亀井聖矢 リサイタルツアー2024 新潟公演
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2024年7月26日(金) 19:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
ピアノ:亀井聖矢
 
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971
ショパン:ノクターン 作品27
   1.嬰ハ短調  2.変ニ長調
ショパン:ポロネーズ第5番 嬰へ短調 作品55
ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調 作品53「英雄」

(休憩20分)

ショパン:バラード第1番 ト短調 作品23
ショパン:バラード第2番 ヘ長調 作品38
プロコフィエフ:ピアノソナタ第7番 変ロ長調 作品83「戦争ソナタ」

(アンコール)
ショパン:マズルカ 作品17-2
リスト:ラ・カンパネラ

 
 今日は、日本の若手ピアニストの中でも絶大な人気を誇る亀井聖矢さんのリサイタルです。「亀井聖矢リサイタルツアー2024」と題された全国ツアーは、今日の新潟公演を皮切りに、9月1日の沖縄まで、14公演+追加公演1公演=計15公演が開催されます。
 プログラムはAとBと2種類用意され、公演地によって違いがありますが、ショパンのノクターンかマズルカか、バラードの1番・2番か3番・4番かという違いがあるほかは同様です。新潟公演はBプログラムとなっています。
 7月24日に、浜松で今日と同じ内容のプログラムのリサイタルを開催していますが、主催団体の違いからか、今回のツアーには組み込まれていません。

 昨日は、東京オペラシティで「題名のない音楽会」の収録があり、休む間もなく全国ツアーが始まり、今日の新潟公演となりました。そして、27日はサントリーホール、28日には京都コンサートホールで別のコンサートがあり、全国ツアーとしては8月3日の島根公演から再開されます。
 今回のツアーの前に、6月22日〜7月6日まで、ブダペスト交響楽団の日本ツアーのソリストとして12公演を終え、その後はフランスで演奏されていますので、その活躍ぶりには目を見張ります。日本とヨーロッパを行き来して、お忙しいようで何よりです。

 さて、亀井さんの新潟市でのリサイタルは、2021年12月2023年6月に引き続いて、今回は1年ぶり3回目となります。
 そのほか、昨年の大晦日の「りゅーとぴあジルベスターコンサート2023」で、東京交響楽団とラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を演奏し、アンコールで「ラ・カンパネラ」を演奏していますので、新潟市は7か月ぶりになります。今回はどのような演奏で楽しませてくれるのか期待したいと思います。

 チケット発売早々にネット購入したのですが、私が買ったネットサイトでは、発売開始直後に良さそうな席はすぐに完売となっていました。他のサイトを調べるのも面倒でしたので、2階の左サイドのDブロック最後方の席で決めてしまいました。人気の左側ですので良しとしましょう。
 とはいうものの、平日夜の開催であり、行けるかどうかわからず、実際に毎年何枚かのチケットは無駄にしていますので、心配しながら今日の日を迎えました。でも、お陰様で何とか行くことができました。

 安全運転の範囲内で、大急ぎで車を走らせ、りゆーとぴあ入りしました。館内に入りますと開場が進んでおり、私も急いで入場し、席に着きました。
 予想されたことではありますが、圧倒的に女性が多く、学生券も発売されていたこともあり、年齢層もいつものクラシックコンサートより若いようでした。私のようなジジイは、肩身が狭く感じられました。
 ロビーではCDが販売されていて、購入する女性方で賑わっていましたが、購入者は終演後にサイン会があるとのことでしたので、混雑は必至ですね。
 席に着いて開演を待ちました。客席は、P席は販売されなかったようですが、3階席も含めて満遍なく埋まり、亀井さんの人気のほどがうかがえました。

 開演時間となり、亀井さんが登場。椅子に座り、演奏が始まるまでの息を呑むような無音の静寂が緊張感を生むとともに、演奏への期待が高まりました。

 1曲目は、バッハのイタリア協奏曲です。流れるような軽やかな演奏を想像していましたが、決して軽くはなく、1音1音をしっかりと響かせ、クリアな音がホールにこだましました。亀井さんにより新たな生命感が与えられた現代のバッハがそこにあり、濁りのない音の美しさに魅了されました。

