Duo KaKao リサイタル
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2024年12月8日(日)14:00 新潟市民芸術文化会館 スタジオA
Duo Kakao  
 ピアノ:坂井加納、クラリネット:林佳保里
共演(チェロ):西谷牧人
 
レーガー:ロマンス ト長調
サン=サーンス:クラリネット・ソナタ 変ホ長調 Op.167
シューマン:幻想小曲集 Op.73

(休憩15分)

ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲 第4番 変ロ長調「街の歌」Op.11
ブラームス:クラリネット三重奏曲 イ短調 Op.114

(アンコール)
オッフェンバック:ホフマンの舟歌



 
 小林浩子さんとともに、りゅーとぴあ音楽アウトリーチ事業第5期登録アーティストとして2年間活動してこられた Duo Kakao のお二人の終了記念のリサイタルです。昨日の小林さんのリサイタルに引き続いて聴かせていただくことにしました。
 Duo Kakao と言われても分からない人も多いかもしれませんが、ピアノの坂井加納さん、クラリネットの林佳保里によるユニットです。二人とも多彩な音楽活動をされており、この二人の演奏を聴けるというのは貴重な機会です。
 
 ピアノの坂井さんは、新潟に越して来られて間もない頃の2010年8月のコンサートで初めて演奏を聴き、素晴らしい演奏に圧倒されたことをよく覚えています。その後は、2017年5月のクラシックストリートをはじめ、様々な場面で演奏を聴く機会がありました。
 一方、クラリネットの林さんは、2013年9月のリサイタルで初めて演奏を聴かせていただき、2015年11月の伊奈るり子さんとのリサイタルなど、以後いろんな場面で演奏に接する機会がありました。
 今回のリサイタルには、ゲストとしてチェロの西谷牧人さんを迎えて、ベートーヴェンのピアノ三重奏曲とブラームスのクラリネット三重奏曲が演奏されます。
 西谷さんは東京交響楽団の首席奏者として長らく活躍されていましたので、新潟でもすっかりお馴染みです。弦楽ユニットの「清水西谷」としての演奏会も開催していますし、「石田組」のメンバーとしても度々来演しておられます。ピアノ、クラリネットとともに、どのような演奏を聴かせてくれるのか楽しみにしたいと思います。

 と、楽しみなリサイタルでしたが、今日は新潟県民会館で「新潟中央高等学校音楽科第27回定期演奏会」、りゅーとぴあ・コンサートホールで「新潟ウインドオーケストラ第74回定期演奏会」、北区文化会館で「北区フィルハーモニー管弦楽団第13回ファミリーコンサート」と、魅力あるコンサートが同時に開催され、悩ましい事態になりました。どうしてこうも重なるんだろうと嘆きましたが、仕方ないですね。

 新潟県内は、昨日から雨が雪に変わり、山間部を中心に降雪が続いています。海岸部の新潟市街でも雪が降り、朝起きましたら、屋根にうっすらと雪が積もり、車のフロントガラスは雪で覆われていました。この時期ですので仕方ないですが、寒冷馴化が進んでいない身体には、寒さが厳しく感じられます。

 こんな日曜日ですが、昨日のコンサートの記事を書き上げてアップし、ここまでの記事を書いたところで昼食をとり、車のフロントガラスに積もった雪を除けて家を出ました。

 白山公園駐車場に車をとめて、りゅーとぴあに入りますと、コンサートホールでは、新潟ウインドオーケストラの定期演奏会の開場が静かに行われていました。
 東ロビーで時間調整し、開場時間とともに列に並んで入場し、中央2列目に席を取りました。客席は昨日と同じ配列で、びっしり並べられていました。ピアノは昨日と同じスタインウェイでした。開演時間が近付くに連れて、席は次第に埋まり、昨日同様の大盛況となりました。

 開演時間となり、紺色のドレスの林さん、薄紫のドレスの坂井さんが登場して、1曲目は、レーガーのロマンスです。柔らかなクラリネットとソフトなピアノが優しく響き、短い曲でしたが、挨拶代わりにちょうど良かったです。

 ここで、坂井さんによるMCがありましたが、小学校のアウトリーチのときの子供向けの乗りでの挨拶で、びっくりさせました。2年間に渡って小学校を巡り、最後はりゅーとぴあ近くの白山小学校だったことなど、楽しく話して下さいました。

 一旦退場して、二人が再登場し、2曲目は、サン=サーンスのクラリネット・ソナタです。第1楽章は、ゆったりと、柔らかなメロディが、抑えたピアノとともに流れ出ました。悲しげに泣き叫び、感情を吐露し、再び穏やかさの中に終わりました。
 第2楽章は、明るく軽やかに始まり、春のような明るさの中に蝶が舞い踊りました。第3楽章は、ピアノの重低音とともに、クラリネットの低音が響き、重々しく始まりました。悲痛な悲しみの中にピアノが激しく咆哮し、クラリネットが悲しげに歌いました。切々とした嘆きに、聴く方も悲しくなり、涙にむせびました。
 第4楽章は、明るさを取り戻して、足早に駆け回りました。激しく感情を高ぶらせ、小休止して心を落ち着かせ、第1楽章冒頭のメロディが優しく回帰され、明るさと穏やかさの中に曲を終えました。
 以前聴いたことがあったかは定かではありませんが、耳なじみの良いメロディが美しく響き、二人の素晴らしい演奏に心を奪われ、曲の良さを楽しむことができました。

