村上選先生が、日本橋三越本店で7回目となる個展を開きましたが、実はこれは大変なことであって、もっとPRしてもよいかと思い、少し書くことにしました。
私は東京に住んでいる期間が長かったのですが、一時期は通勤に都営浅草線を利用していました。
浅草線は、西馬込と押上の間を走っている地下鉄ですが、途中に東銀座駅があり、ここで下車して数分も歩けば銀座の中心部に出ます。
銀座には画廊が数多くあり、絵画に詳しい知人の勧めもあって、画廊を訪ね歩くようになりました。宝町駅まで一駅歩けば軽い運動にもなります。そのうちに、現代美術を中心に無名作家の小品を購入するようにもなりました。
画廊のオーナーや作家と親しくなってくると、この「業界」も魑魅魍魎の世界であることがわかってきます。例えば、その最たるものとしては、ある新聞の学芸欄の担当記者は、小品とはいえ、地方のさえない美術館よりも充実したコレクションを持っているという話などです。
理由は簡単で、この新聞で取り上げられると個展の来場者が増え、結果的に売り上げが伸びるし、高評価の記事が出れば世の中に認められる糸口にもなります。あれこれのやり取りがあるのは当然のことだろうと思います。
そうした話のなかで銀座三越店での個展が話題になったことがあります。事情も知らず開催すればよいのではないかと提案すると、間髪を入れず無理との答えが返ってきました。
とにかくハードルが高いのだそうです。一定の売り上げが見込めることは無論のこと、ある程度の画格を備えていることが必須条件とのことでした。となると、現代美術の作家では、まず無理ということになります。
村上先生は、銀座店ではなく日本橋本店で個展を開催されているわけですが、違いは本社と支社の関係であるといってよいかと思います。この違いをどう表現すればよいかはわかりませんが、例えば、皇族が買い物に訪れるのは、銀座店ではなく日本橋本店です。とにかく一段とハードルが高くなります。
地方の洋画家がここで個展を開くことは実に稀で、これを三年に一度、7回連続で開催しているとなると、相当な話題になってもおかしくないのですが、小さくサラッと書いてあるだけです。
おそらくは広島の福屋での個展と同じ扱いにしているからだろうと思いますが、私は逆にこのことに驚き、ショックも受けています。
この誤った認識を変えるためにも、もっとPRしてよいかと思い、そのきっかけになればと考え、少し書いてみることにしました。
(2014年12月 随時追加訂正します。)
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