5台ピアノの世界
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2024年10月19日(土)14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ピアノ・ツィルクス
白石光隆、田村緑、中川賢一、デュエットウ かなえ&ゆかり
 
加藤昌則:Five Kings(ファイブ・キングス) ★2022年りゅーとぴあ委嘱作品

ホルスト(駒井一輝編):木星

ドビュッシー(加藤昌則編):月の光(5台ピアノver.)【初演】

加藤昌則編:ジョン・ウィリアムズ・メドレー【初演】

(休憩20分)

ムソルグスキー(駒井一輝編):組曲「展覧会の絵」

(アンコール)
木内佳苗(デュエットウ):信濃川悠々
 
 りゅーとぴあには、ピアノの王様と称されるフルコンサート・グランドピアノが5台(スタインウェイD274:2台、ベーゼンドルファーModel290インペリアル、ヤマハCFVS、カワイEX)保有されており、これらを総動員して、5人のピアニストによる演奏会が開催され、これが「5台ピアノの世界」です。
 ひとつのホールが、5台ものフルコンサート・グランドピアノを保有するのは全国的にも珍しく、りゅーとぴあならではの催しであり、このようなコンサートは貴重です。

 2019年5月12日に第1回が開催されましたが、これが最初で最後で、私の残された人生では、もう二度とこのような機会はないだろうと興奮しましたが、2022年10月22日に、3年半の時を経て、第2回が開催されました。このときはりゅーとぴあと同様に5台のピアノを保有する三重県文化会館でも同じ内容の演奏会が開催され、三重の方でも盛り上がったようです。

 これら過去2回の演奏会はチケット完売となり、満席のホールは大きな盛り上がりを見せましたが、さすがに3回目ともなりますと、希少価値は乏しくなったと言わざるを得ません。
 特に今年は、1月7日に、仲道郁代さん、横山幸雄さん、小川典子さんなどの錚々たるメンバーでの「5台ピアノの祭典」が開催されており、本年2度目の「5台ピアノ」ということで、注目度はどうしても下がってしまうのは否めません。

 そんな状況は別にしまして、出演メンバーの5人は、今年4月に、りゅーとぴあで4日間かけて5台ピアノのCD録音を行い、11月7日に発売されます。今回の演奏会は、そのCD発売記念と称されています。
 そのCD録音の中から、メイン曲目の「展覧会の絵」が、今回の演奏会の来場者限定の特典CDとしてプレゼントされます。
 また、開催に先立って、9月28日には「5台ピアノの秘密」と題しての中川賢一さんによる講演会も開催されました。
 なお、前回と同様に、今回も同じ出演者、同じプログラムで、11月23日に、三重県津市の三重県文化会館で「5台ピアノ ピアノ・ツィルクス」という演奏会が開催されます。

 このように話題にあふれたコンサートではありますが、今回は残念ながらチケットは完売にはならなかったようです。でも、貴重なコンサートには違いなく、演奏者の皆さんは何度も合宿を重ねて臨んだ演奏会ですので、大いに楽しませていただきたいと思います。

 今日の新潟市は、寒冷前線の通過に伴い、朝から厚い雲が空を覆い、雨がぱらつき始めました。与えられた雑務を終えて、昼食を摂り、ゆっくりとりゅーとぴあへと向かいました。
 駐車場に車をとめて、急ぎ足でりゅーとぴあ入りしました。次第に風は強くなり、りゅーとぴあのガラス壁に雨が打ち付け始めました。
 インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、開場とともに入場しました。入場時には、パンフレットの他に、「展覧会の絵」の特典CDをいただきました。
 ロビーでは出演者のCDや楽譜の販売のほか、11月7日に発売されるCD「5台ピアノの世界 ピアノ・ツィルクス」の先行販売も行われていました。

 早めに席に着いて原稿を書こうと思ったのですが、まだ開場早々でがらがらな客席にも関わらず、私のすぐ隣の席には、既に先客の老夫婦が座っておられ、密着するのもためらわれましたので、ロビーに戻って、椅子に座ってこの原稿を書きながら開演を待ちました。外を眺めますと、風雨は次第に強くなって来ていて、木々が大きく揺れていました。

 開演時間が迫ったところで席に着きましたが、今回は1階の中央付近でした。東響定期会員向けのセット券を購入したのですが、席は選べず、この席になりました。客席を眺めますと、安い席はかなり埋まっていましたが、全体的にかなりの空席があったのは残念でした。
 ステージには5台のフルコンサート・グランドピアノが、蓋をはずされて扇型に配置されていました。左から順に、スタインウェイD274、ヤマハCFVS、ベーゼンドルファーModel290インペリアル、カワイEX、スタインウェイD274です。