 大きな拍手が贈られて二人が退場し、ピアノが右へ少し移動され、クラリネットとチェロ用の椅子と譜面台が設置されました。クラリネットは着席しての演奏です。

 坂井さん、林さんとともに西谷さんが登場し、左側に林さん、右側に西谷さんが着席しました。3曲目はベートーヴェンのピアノ三重奏曲第4番「街の歌」です。ヴァイオリン、チェロ、ピアノでの三重奏では聴いたことがありましたが、クラリネットとの三重奏では初めてです。
 第1楽章は、クラリネットと渋さを感じさせるチェロ、そして軽やかなピアノが、春の喜びを感じさせるかのように、躍動感ある演奏で、明るく楽しませてくれました。
 第2楽章は、ゆったりとしたチェロとピアノに始まり、クラリネットが加わって、穏やかなメロディが、傷んだ心を優しく癒しました。中間部では悲しげな表情を見せるも、穏やかに、安らかに、静かに楽章を閉じました。
 第3楽章は、軽やかなピアノとチェロにクラリネットが加わり、明るく野を駆け回りました。緩急の後、一瞬の間を置いて、悲しげな陰鬱な空気に満たされるも、再び明るく歌い跳ね回りました。曲調が一転して仕切り直しをし、明るく歌い上げ、間を置いて、明るくスキップして街を駆け抜け、ピアノの連打からフィナーレへと向かい、チェロのピチカートとともに曲を終えました。
 3人の息もぴったりで、躍動感に溢れる音楽に大きな感動をいただき、大きな拍手が贈られて、渾身の演奏を讃えました。

 休憩時間に最初の位置にピアノが戻され、クラリネットは再び立っての演奏になりました。二人が登場し、後半の最初は、シューマンの幻想小曲集です。
 第1曲は、悲しげにゆったりと歌い、第2曲は、明るさを取り戻して、楽しげに歌うも、憂いも感じさせました。第3曲は、少し気持ちを高ぶらせて、感情の揺れ動きとともに、熱く心の思いを奏でました。
 クラリネットの定番曲のようで、以前の林さんのリサイタルでも演奏されていましたが、坂井さんの輝きのあるピアノとともに、楽しく音楽に浸ることができました。

 再びピアノが右へ少し移動され、クラリネットとチェロ用の椅子と譜面台が設置されました。3人が登場して、最後の曲は、ブラームスのクラリネット三重奏曲です。
 第1楽章は、ゆったりとしたチェロで始まり、クラリネットが加わって、激しい感情の高ぶりを感じさせました。緩急を繰り返して、重々しく、切々と嘆くような音楽に、胸が締め付けられました。
 第2楽章は、明るくゆったりと、穏やかに始まりました。森の木陰に爽やかな風が吹くかのようで、チェロの朗々とした響きの美しさに酔いしれました。ピチカートとともに、少し陰りを感じさせるも、穏やかさの中に、ゆったりと楽章を終えました。
 クラリネットを掃除して調整し、第3楽章は、明るく伸びやかに歌い、ワルツを踊りました。ゆったりとそよ風のようにチェロが歌い、穏やかさの中に終わりました。
 第4楽章は、チェロとピアノが激しく歌いだし、クラリネットが加わりました。ゆるやかに、切なげにチェロが歌い、大きな高ぶりを見せました。緩急を繰り返して熱く燃え上がり、感動のフィナーレを迎えました。
 3人の渾身の演奏に会場は熱気に包まれて、割れるような大きな拍手が沸き起こり、私も力の限りに拍手して、3人の演奏を讃えました。

 林さんの挨拶があり、アウトリーチ活動の思いと今後の抱負、そして西谷さんへの感謝の言葉が述べられて、アンコールに3人でホフマンの舟歌が演奏されました。
 ピアノに載せて、チェロがゆったりと歌い、クラリネットが加わりました。波間に漂う舟に揺られて、心は癒され、穏やかな気分の中に、リサイタルは終演となりました。

 子供たちに音楽の素晴らしさを伝えるアウトリーチ活動で培われた表現力と、音楽への真摯な思いが伝わってくるような、慈愛に満ちた音楽で楽しませてくれました。
 西谷さんのサポートを得ての三重奏曲を前半後半に加えることで、プログラムに華が添えられて、魅力あるリサイタルに仕上がったものと思います。お二人の、これからのさらなる発展と祈念して、スタジオAを後にしました。

 コンサートホールでの演奏会は終わっていて、ロビーには静かな空気が流れていました。外に出ますと、天候は落ちついていて、穏やかな気分で駐車場へと向かいました。
 帰り道には雨が降り出しましたが、良い音楽を聴いた満足感と、アルビレックスのJ1残留をネットで確認した喜びとで、明るい気分で車を進めました。
 

(客席:正面2列目、\4000)