相変わらずの猛暑続き。外へ出るのもはばかられるほどですが、せっかく今日は休みが取れたので、コンサートはないかと捜したら、このコンサートがありました。
最近新潟に越してこられ、活動を始められた坂井加納(かな)さんと、東京都立芸術高校音楽科の同級生の磯田朋子さんのピアノ連弾のコンサートです。地元の方ではないので、予備知識もなく、お名前を聞くのも初めてでした。コンサートは、東京を中心に手作りのコンサートを企画している音楽ネットワーク「えん」が主催するものです。今回が新潟での第1回のコンサートとなりますが、通算では342回とのことです。
今日は新潟まつりの真っ最中のはずですが、白山神社も白山公園も騒がしくなく、いつもの静けさです。県民会館の情報ラウンジで音楽雑誌を読み、頃合いを見てりゅーとぴあに向かいました。県民会館は子供向けの催しがあって大にぎわいでしたが、りゅーとぴあでは大きな催しもなくてひっそりしていました。
会場はスタジオA。当日券を買って入場し、最前列に席を取りました。無理すれば100席以上入る場所ですが、椅子は50〜60席と少なく、まさにサロンコンサートの雰囲気です。ピアノはヤマハ。
坂井さん、磯田さんが交互に曲目解説をしながら演奏が進められました。前半・後半それぞれにソロでの演奏も交えて、単独での実力も披露してくれました。お二人とも演奏はすばらしく、なかなかの実力者のようです。その二人が連弾でダイナミックにピアノを鳴らして、迫力満点でした。体型体格もそっくりな二人で、連弾するにはぴったりに感じました。
最初のシューマンは初めて聴きましたが、なかなかチャーミングな曲ですね。3曲終わった後にトークが入り、曲の解説があってわかりやすかったですが、続けて演奏しても良かったかも。
続いて坂井さんのソロでショパンが演奏されました。解説を聞いて初めてわかったのですが、なかなか恐ろしい題材をモチーフにした曲なんですね。演奏は容姿からは想像できないほどに力強く、なかなかの実力者であることが伝わってきました。
前半最後は、連弾の定番・ハンガリー舞曲。たった2曲だけというのがもったいない演奏で、もっと聴いていたかったです。
休憩後は磯田さんのソロでラヴェル。柔らかな音色で良かったです。二人のソロの演奏は曲が違うので比較できませんが、甲乙つけがたく感じました。
そしてメインのペトルーシュカは圧巻でした。ソロの「ペトルーシュカからの3楽章」はよく聴きますが、連弾版は初めてです。磯田さんが担当する低音部は重厚に良く響き、きらめくような坂井さんの高音部との対比がすばらしく、オーケストラを聴くような迫力でした。4本の手、40本の指から生まれる音楽は、オーケストラ版に劣らぬ感動を感じました。手は複雑に交差し、磯田さんが最高音を弾く場面もありました。息の良く合った二人は一体化し、4本の手を持つ人間が弾いているかのようでした。大ホールでなく、至近距離で聴く連弾は、音量十分であり、聴き応えありました。物語の説明を交えながらの演奏は、ストーリーがわかって良かったですが、続けて演奏した方が良かったようにも感じました。
アンコールにピアソラが演奏されて終演となりましたが、ロマン派から近・現代の作品へとよく考えられたプログラムだと感心しました。解説も必要十分で、好感が持てました。また、二人ともチャーミングということも特筆しておくべきでしょう。
音楽好きの市民サークルが企画するサロンコンサートということで、アットホームな雰囲気でした。主催者から会場スタッフの紹介があったのも良い雰囲気を作っていたと思います。調律師や譜めくり(坂井さんのお母様)、果ては坂井さんのお父様やご主人まで紹介されていました。スタッフは音楽関係者が務め、オペラデュオFeliceのお二人も赤ちゃん連れで参加されていました。新潟では知名度がなく、宣伝もされておらず、いかにも手作りという簡素なチラシがあるだけでしたが、客は予想外の入りのようで、プログラムが足りなくなって、増刷していました。
すばらしいピアニストが新潟に来られて、これからの益々の活躍が期待されます。演奏の良さもさることながら、手作りの、ほのぼのとして、心が温かくなるようなコンサートであり、幸せ気分で家路につきました。
(客席:全席自由:2500円) |