 開演時間となり、5人のピアニストが登場し、四方の客席に礼をしてピアノに着きました。左から白石光隆さん、デュエットウかなえさん、田村緑さん、デュエットウゆかりさん、中川賢一さんです。譜めくりは4人で、デュエットウゆかりさんだけ譜めくりなしでした。
 白石さんは柄物シャツに白ズボン、中川さんは黒シャツに黒ジャケット、デュエットウの二人はお揃いのシックなドレス、田村さんは青いドレスで、白石さんのラフな衣装が目立っていました。

 1曲目は、2022年10月の第2回で初演された加藤昌則さんの「Five kings」です。ピアノの王様である5台のフルコンサート・グランドピアノが力強く鳴り響き、壮大でゴージャスな音楽は、まさに王様の音楽です。挨拶代わりにふさわしい曲で、観客の心をつかみました。

 ここで中川さんがマイクを持ち、メンバー紹介が行われ、客席におられた作曲・編曲を担ってくれた加藤昌則さんを紹介し、大きな拍手が贈られました。
 田村さんによる曲目紹介があって、2曲目は、ホルストの「木星」です。第1回第2回にも演奏されていますが、ダイナミックに音量豊かに鳴り響くピアノに圧倒され、中間部のメロディはたっぷりと歌わせ、壮大に盛り上げて大きな興奮をもたらしました。

 デュエットウの二人を残して退場し、MCの間にピアノのフォーメーション替えのため、椅子の並べ替えが行われました。
 曲目紹介があって、他のメンバーが登場。今度の並びは、左からデュエットウかなえさん、中川さん、田村さん、白石さん、デュエットウゆかりさんで、中川さんと田村さんだけに譜めくりが付きました。
 3曲目は、ドビュッシーの「月の光」で、加藤昌則さん編曲の5台ピアノ版の初演になります。ピアノを複数台使用して音を増やすのではなく、あえて音を分解して各ピアノに割り振って演奏するという編曲で、演奏するピアノにスポットライトを当てるという演出もあって楽しませてくれました。透明感のある演奏で、しっとりと心に響いてくる音楽を楽しみました。

 白石さん以外が退場し、白石さんによる曲目紹介があり、この間にフォーメーション替えが行われて、最初の並びに戻りました。
 曲目紹介の後、他のメンバーが登場して、今度は全員に譜めくりが付きました。4曲目は、加藤昌則さん編曲による「ジョン・ウィリアムズ・メドレー」で、初演になります。
 壮大なスターウォーズのテーマに始まり、ETのテーマ、未知との遭遇の5音をはさんで、ハリーポッター、スターウォーズのレイアのテーマ、シンドラーのリスト、スターウォーズの帝国のマーチ、インディジョーンズのレイダースマーチと続き、最後を再びスターウォーズで壮大に盛り上げて終わりました。
 素晴らしい編曲による迫力と楽しさにあふれる音楽に、大きな感動をいただき、盛大な拍手が贈られて、ホールは興奮と感動に包まれました。

 休憩後の後半は、中川さんにより先日の「5台ピアノの秘密」でも解説された「展覧会の絵」について詳しい説明がありました。
 皆さん衣装換えして登場し、白石さんは黒いスーツ、デュエットウかなえさんは赤いドレス、田村さんはオレンジ色のドレス、デュエットウゆかりさんは白いブラウスに燕尾服様の黒い上下の王子様ルック、中川さんは赤いネクタイでした。
 「展覧会の絵」は、2019年5月の第1回にも演奏され、CD録音もされた曲ですが、これは圧倒されるばかりでした。
 10月6日の東京交響楽団第139回新潟定期演奏会で、ラヴェル編曲によるオーケストラ版を聴いたばかりですが、迫力では引けを取らず、オーケストラとは違ったピアノならではの面白さもあって、大いに楽しめる演奏でした。
 プロムナードをはさんで演奏される各曲の対比も鮮やかに、5台のピアノが互いに共鳴しあいながら、豪華絢爛な音楽絵巻を作り上げてくれました。きらびやかな高音に迫力いっぱいの重低音。
 白石さんと中川さんが交互に指示を出しながら繰り出される5台のピアノの圧倒的な音量と迫力は、この現場でしか味わえない感動です。ホールは興奮に包まれ、大きな拍手とブラボーが贈られて、素晴らしい演奏を讃えました。

 中川さんの挨拶があり、デュエットウかなえさんの曲紹介があり、かなえさん作曲による「信濃川悠々」が情感豊かに演奏され、上質なデザートのプレゼントで演奏会は終演となりました。

 終演後は、CDや楽譜の購入者へのサイン会が行われ、順番を待つ列を横目に、ホールを後にしました。風雨の切れ目に駐車場へと急ぎ、荒れた天候の中に家路に着きました。天気は大荒れでしたが、いい音楽を聴いたあとの心は晴ればれでした。
 

(客席:1階11-30、S席:バリューパック:\3300)