新潟A・フィルハーモニックは、ソロ・コンサートマスターの渡辺美穂さんを中心に、新潟に縁とゆかりがあるプロの演奏家が集結して編成されたオーケストラです。
2022年6月に第1回定期演奏会を開催し、弦楽アンサンブルの高水準な演奏に感動しました。2023年6月には第2回定期演奏会を開催し、さらにブラッシュアップした演奏を聴かせてくれて魅了されました。
2024年6月の第3回定期演奏会からは、これまでの弦楽アンサンブルに加えて、管・打楽器のメンバーも加わって、ンフォニック・オーケストラとしての活動を開始しました。
そして今回は第4回定期演奏会となりました。第1回から聴かせていただいている私としましては、今回も聴かないわけにはいかず、チケット発売早々に購入して楽しみにしていました。
今週は昨日まで梅雨空が続いていましたが、今日は朝から晴れ渡り、梅雨明けしたかのような好天になりました。気温は猛暑というほどではなく、比較的過ごしやすい爽やかな土曜日となりました。
いつもの雑務を終えて、娘と会うと言って着飾って出かけた暴君を見送り、某所でゆっくりと昼食を摂って家を出ました。今日は長期戦になりますので、いつもの白山公園駐車場ではなく、西堀のコインパーキングに車をとめて、多くの人で賑わっていた白山神社を抜けてりゅーとぴあ入りしました。
中に入りますとロビーは混雑しており、着飾った子供たちがたくさん行き来していました。スタジオAでのピアノコンクールに参加している子供たちのようでしたが、健闘を祈りたいと思います。
開場まで少し時間がありましたが、ロビーは混雑していましたので、6階のラウンジでこの原稿を書きながら時間調整しました。ここは学生さんたちの勉強場所になっていて、ちょっと肩身が狭く感じられました。
開場時間になったところで2階ロビーに下り、早めに入場しました。一般は5000円ですが、高校生以下は1500円と格安であり、18歳以下は無料招待(同伴者半額)という枠もあり、混雑を予想しましたが、それなりの入りでした。こんな魅力的なコンサートなのに聴きに来ないなんて、新潟の音楽ファンは何してるんでしょうねえ。などとこの原稿を書いているうちに開演時間となりました。
開演時間となり、団員が入場する前にチェロ主席の海野さんが出てきて、挨拶に続いて1曲目のストラヴィンスキーの「15人の奏者のための8つのミニアチュア」についての解説がありました。珍しい曲なので、演奏前に解説することに急遽決まったそうです。
この曲は、ちょっと奇抜な8つの短い曲からなりますが、理解しようとせずに、美術館で現代絵画でも見るような気持ちで聴いてほしいとのことでした。また、各楽器は超絶技巧を駆使しており、このメンバーだからこそ演奏できる曲で、新潟初演だろうとのことでした。
拍手の中に団員が入場し、最後にコンマスの渡辺さんが登場して大きな拍手が贈られました。前方に弦が並び、左からヴァイオリン2人、ヴィオラ2人、チェロ2人で、後方に管楽器が並び、フルート2人、オーボエ2人、クラリネット2人、ファゴット2人、ホルン1人という編成で、合計で15人になります。
8曲が連続して演奏されましたが、最初は管楽器のみでの演奏で、ゆったりと、しっとりした音楽が流れ、演奏に引き込まれました。
その後弦が加わって、様々に曲調を変えながら、弦と管とが対話したり、せめぎ合ったりしながら演奏が進み、とらえどころのない中に曲が終わりました。
曲の良さは分かりませんが、海野さんが言うほどの難解な曲ではなく、むしろ聴きやすい曲に感じました。管楽器の各パートが見事なパフォーマンスを発揮し、美しい弦楽アンサンブルとともに、演奏の素晴らしさが伝わってきました。さすがに実力者揃いですね。
ステージが整えられて、通常のオケの配置に椅子が並べられました。団員が入場しましたが、左から第1ヴァイオリン6人、第2ヴァイオリン5人、ヴィオラ4人、チェロ4人、コントラバス2人という編成です。
長身の勝山大舗さんが登場して、2曲目はモーツァルトのクラリネット協奏曲です。勝山さんは、新潟との関係は良く分かりませんが、第84回日本音楽コンクールで1位となり、現在は東京都交響楽団、紀尾井ホール室内管弦楽団のクラリネット奏者として活躍しておられます。
この上なく美しい弦楽アンサンブルに始まり、管が加わって、出だしからうっとりする中に演奏が進みました。長い序奏の後にクラリネットが優しく、ふくよかな音色で歌い、モーツァルトの音楽世界へと引き込まれました。第1楽章の演奏が終わるとともに大きな拍手が沸き上がりました。
第2楽章は、クラリネットがゆったりと歌い、天国にいるかのような癒しをいただき、極上の音楽にうっとりと聴き入りましたが、第2楽章終了後にも大きな拍手が沸き上がりました。
第3楽章は、明るく快活に走りぬけ、美しいクラリネットとオケとが絡み合い、高めあって、爽やかな感動をもたらしてフィナーレを迎えました。
曲自身の素晴らしさに演奏の素晴らしさが加わって、大きな感動をもたらしてくれました。楽章間に大きな拍手が起こりましたので、日頃このようなコンサートに来ていない人が多かったものと思います。新たな聴衆を獲得できて良かったのではないでしょうか。これをきっかけにクラシック音楽のファンが増えてくれると良いですね。
