東京交響楽団特別演奏会 X 映画音楽 ジョン・ウィリアムズ大作戦!
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2024年5月26日(日) 17:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:角田鋼亮
チェロ:伊藤文嗣
コンサートマスター:グレブ・ニキティン
司会:佐藤智香子、榎本広樹
 
アルフレツド・ニューマン:20世紀フォックス・ファンファーレ
ジョン・ウィリアムズ:
「スーパーマン」マーチ
「ジョーズ」より「テーマ」
「E.T.」より「フライング・テーマ」
「ハリーポッターと賢者の石」より「ヘドウィグのテーマ」
「ハリーポッターと秘密の部屋」より「不死鳥フォークス」
「ハリーポッターとアズカバンの囚人」より「バックビークの飛行」
「ハリーポッターと賢者の石」より「ハリーの不思議な世界」

(休憩20分)

アルフレッド・ニューマン:20世紀フォックス・ファンファーレ
ジョン・ウィリアムズ:
「ジュラシック・パーク」より「テーマ」
「シンドラーのリスト」より「テーマ」(チェロ版)
「スターウォーズ」組曲
 メイン・タイトル
 王女レイアのテーマ
 帝国のマーテ
 ヨーダのテーマ
 王座の間とエンドタイトル

(アンコール)
「レイダース/失われたアーク」より「レイダースマーチ」
 

 2024年度初めての東京交響楽団の演奏会です。ただし新潟定期演奏会ではなく、特別演奏会として開催された演奏会です。
 私が最後に東響を聴いたのは2023年12月31日に開催された「りゅーとぴあジルベスターコンサート2023」でしたので、5か月ぶりになります。
 1月14日のドリームキャラバンでも、東響が出演していましたが、これは聴きに行けませんでした。次の新潟定期演奏会は6月16日までありませんので、プログラムは別にして、この演奏会も楽しみでした。

 実は、東響の新潟定期会員の更新を申し込むときに、この公演を含む3公演を1万円で割引販売する「バリューパック」の販売があり、内容をよく確かめないまま申し込んだというのが真相です。
 この演奏会は東京交響楽団特別演奏会として開催され、新潟定期演奏会と同様に17時の開演です。プログラムはクラシック音楽ではなく、映画音楽の巨匠・ジョン・ウィリアムズの楽曲ばかりで、「ジョン・ウィリアムズ大作戦!」と題されています。
 若者受けするような、ちょっと恥ずかしくなるようなコンサート名で、コスプレ優先席なるものも発売され、定期会員とは違った客層をターゲットとしているようです。最近空席が目立つ東響新潟定期の穴埋めには良いかもしれませんね。
 今回はかしこまることなく、気軽に楽しめるプログラムになっており、主催者の思惑通りにチケットは早々に完売になりました。これをきっかけにフルオーケストラの迫力を堪能していただき、新潟定期演奏会にも足を運んでもらえるとありがたいですね。

 さて、映画音楽界のレジェンドとして君臨するジョン・ウィリアムズは、作曲活動のほかに、自作曲の指揮も活発に行っており、ウィーン・フィルやベルリン・フィルとの共演はCD化・ビデオ化されており、素晴らしい演奏で楽しませてくれています。
 昨年はセイジ・オザワ松本フェスティバルに来演し、サイトウ・キネン・オーケストラを指揮したことも記憶に新しいところです。カーテンコールのときに、2月に亡くなられた小澤征爾さんがステージに出てこられて胸を熱くしましたが、あれが公の場での小澤さんの最後の姿となりました。
 今回は、ジョン・ウィリアムズ自身が指揮するわけではありませんが、ジョン・ウィリアムズの音楽をまとめて聴ける貴重な演奏会であり、たっぷりと楽しませていただきたいと思います。

