スタヴァンゲルと聞いても、どこにある町やらとんと見当も付きません。したがってスタヴァンゲル交響楽団とう名も知りません。ノルウェーのオーケストラで知っているのはオスロ・フィルくらいしかありません。
ということで、何の予備知識もないのですが、指揮者のスザンナ・マルッキだけは、2001年5月の東響新潟定期で来演しているので知っています。フィンランド出身の女性指揮者であすが、かなり良かったような記憶があり、指揮者だけは期待できそうに思えましたし、グリーグの「ペールギュント」をノルウェーのオケが演奏するというのも楽しみでした。誰もが知っている「ペールギュント」ですが、新潟で実際に演奏される機会はなく、私は初めてです。
さすがに11月になると肌寒くなりました。「りゅーとぴあ」の空調の排気ガスが白い煙となって吹き上がっていました。ロビーにはノルウェー国旗が飾られ、ノルウェーを紹介するパネル展示もされていました。
ホールに入るとステージ上のP席前に飾りが付けられ、特別な演奏会というような雰囲気が漂っていました。外国人の姿も目立ち、北欧風の超美人もいてドッキリ。パンフレットを見ると、今年は日本とノルウェーの修好100周年なんだそうです。それを記念しての来日公演らしいですが、でも、何故スタヴァンゲル響なのかはわかりません。
今回の日本公演は東京(2公演)、新潟、大阪だけで、全部で4公演しかありません。どうして新潟が紛れ込んだのでしょうか。初日の東京公演(サントリーホール)では長々と記念イヴェントがあり、ノルウェーで一番有名な日本人である荻原健二氏や皇室関係者も来られていたと知人から聞きました。新潟にも駐日大使が来ていたらしいです。
さて、ホールは7分ほどの入り。ちょっと空席が目立ちました。拍手の中楽員登場。女性団員は美人揃い。マルッキが登場して1曲目はニールセン。デンマークの作曲ですのでお隣さんの曲です。抒情的だったり賑やかだったり、飽きさせない曲で、演奏の質は定かでないですが、それなりに楽しめあした。マルッキのダイナミックな指揮ぶりも見事。
2曲目はシベリウス。まだ若そうなクーシストとの共演。クーシストはフィンランド人でシベリウスヴァイオリンコンクールに優勝した世界屈指のヴァイオリニストと紹介されていましたが、本当かいなと疑わせるような演奏。高音部の音程は定まらず、ヒヤヒヤと危なっかしかったです。崩しに崩した演奏で、ジャズヴァイオリンでも聴くような感じでした。聴きようによっては馬鹿にしたような不真面目な演奏にすら感じました。
この曲はつい先日の東響新潟定期で聴いたばかりですが、全く趣を異にする演奏でした。正統的な演奏とはほど遠く、本当にクラシックのヴァイオリニストなのかと疑問に思ってしまいました。オケの演奏も東響と比べてもたいしたことないように思われました。
と書くと、つまらない演奏のように思われますが、芸術としてでなく娯楽としては楽しめる演奏でした。眉をひそめる人も多いと思われますが、へそ曲がりな私は先日の東響定期よりは楽しめました。
アンコールは何とコントラバスとの競演。これは紛れもないジャズでした。この奏者はこういうジャンルで活躍すべきだと感じました。アンコール2曲目のバッハで正統的なところもみせつけようというもくろみなのかもしれませんが、だまされません。バッハもたいしたことはありませんでした。
休憩の後、後半最初はトヴェイト。もちろん初めて聴く作曲家です。この「水の精」というのはノルウェーの民話を元にした曲だそうです。耳に心地良い、いかにも北欧風な曲です。演奏の善し悪しは別にして楽しむことができました。
そして最後は「ペールギュント」。第1組曲、第2組曲の全8曲から指揮者の意向とのことで6曲だけ演奏されました。有名な「オーゼの死」と「ソルヴェーグの歌」をわざわざ削ったのは何故でしょうか。「山の魔王の洞窟にて」を最後に持ってきて賑やかに盛り上げようという魂胆なのでしょうか。どうせなら全曲やってほしかったです。演奏はイマイチに感じましたが、「山の魔王の洞窟にて」だけは頑張って盛り上げてくれました。これだけは良かったです。
アンコールはやはりグリーグ。1曲目、2曲目は静かな曲で、演奏もたいしたことなく、アンコールで盛り上げるという感じじゃなかったですが、最後は再び「山の魔王の洞窟にて」で盛り上げて終わりました。まんまと仕掛けに乗って拍手してしまいました。
終演は9時半近くで、サービス満点なコンサートではありました。オケの質としては東響並みというよりそれ以下かもしれません。でもまあ、東響定期並みの料金なら不満はないかな。私としては、ニールセンとかトヴェイトとか、日頃聴けない曲を聴けたと言うことで満足した演奏会でした。
(客席:2階C4-19、S席6300円:会員割引) |