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高田三徳

高田三徳(尾道の画家)

高田三徳(たかだ みつのり)

第5回瀬戸内の作家展 高田三徳の世界

それぞれの地方には、無名ではあるが、すぐれた芸術家がいることと思います。

尾道にも数人はいて、そのうちの一人が高田三徳さんです。

なかた美術館で開催された個展をみて、その感を一層深くしました。広く知っていただくため、ご紹介したいと思います。

なかた美術館学芸員の国近有佑子氏による評論および読売新聞社記者の布施勇如氏による記事が、高田さんの作品あるいは人物像を余すところなく伝えています。全文を引用することで、ご紹介に変えたいと思います。

  • 絵肌の豊かな表情(国近有佑子)
  • はちゃめちゃで「ようわからん」(布施勇如)
  • 略歴

(2011年12月 金森国臣)


国近有佑子(なかた美術館学芸員)による評論

国近有佑子(なかた美術館学芸員)による評論

絵肌の豊かな表情
 なかた美術館 国近有佑子

高田三徳は、1950年尾道生まれ。40年近く、尾道にアトリエを構え創作活動を続けている。独特のキャラクターで知られ、多くの人から愛されているが、その彼の作品を、初めて一堂に集めた展覧会として、現在当館で「第5回瀬戸内の作家展 高田三徳の世界」を開催中。

高田の特徴は、キャンバスや絵の具を、現実を再現する道具ではなく、美しさを秘めた素材としてとらえている点だ。自分なりの表現を追求し、単なる油彩画を描くだけでなく、あらゆる素材と組み合わせ、創作に用いてきた。

「16区から」は、1996年70回国展にて国画賞を受賞した代表作。具体的なものは描かれておらず、その全面に見えるのは、布や紙を貼り重ねた絵肌の豊かな表情。重ね、剥がし、また重ねてと繰り返された感覚的な行為の痕跡は、一見大胆で奔放なようだが、繊細な感覚で調和して、見るものを惹きつける。

タイトルはパリ16区のこと。高田は、その風景に感銘を受は、「16区」は象徴的な言葉として作品タイトルに度々使用されている。年月を重ねた家並みや、風雨にさらされ、修繕を繰り返した壁の表情など、人間の意図を越えて、時間だけが生み出すことができる風景への憧れが、意欲をかきたてたのだろう。高田はそれをそのまま描くだけにとどまらず、佇まいや印象を手かがりに、線や色、素材を駆使して、独自の表現を生み出している。

そして、連作「風景から」は、今年発表された最新作だ。一辺が2mを超える大作で、色とりどりのベールが重なっているような、透明感のある色づかいが印象的だ。不思議な奥行きがあり、作品の前に立つと、鮮やかな色彩に包み込まれるように感じる。

彼は作品を発表した後に筆を加えることも多く、この作品も今後、加筆するつもりだという。今は、さわやかさ、新鮮さが際立つが、おそらくより穏やかで、味わい深い作品になっていくのだろう。作品が納得のいく姿になるまで、行きつ戻りつ、時に年単位で時間をかけることを厭わないのも、高田の特徴のひとつ。

こうした大作のほか、初期の油彩画や、風景のスケッチ、パステル画、立体作品など、計57点を展示している。その手法は様々だが、高田らしい繊細さや色彩が通底しており、会場を一巡すると、多彩な作品が一体となって、画家の営みがひとつの世界を作り上げているよう見えるだろう。この機会に「さんとくさん」の世界をぜひご高覧いただきたい。

【同展覧会は12月25日まで、なかた美術館(潮見町)で開催している】


向布施勇如(読売新聞記者)による記事

尾道“伝説の画家”サントクさん

はちゃめちゃで「ようわからん」

尾道“伝説の画家”サントクさん

知る人ぞ知る尾道の画家、サントクさん(60)には、数々の逸話がある。

向島へ戻る渡船の最終便を逃し、泳いで渡った。妻に愛想を尽かされ、逃げられた。娘2人はべっぴんらしい……。

「造船のバイトから帰ったら、家財道具が持ち出されてた。娘たちはまだ、幼稚園だったかな。一人になって、知らない間に離婚届を出されてて」。笑うと、眼鏡の奥で大きな眼が消え入ってしまう。