 ちなみに、東響は毎年夏に開催しているファミリー向けの「オーケストラはキミのともだち」で、「スター・ウォーズ」などのジョン・ウィリアムズ作品を演奏しているほか、過去の新潟定期演奏会を振り返りますと、20年前の2004年12月の第29回新潟定期演奏会(指揮:秋山和慶)で「ジョン・ウィリアムズの世界」と題するプログラムで演奏しています。
 日本の指揮者でジョン・ウィリアムズと一番近い関係にあるのは、東響正指揮者の原田慶太楼さんであり、せっかく東京交響楽団が演奏するのですから、原田さんの指揮で聴きたいところでしたが、今回の指揮者は角田鋼亮さんです。(ちなみに原田さんは、5月21日にジョン・ウィィアムズのコンサートを指揮していましたが、東響ではなく東京フィルでした。)
 角田さんの演奏はこれまで聴いたことがありませんが、国内外の多数のオーケストラと共演を重ねて実績を積まれて、セントラル愛知交響楽団常任指揮者を努め、この4月からは音楽監督に就任されておられます。東響とともにどのような演奏を聴かせてくれるのか楽しみであり、大いに期待したいと思います。


 天候に恵まれた日曜日。今日は26日で「フロの日」ということで、某銭湯で朝湯をいただき、ゆっくりと休日を過ごして所用を済ませました。
 今日のコンサートは、チケット完売で駐車場の混雑が予想されましたので、早めに家を出て、いつもの白山公園駐車場に車をとめました。
 県民会館で某コンサートのチケットを買い、りゅーとぴあに入りますと、ロビーは老若男女、たくさんの人たちで混雑していて、熱気に溢れていました。開場前に、ロビーの上の3階の回廊を、ベルを鳴らしながら自転車が走っていましたが、E.T.をイメージした演出のようでした。

 開場とともに、早めに入場しましたが、ロビーは CDを買う人や、談笑している人たちで賑やかでした。客層はいつもの東響定期とは全く異なり、若者が多く、私などは高齢者の部類でしょう。実際そういう年齢ですけれど。
 ホワイエには写真撮影コーナーが設けられており、先ほど走り回っていたE.T.を乗せた自転車がありました。

 混雑したホワイエを後にして席に着きましたが、席を選べないバリューパックで指定された席は、1階3列目中央で、指揮者やコンマスの直ぐ前でした。日頃はこれほど前方の席は選びませんので、新鮮に感じました。
 今回は、P席にコスプレ席が設けられました。新潟ではコスブレする人などいないと思っていましたが、コスプレした客がおられて驚きました。盛り上げてくれて敬服いたします。
 チケット完売だけあって、開演時間が近付くに連れて席はどんどんと埋まり、ホールは開演を待つ熱気で溢れていました。東響定期もこうだと良いのですけれど。

 開演時間となり、拍手の中に団員が入場して全員揃うまで起立して待ち、最後にコンマスのニキティンさんが登場してチューニングどなりました。オケは通常の配置で14型、コンマスの隣は田尻さんです。

 指揮の角田さんが登場して、コンサートの開演を告げる「20世紀フォックス・ファンファーレ」で華やかに演奏が始まりました。
 すぐに続けて「スーパーマン」マーチを迫力いっぱいに演奏して、満席の聴衆の心をつかみました。私の席は3列目ですので、指揮者と弦楽器奏者は良く見えますが、管楽器奏者や打楽器奏者は全く見えず、音響的には良いものの、視覚的にはちょっと残念でした。でも、弦楽器奏者の顔は良く見えましたので、良しとしましょう。

 お馴染みの榎本さんとフリーアナウンサーの佐藤智香子さんが登場し、オーケストラと指揮者の紹介がありました。
 そして、榎本さんと佐藤さんによる軽妙なトークと掛け合いによって曲目紹介があり、「ジョーズ」を緊迫感たっぷりに演奏し、続いて「E.T.」を流麗に美しく演奏し、自転車で空を飛ぶ映画の名場面が眼前に浮かぶようでした。
 そして「ハリーポッター」シリーズからの4曲が続けて演奏され、チェレスタの神秘的なメロディとともに、オーケストラ演奏の素晴らしさを感じさせて前半が終了しました。

