東京交響楽団 第60回新潟定期演奏会
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2010年7月10日(土) 17:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:ユベール・スダーン
ソプラノ:澤畑恵美、アルト:小川明子、テノール:高橋 淳、バス:久保和範
合唱:にいがた東響コーラス(合唱指揮:安藤常光)
コンサート・マスター:グレブ・ニキティン
 
 



ブルックナー:交響曲第9番 ニ短調 WAB.109 (ノヴァーク版)

ブルックナー:テ・デウム ハ長調 WAB.45


 
 
 
 

 相変わらずの梅雨空で、蒸し暑い日々が続いています。まだまだ梅雨は明けそうにありません。こんな気分を晴らすには、良い音楽を聴くに限ります。
 ということで、仕事を終えた後、早めにホールに向かいましたが、駐車場に入って、職場に携帯を忘れてきたことに気付きました。取りに帰るべきかどうか思案しましたが、開演に遅れること必至だったので、緊急連絡がないことを祈りつつ、そのままホールに向かいました。

 今回の東響定期は音楽監督のスダーンの指揮でブルックナーの9番を演奏するとあって、今シーズンでは一番のプログラムと期待していました。いつもは東京の公演の翌日に新潟定期になるのですが、今回は新潟が先で、明日がサントリー定期になります。今回のみ土曜日の開催なので間違えそうでした。

 拍手の中楽員が入場。5月にサントリー定期を聴いたときは拍手なしの入場でしたが、やはり拍手ありの方が締まって良いですね。全員揃うまで起立して拍手に応え、コンマスが登場して一礼、一段と大きな拍手が湧く、という新潟方式は開演前の気分を盛り上げるには最高と思います。今日のコンマスはニキティンさんですが、なんだか随分久しぶりのように感じます。

 スダーンが登場して開演。最初の幽玄なブルックナー開始から見事なサウンドに息を呑みました。弦の序奏の中から湧き上がるブラスの咆哮。これがブルックナーだ!、と感激しっぱなし。いつになく各セクションともすばらしい演奏で、特にホルン(4人はワーグナー・チューバ持ち替えあり)が良くて演奏が締まっていました。すばらしい管楽器(特に荒さんのオーボエは最高!)に劣らず、弦の響きも良くて、東響の良さを再認識しました。やはりスダーンのときの東響は気合いの入り方が違うようです。奏者の息づかいまでが客席に伝わりました。

 3楽章までで未完の交響曲ですが、4楽章の代わりにテ・デウムが休憩なしに演奏されました。3楽章が終わるとともに、スダーンの合図で合唱団がステージ後方の合唱団席につき、独唱者も合唱団の前につきました。オルガン席にも奏者が着席。この間スダーンは指揮台から降りず、静寂の中に準備を待っていました。

 そしてテ・デウム。なかなか演奏される曲でなく、私もCDを1種類持っているのみですが、これも良い演奏でした。にいがた東響コーラスは暗譜での演奏で、良く訓練されたことがわかる力強くもきれいな歌声でした。独唱陣も良く、特に2月の定期にも来演したテノールの高橋さんは光っていました。
 オルガンも加わっての重厚な曲ですが22分余りのちょうど良い長さで、9番の第4楽章として演奏しても違和感は少なく、感動を誘いました。

 休憩なしで90分程度で終演となりましたが、満足感でいっぱいでした。この記事はヴァントのCDを聴きながら書いていますが、ヴァントの演奏も良いのですが、生で聴いた東響の演奏はまた格別でした。気は早いですが、今シーズンのベストコンサートの候補になりそうに思います。

 駆け足で駐車場に急ぎ、また職場へと車を走らせましたが、頭の中にはブルックナーサウンドがいつまでも響き渡っていました。
 

(客席:2階C5-**、S席:定期会員、5500円)