東京交響楽団第119回新潟定期演奏会
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2021年5月9日(日)17:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
指揮:高関 健
コンサートマスター:水谷 晃
 


モーツァルト:交響曲第41番 ハ長調 K.551「ジュピター」

(休憩20分)

マーラー:交響曲第1番 ニ長調 「巨人」

 新型コロナ感染により、昨年度の新潟定期演奏会はすべてキャンセルされ、新潟特別演奏会としてプログラムを変更して開催されました。
 未だ感染は収まらず、変異型の蔓延も伴って社会情勢は混迷を極めていますが、今年度は予定通りに新潟定期演奏会として開催されることになりました。

 その今シーズンの開幕となるのが今日の公演なのですが、残念ながら出演予定の音楽監督であるジョナサン・ノットの来日ができず、指揮者は高関 健さんに代わり、前半のプログラムが変更になりました。チラシの変更は間に合わず、オリジナルのままになっています。
 今シーズンの混乱を予想させる開幕公演となりましたが、昨日のサントリー定期は緊急事態宣言下で中止になっていますので、新潟定期演奏会が実現できたことに感謝すべきでしょう。

 ノットの代役となった高関 健さんの新潟定期演奏会への出演は、2019年3月の第112回新潟定期演奏会以来2年ぶりになります。

 前半の演目は変更されて、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」になりましたが、この曲が新潟定期演奏会で演奏されるのは、2003年9月の第38回新潟定期演奏会、そして2011年4月の第64回新潟定期演奏会以来10年ぶりです。
 また、後半のマーラーの交響曲第1番「巨人」は、人気曲にもかかわらず、意外にも新潟定期演奏会では長らく演奏されておらず、2000年4月の第6回新潟定期演奏会以来21年ぶりになります。


 ロビーコンサートを終え、一旦家に帰って休息し、再度りゅーとぴあへと出直しました。インフォメーションで某コンサートのチケットを買い、開場とともに入場しました。
 私は第1回からの定期会員であり、席はずっとCブロック右側の同じ席で変更してきませんでしたが、今年度からは気分新たに新しい席に変更しました。

 客席でこの記事を書き始めましたが、ステージではコントラバスの皆さんが音だししていました。開演時間が迫り、コントラバスの皆さんが退場しましたが、開演直前に舞台裏から聴こえてきた音は、これから演奏するモーツァルトでなく、マーラーというのも面白かったです。後半に力を入れているようですね。

 時間となり、いつものように拍手の中に団員が入場。全員揃うまで起立して待つ新潟方式です。最後にコンマスの水谷さんが登場して大きな拍手が贈られました。今日の次席は田尻さんでも廣岡さんでもありませんでしたが、誰でしょう。新しく就任予定のコンマスの方でしょうか。(追記:やはり9月にコンマスに就任する小林壱成さんでした。)
 オケの配置はヴァイオリンが左右に別れる対向配置で、コントラバス、チェロが左、ヴィオラが右です。弦5部は、私の目視で10-10-8-5-4と小型です。

 高関さんが登場して、前半はモーツァルトの「ジュピター」です。小型のオケをキビキビとドライブし、弾むような心地良い音楽を作り出しました。対向配置の演奏効果もよく出ていました。後半の大曲とは対極的な音楽ですが、モーツァルトの楽しみを存分に味わわせていただきました。

 休憩の後、拍手の中に団員が入場し、後半はメインのマーラーの「巨人」です。編成は大きくなり、弦は14型になりました。低弦は増強されて、チェロは10人、コントラバスは8人です。ティンパニも2組あり、ステージいっぱいのオケは壮観です。ハープはオケの中に埋もれていました。

 演奏は期待以上のものでした。これまで聴いた「巨人」の中でも、最高の演奏ではなかったでしょうか。管も弦も打楽器も、渾身の演奏だったと思います。決め所はバッチリと決まり、何の不満もありません。
 フルオーケストラの迫力と魅力をまざまざと見せ付けてくれました。フォルテシモでの肌に感じる振動は生演奏ならではであり、地を這うような大太鼓の響きも心地良かったです。

 高関さんと東響とが作り出した奇跡の時間。この感動を言葉で表現することなどできようもなく、あれこれと文章にするのも馬鹿らしく思えます。
 第3楽章からアタッカで突入した第4楽章の素晴らしさ。終盤にホルンがベルアップして力強くメロディを奏でる頃には感動が込み上げました。最後にホルンが横1列に起立して勝利のファンファーレを力の限り鳴り響かせると、目には涙が浮かびました。これほどの感動は新潟市ジュニアオケのアンコールの「威風堂々」以外ではめったに味わえません。

 コロナ禍で沈滞した空気を吹き飛ばし、コロナを克服して勝利の凱歌を挙げるかのようでした。これほどまでに気合の入った東響も珍しく、これほどまでに力に満ちた演奏はなかなか味わえません。

 高関さんは、突然のピンチヒッターとは思えぬ指揮ぶりで、オケからパワーを引き出し、苦難の社会に光を照らし、元気と勇気を与えてくれました。明日からの生活に希望を与えてくれた音楽の力の素晴らしさを実感しました。

 いい音楽聴いた幸福感を胸にホールを後にし、苦難だらけの現実社会へと身を投じました。

 

(客席:2階C*-*、S席:定期会員¥6300)