 休憩時間が終わって団員が入場。ニキティンさんは他の団員とともに入場して、全員揃ったところでチューニングとなりました。
 角田さんが登場して、前半と同様に「20世紀フォックス・ファンファーレ」が奏でられ、その後に続けて演奏が始まりました。
 後半最初は「ジュラシック・パーク」です。映画の世界が色鮮やかに眼前に展開されるとともに、交響詩を聴くかの如く、管弦楽作品としての素晴らしさを感じさせました。

 次の曲のためにステージを整えている間に、指揮者を交えての楽しいMCがあり、続いては「シンドラーのリスト」です。
 オリジナルはヴァイオリン・ソロでの演奏で、2004年12月の東響新潟定期では、今日のコンマスのニキティンさんがソロを担当しました。今回はジョン・ウィリアムズ自身がヨーヨー・マのために編曲したチェロ版での演奏で、独奏はチェロ主席の伊藤さんが務めました。
 司会者がこれまでと反対に右手に退場し、左から伊藤さんが登場して演奏開始です。しみじみとしたメロディが男声の音域に相当するチェロにより奏でられ、ヴァイオリン版以上に心に滲みました。

 演奏を終えた伊藤さんにインタビューがあり、その後はそのままチェロ主席の場所に戻って、最後はメインプログラムの「スターウォーズ」組曲です。
 お馴染みの曲が5曲続けて演奏されました。壮大な「メインタイトル」だけでも十分な満足感を感じましたが、しっとりと情感に溢れる「王女レイアのテーマ」、勇壮な「帝国のマーチ」、穏やかなメロディの中に老練の悟りを感じさせる「ヨーダのテーマ」と演奏が続き、戦いに勝利して凱旋し祝福を受ける「王座の間とエンドタイトル」は、コンサートの最後を飾るにふさわしく、眼前に映画のエンドロールが流れるように感じられました。
 東響によりスターウォーズの世界が色鮮やかに具現化され、管弦楽作品としての素晴らしさ、オーケストラの素晴らしさを理屈抜きに示してくれました。
 録音では何度も聴いている曲ですが、オーケストラの生演奏は次元が異なり、東響の素晴らしいパフォーマンスもあって、満席のホールに感動の渦を巻き起こしました。

 大きな拍手に応えて、角田さんはインディ・ジョーンズの帽子をかぶって登場し、アンコールに「レイダース・マーチ」を華やかに躍動感たっぷりに演奏し、聴衆の心を高揚させて、興奮の中にコンサートを締めくくりました。

 角田さんと東響による演奏の素晴らしさは当然として、コスプレしながら楽しませてくれた司会者、様々な演出で楽しませてくれたりゅーとぴあのスタッフの皆さん、そして満席の観客が、一期一会の感動と興奮の演奏会を作り上げたものと思います。
 芸術性がどうのと、緊張しながら聴く音楽も良いですが、このように心を無にして音楽絵巻に身を投じ、音楽を楽しむのも良いですね。
 映画音楽は、純粋なクラシック音楽とは扱いが違うようですが、ウィーン・フィルやベルリン・フィルが演奏会で取り上げているくらいですから、オペラの序曲やバレエ音楽と同等に、現代のクラシック音楽として考えるべきでしょう。各曲とも壮大なオーケストレーションがなされ、後世に伝えるべき立派な管弦楽作品であり、大きな感動と胸の高鳴りを与えてくれました。

 若い世代の方々も、オーケストラの生演奏の素晴らしさを体験してくれたものと思います。このうちの何人でも良いですから、定期演奏会にも足を運んでいただけることを願いたいです。

 大きな満足感を胸にホールを後にし、レイダース・マーチを頭の中で奏でながら、心も軽やかにハンドルを握り、束の間の夢の世界から、現実世界へと向かいました。
 
 
(客席:1階 3-22、S席:バリューパック:\4000)