 亀井さんの挨拶があり、ショパンのノクターンが2曲演奏されました。嬰ハ短調は、しっとりと、ゆったりと、切々とむせび泣き、大きく感情を高ぶらせて、穏やかに曲を閉じました。
 変ニ長調は、ゆったりと、やわらかく、ロマンチックに、切なく歌い、極上のサウンドに酔いしれ、美しさに胸を熱くしました。

 続いては、ショパンのポロネーズ第5番です。パワフルに、激しくリズムを作り、グロテスクなまでに緩急・強弱を取って、ダイナミックレンジの広さ、力強い打鍵に圧倒されました。
 
 そして、前半最後は、ポロネーズ第6番「英雄」です。激しい一撃で始まり、緩急自在に、高らかに勝利の音楽を奏で、興奮を誘いました。

 休憩時間は、男性トイレばがらがらでしたが、女性トイレは長蛇の列でした。ご苦労様です。ロビーは賑やかに盛り上がり、皆さん良い音楽を聴いた喜びの表情を浮かべていました。

 後半最初は、ショパンのバラード第1番です。大きくためを作って、ゆったりと演奏が始まりました。前半同様に、緩急の幅を大きく取り、クリアな高音の煌きと、情熱的なダイナミックな音楽に息を呑みました。

 続いては、バラード第2番です。柔らかく始まり、そして、激しく燃えました。その対比が鮮やかであり、柔と剛とを繰り返して大きなうねりを作り、激しい急流となって流れ下り、そして穏やかに、ゆったりと曲を閉じました。

 プログラム最後は、プロコフィエフの「戦争ソナタ」です。この曲は、まさに亀井さんのためにあるような曲であり、盛り上がり必至です。
 第1楽章は、不安げな静けさから荒々しく燃え上がり、力強いリズムとともに放たれる音の連射が気持ち良かったです。
 第2楽章は、若干の穏やかさの後に、重々しく熱量をアップして行き、熱く燃え、その後は不気味さの中に落ち着きを取り戻しました。
 第3楽章は、音の機関銃を連射し、その激しさとパワーに圧倒されました。爆弾が炸裂し、銃声が轟き、砲弾の雨あられ。ここは戦場かと思うほど。血沸き肉踊る音楽が大爆発して、ホールを埋めた聴衆に興奮をもたらし、ブラボーとともにスタンディングオーベーションの熱狂をもたらしました。

 亀井さんの挨拶があり、アンコールに、ショパンのマズルカをしっとりと演奏し、火傷しそうなまでの興奮をクールダウンし、しっとりとした感動をもたらしました。

 これで終わるわけはなく、再び亀井さんの挨拶があり、アンコールの定番である「ラ・カンパネラ」を演奏し、再び熱狂をもたらし、全員総立ちの中に、感動と興奮の演奏会は終演となりました。
 時刻はかなり遅くなっていましたが、終演後のロビーは、サイン会の列が幾重にも延びていて、亀井さん人気に圧倒されました。

 バッハからプロコフィエフまで、200年の時空を超えた音楽を、年代の違いを感じさせない、新しい音楽として楽しませてくれて、期待通りの気持ちよい演奏会でした。
 この年齢の亀井さんならではの音楽であり、生命感と躍動感に溢れたパワフルな演奏に酔いしれました。芸術性がどうのと御託を並べるのは意味はなく、頭を空にして、音の洪水に身を委ねました。枯れ果てつつある私ですが、若者からパワーをもらい、寿命が少し延びたのではないかと感謝しています。

 2001年生まれの若きピアニストは、すでにロン=ティボー国際音楽コンクールで第1位になっていますが、これからさらに活躍してくれるものと思います。ドイツ留学中とのことですが、次はショパンコンクールでしょうか。これからも楽しませていただきたいと思います。

 
(客席:2階D9-22、¥5000)