル 2010 in NIIGATA」。全国の公立ジュニアオケの交流演奏会でしたが、ここで岡山市ジュニアオケを指揮して、ジュニアらしからぬ爆演を引き出して、その実力を知らしめてくれました。翌日は松本でサイトウキネン・デビューを果たし、その後の活躍は皆さんご存じの通りです。

 早めの夕食を摂り、ビールで良い気分になりながら入場。ちょうど山田さんのプレトークが始まるところでした。今日のプログラムの選曲の理由や曲目の解説などを、楽しく語ってくれました。アメリカ物をやろうということで、ガーシュウィンとヴァレーズを演奏したかったそうで、それだけだと足りないので、「展覧会の絵」と野平さんの曲を加えたのだそうです。「展覧会の絵」はラヴェル編じゃなくて、ストコフスキー編で演奏するところに意気込みを感じました。

 拍手のない中静かに団員が入場してチューニング。山田さんが登場して、1曲目は弦楽だけで「グリーティング・プレリュード」です。プレトークで山田さんが解説してくれましたが、最初は混沌としたつかみ所のない音楽ですが、だんだん絡み合った音がほどけてきて、ある有名な曲のメロディが現れるという趣向です。その曲名は伏せておきますが、なかなか良くできた曲で楽しめました。もちろん日本フィルの演奏のすばらしさがあってのことですが。演奏後は作曲者も壇上に呼び出され、拍手を受けていました。

 2曲目は、パスカル・ロジェを迎えて、ガーシュウィンです。ピアノとオーケストラが見事に融合し、大編成のオケから紡ぎ出されるシンフォニックでジャジーな演奏は切れがあって心地良かったです。ピアノが良かっただけでなく、オケのすばらしさに感激しました。特に第2楽章で聴かせてくれた管のすばらしい演奏に息をのみました。ソリストアンコールをサティを静かに演奏し、そのしゃれた演奏は、まさにフランスの香り。良かったです。

 休憩後は、「チューニング・アップ」。プレトークで、オーケストラのチューニングを題材にした曲というこは聞いていましたが、まさかこう来るとは思いませんでした。
 前半と同様に、拍手のない中静かに団員が入場。オーボエがラの音を出し、チューニング。となるものと思いましたが、実は山田さんが団員と一緒に密かに入場。チューニングが始まるやいなや指揮台に上がり、指揮を始めました。チューニング開始が実は演奏開始だったのです。有名なメロディが顔を出したりして、実に面白く、楽しい演奏でした。

 そして、最後は「展覧会の絵」。ラヴェル編曲とは全く違った編曲で、新鮮に感じました。いかにもストコフスキーというような、ハリウッド的なゴージャスなサウンドは、音の絵巻を見るようであり、ステージいっぱいの大編成のオケが奏でる迫力ある演奏は爽快でした。

 日本フィルの実力を知らしめる、すばらしい演奏だったと思います。日頃東響ばかり聴いていますが、たまに他のオケを聴くと新鮮に感じます。弦も管もすばらしく、特にトランペットが良かったです。最後にコンマスだけでなく、指揮者を含めて全員で礼をして終演というのは気持ち良いですね。

 そして、何より山田さんの指揮のすばらしさは特筆すべきでしょう。就任披露公演にして既にオケを掌握し、自分のものにしているようです。
 演奏もさることながら、選曲の良さにも感心しました。この若さにして、これだけの指揮をするなんて、すごい指揮者と思います。これからのますますの活躍が期待されます。
  

(客席:2階C13−9、A席:¥6000)