勝山さんに大きな拍手が贈られて、カーテンコールの後に、ソリストアンコールが行われました。曲目は、コヴァーチの「ファリャへのオマージュ」で、超絶技巧に驚嘆し、心を揺さぶるような熱い演奏に圧倒されました。凄いとした言いようがなく、クラリネットの演奏でこれほどまでに感動させられたのは初めてかもしれません。勝山さんに脱帽です。
休憩後の後半最初は、ハイドンの交響曲第95番です。これまでの弦楽と管楽器のほかにティンパニが加わりました。
第1楽章は、ちょっと暗めの、はっとするような一撃で始まりました。弦楽のふくよかなサウンドは極上であり、小編成ながらも低音も豊かで、厚みのあるサウンドは聴き応え十分です。曲調は明るく変化し、爽やかさと力強さも感じさせて、切れの良い演奏は気持ち良く感じられました。指揮者なしでこれほどまでにまとまった演奏ができるなんて凄いですね。
第2楽章は、部分的に管が加わりましたが、弦楽が明るく穏やかに歌い、チェロのソロがいい味付けになっていました。
第3楽章は、ちょっと暗めにリズムを刻み、ティンパニが重々しさを演出していました。この楽章もチェロのソロが隠し味的にいいアクセントになっていました。
第4楽章は、流麗な弦楽アンサンブルに始まり、管も加わって明るく走って行きました。スピーディに駆け抜けるフーガも気持ちよく、躍動感とともにエネルギーを高めて、フナーレへと駆け抜けました。
美しいオーケストラサウンドとともに曲を楽しませていただき、胸の高鳴りを感じました。大きな拍手が贈られて、団員は一旦下がりました。
ステージ転換されて弦の配置が変更されました。弦楽四重奏の4人が中央に配置され、その周りに弦の各パートが並びました。ティンパニはありませんが、管にはトロンボーンが加わりました。
最後の曲は、ストラヴィンスキーの「プルチネッラ」です。中央に配置された弦楽四重奏を中心にして、生き生きと、明るく演奏が進みました。
第1曲は、明るく爽やかに、そして快活に耳馴染みの良いメロディを奏で、美しい弦楽と管楽器の絶妙な絡み合いとともにこの組曲の始まりを高らかに歌い上げました。
第2曲は、オーボエが悲しみとともに泣くようにしみじみと歌い、コンマスのソロが加わって、切なげな音楽が胸にしみました。コントラバスの弾く音がアクセントとなっていました。
第3曲は、突然明るくなって快活に音楽が流れ出て、春が来たかのような喜びを感じさせました、管楽器の素晴らしさと美しい弦楽アンサンブルにうっとりしました。
第4曲は、明るく爽やかに、リズムも心地良く走り抜けました。管とコンマスとの掛け合いも美しく、躍動感に気分も高ぶりました。
第5曲は、スピーディな弦に始まり、疾走感が気持ちよく、スピードを落とすことなく走り抜けました。管が歌い、コンマスが呼応して、躍動感の中に終わりました。
第6曲は、管楽器のみで演奏されましたが、各パートとも美しいメロディを雄弁に歌い、各パートの掛け合いも素晴らしく、各奏者の力量の素晴らしさをまざまざと見せ付けられました。
第7曲は、トランペットとトロンボーンが加わりました。トロンボーンとコントラバスの激しいリズムに始まり、その後も力強くリズムを刻み、コントラバスのソロやトロンボーンが活躍し、少しユーモラスな雰囲気の中に終わりました。
最後の第8曲は、管と弦楽四重奏とのゆったりとした美しいメロディが心地良く、徐々にリズムを刻みながらエネルギーを増して、軽快に駆け足してスピードアップし、大きな盛り上がりの中にフィナーレを迎えました。
心地良い興奮をもたらして、大きな拍手が贈られました。この曲の素晴らしさを改めて感じさせる見事な演奏でした。弦楽四重奏(+コントラバス)+弦楽アンサンブルという構成を知ることができたのは大きな収穫であり、実演ならではの味わいだったと思います。
初回の演奏会から感じていた実力者揃いの弦楽アンサンブルの素晴らしさは今さら言うまでもありませんが、今回は管楽器奏者の凄さにも圧倒されました。新潟との関係がどうなのかは置いておいて、このような実力者を良く集めたものですね。
大きな拍手に応えてのアンコールは、弦楽だけでバッハのヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ第4番の第1楽章が弦楽合奏で演奏されました。
しっとりと、ゆったりと、切々と奏でられるメロディが胸に沁みました。新潟のオケで、これほど美しい弦楽アンサンブルを聴けるとは驚きであり、美しい音楽に心は癒されました。
いずれの曲も、実に美しい演奏であり、国内のトップオケにも引けをとらない全国的にみても高水準の演奏であることは間違いありません。
全国で活躍している音楽家が新潟の地に集まり、地元で活躍している演奏家とともにオケを結成し、毎年1回ながらも演奏会を重ねていることは素晴らしく、誇らしく思えます。来年の6月の第5回演奏会が既に決まっており、これからも末永い活動を期待したいと思います。
できるならば、演奏会の回数を増やして、正真正銘のプロオケとして活動してくれたら素晴らしいことだと思います。この夢が私の存命中にかなえられたら、これ以上の幸せはありません。
今年のマイベスト10候補に挙げるべきの素晴らしい演奏会であり、大きな満足感とともにコンサートホールを後にし、次の予定の劇場へと急ぎました。
(客席:2階C5-11、¥5000) |