路地裏の古めかしい蔵の一室。アトリエとして、知人が無償で貸してくれている。

形が見えたり隠れたりする中間的な色調。抽象でもあり具象でもある曖昧さ。それがサントクさんの世界だと、ある画家は評する。

「いや、自分は、揺れてるいうんか、ぶれてるいうんか、画風が……」。腕組みし、黙り込む。「まあ、ようわからんですよ」。照れるたび、たばこに火を付ける。

県立尾道北高を出て上京した。学園紛争の真っただ中。予備校への道すがら、催涙ガスが目に染みた。

受験に3度失敗。10年ほどして年子の姉妹が生まれた。夢半ばで帰郷した。「それからずっと、バイト人生」。右耳が聞こえにくいのは、舗装で使った電動工具のごう音のせいらしい。

尾道市潮見町のなかた美術館では、クリスマスまで「瀬戸内の作家展 高田三徳(みつのり)の世界」が続く。本名で呼ばれることはまずないが、美術団体・国画会の公募展で「国画賞」と新人賞に輝いたコラージュ、油彩など、サントクさん史上最多の57点を集めた、紛れもなくサントクさんの個展だ。

今月3日の「アーティスト・トーク」。主役は、薄汚れたスニーカーで現れた。「口下手」なうえに、二日酔い。前の晩、仲間2人と出くわし、コンビニで買った缶ビールを海岸で飲んだ後、またも酔いつぶれるまでハシゴした。

トークが途切れ、しどろもどろになって頭をかく。約60人のファンが、温かく笑う。

「絵って、好きじゃなかったんだけど」。やぶから棒に語り出し、会場の空気が一変する。「長年やってるから、何とかものにしないといけないと思ってるんですけど」。そう、サントクさんは、ただの酒飲みではない。

絵はめったに売れない。だけども10月下旬、仲間たちとニューヨークに飛んだ。抽象表現主義の代表的作家で「ぶち好きじゃった」デ・クーニングの回顧展が、たまたま開催中だった。

帰りに、東京で下の娘の家に泊まった。「個展、クリスマスに見に行くね」と約束してくれた。確か29か30歳で、大学生。高校生の頃、約10年の断絶を超えて突然、尾道まで訪ねてきた。以来、2人の娘と交流を保っている。

「恨まれてないのは確か、かなあ。べっぴんじゃないですけど」。また1本、紫煙をくゆらせた。(布施勇如)

(2011年11月11日 読売新聞)

尾道“伝説の画家”サントクさん(記事)


略歴

1950年 広島県尾道市生まれ。国画会展にて国画賞、新人賞(2回)受賞。現代日本絵画展にて(財)渡辺翁記念文化協会賞受賞。広島県美術展大賞受賞。また、青木繁記念大賞展、別府現代絵画展、上野の森美術館大賞展にて入選。小林和作美術振興奨励賞。現在、国画会会員。


ツブヤキ

絵師を名乗る奇妙な風体の人物や単なる美術教諭にもかからず画家を称する不埒な輩も含め、なんやかやと尾道には「アーティスト」がごまんといる。

大多数はジャンクに属するもので、素人が観ても目が腐るものばかりで往生させられるのだが、たまに高田さんの作品を鑑賞して、その毒を洗い流している。

尾道における高田さんのポジションは、残念ながら高くはないが、しかし彼が存在していることによって、もろもろの有象無象の跳梁跋扈が抑えられていることは案外に気付かれていない。

あれこれの理屈が先に立つアーティストに対しては、「高田さんを超える作品を制作したらどうか」との一言で撃沈できるし、実際にグーの音も出ない。

誰も公言はしないが、尾道で画家を自負する人達は、彼の動向を気にかけながら制作していることは確かで、そういった意味における存在感は大きい。

是非ブレークして全国区に踊り出して欲しいし、そうなることを切に願っている。


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