東京交響楽団 第49回新潟定期演奏会
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2008年7月6日(日) 17:00  新潟市民芸術文化会館コンサートホール
 
指揮:金 聖響
ソプラノ:澤畑恵美、 メゾ・ソプラノ:竹本節子
合唱:にいがた東響コーラス、 合唱指揮:山神健志
 
 
シューベルト:糸を紡ぐグレートヒェン(Sop)(レーガー編)

シューベルト:アヴェ・マリア(Sop)(ラック編)

シューベルト:魔王(M-sop)(ベルリオーズ編)

(休憩20分)

マーラー:交響曲第2番 ハ短調「復活」(2006年新校訂版)

 
 

 梅雨というのにまとまった雨もなく、暑い日々が続いています。農作物への被害も懸念され、大雨にならない程度の雨がほしいところです。さて、今日は今シーズンの東響定期の目玉、金聖響指揮による「復活」です。東響の「復活」は、2003年10月の第23回新潟定期演奏会で、井上道義氏の指揮で演奏されていますし、個人的には2006年8月のサントリーホールでの名曲の旅シリーズ第21回で飯森さんの指揮で聴いています。しかし、両方とも今ひとつの思いが残りましたので、今度はいかにと期待が膨らみました。

 今日は県民会館で一青窈のコンサートが、陸上競技場ではJ1サテライトリーグの試合があり、駐車場の混雑が予想されましたので、早めに出かけました。某CD店を覗き、県民会館の情報ラウンジで時間つぶしをして外に出ると、猛暑の中、サッカーの応援の歓声が響き渡っていました。
 開場とともに入場し、しばし客席でまどろんでコンサートに備えました。今日は合唱が入るので、P席とステージ両サイド席が合唱団用に空けられていましたが、その他の客席は9割程度の入りでしょうか。ステージはいつもよりひな壇が高く組まれていました。オーケストラは対向配置で、コントラバスとチェロが左手でした。

 いつもの様に拍手の中楽員が入場。コンマスの大谷さんが登場すると一段と大きな拍手が湧きました。新潟での大谷さんの人気は絶大です。東響定期以外でも度々新潟に来演しておられますし、今日もお昼に某所でインストア・コンサートをやられていたようです。

 最初はシューベルトの歌曲です。金とソプラノの澤畑が登場し、2曲歌われました。柔らかなオーケストラの調べに乗せて、澤畑の美しい歌声がホールに響きました。シューベルトの歌曲というとピアノ伴奏が一般的であり、オーケストラ版は新鮮に感じられました。あまりに有名な「アヴェ・マリア」は別にして、「糸を紡ぐグレートヒェン」の美しさに心が癒される思いでした。次にメゾ・ソプラノの竹本が登場し、1曲歌いました。魔王ということを意識してか、ドレスの上に黒い衣裳を羽織って、演技しながら迫力ある歌声を聴かせてくれて、存在感たっぷりでした。澤畑、竹本のお二人ともすばらしい歌声であり、金の指揮する東響の演奏もすばらしく、わずか3曲ではありましたが、満足感を感じました。前記したようにオケのひな壇の作りがいつもと違い、カーテンコールの出入りのとき、壇を上がり下がりするので大変そうでした。

 休憩後、いよいよ「復活」です。合唱団が着席した後、楽員が入場しました。さすがにステージいっぱいの大編成は壮観です。東響のメンバー総出演で、ステージ縁のぎりぎりまで並んでいます。金が登場して演奏開始です。出だしの迫力ある低弦の響きを聴いて、名演の予感を感じました。金と東響が一体となって、一糸乱れぬ演奏です。ダイナミックなオーケストラの響きがホールを埋めました。要所ではオーボエやホルンは楽器を立てて演奏し、ダイナミックな効果を出していました。こういう事は生の演奏会でしか味わえません。
 第1楽章終了後、マーラーの指示通りに長い休みを入れて、その間金は椅子に座っていました。静まりかえったホールに咳払いの音だけが響きました。随分長く感じましたが、実際はそれほどでもなかったかもしれません。おもむろに金が立ち上がって、第2楽章に入りました。流れるような歌い方は私好みです。文句の付けようもありません。第3楽章も流麗かつダイナミック。弱奏部での金管の柔らかな音色がきれいでした。終盤の一番賑やかな場面で竹本が静かに入場し、オケの中の右寄り、ヴィオラの後方に着席しました。そして第4楽章。竹本の歌い出しの音程が若干危なげでしたが、その後は持ち直しました。声が朗々とホールに響き渡り、心にしみ入りました。第5楽章に入り竹本は一旦退場しました。演奏は大音量にかかわらず濁りは全くなく、音響的には満点です。キビキビした金の指揮ぶり、それに応える東響の見事さ。ステージ外のバンダの扱いもお見事です。ドアの開け加減も計算されているようです。後半の賑やかな場面で澤畑と竹本が静かに入場しました。バンダの楽員も入場。おなじみのハミルさんやマルティさんらがいないと思っていたら、バンダをやっていたんですね。そして、いよいよ合唱が加わります。最初は合唱団は座っての演奏です。合唱に澤畑の歌声が重なり、さらに竹本も加わって演奏は進みました。合唱団が立ち上がって「生きるために死ぬ」と高らかに歌い上げてクライマックスへ。オルガンが加わって圧倒的な音の洪水の中で終演となりました。
 ただでさえ聴き映えのするこの曲ですが、これだけの演奏を聴かされたのでは盛り上がらないわけがありません。ブラボーの声がこだましています。オケをここまで鳴らしきった金の力量に感服しました。独唱の2人も十分すぎるほどの名演と思います。にいがた東響コーラスも頑張りました。前回の「復活」より良かったと思います。

 今日の主役はやはり金聖響でしょう。予想はしていましたが、渾身の名演だったと思います。これまで聴いた東響の「復活」の不満を一蹴してくれた名演奏だったと思います。奇をてらうところのない直球勝負の演奏です。変化球の飯森さんとはかなり違います。ごく一部でアレッと思う点もないではありませんでしたが、東響の演奏も高水準であり、どのパートもお見事でした。対向配置も演奏効果を上げていたように思います。ひな壇の作り方から始まって、楽器の配置、独唱者の位置など、すべてが金によって計算されていたもの思われます。なお、2006年新校訂版とのことですが、どこが違うのか、素人の私には気付かれませんでした。この校訂はあの「復活オタク」の実業家、キャプランによるものとのことです。この文章は、そのキャプランが金に物をいわせてウィーンフィルを振ったという噂のCDを聴きながら書いています。CDそのものはなかなかの名演と思いますが、生で聴いた今日の演奏はそれ以上の感動を与えてくれました。

 「復活」のすばらしさはいうまでもありませんが、前半のシューベルトも良かったです。金聖響の音楽性の豊かさを感じさせました。内容の濃い演奏会であり、満足度の高い演奏会でした。帰り道、雨がポツリポツリ。恵の雨になれば良かったのですが、ほんのお湿り程度でした。いい音楽を聴いた後は気分も最高です。でも暑すぎるなあ・・。

(客席:2階C5-**、S席:定期会員、5000円)