住谷美帆&山宮るり子 デュオコンサート 「ふたりの女神」
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2019年4月27日(土) 11:00 新潟市民芸術文化会館 能楽堂
 
サクソフォン:住谷美帆
ハープ:山宮るり子
 

エルガー:朝の歌

ピアソラ:タンゴの歴史 より カフェ1930

ボノー:ワルツ形式によるカプリス (サクソフォン独奏)

サン=サーンス:オーボエ・ソナタ

(休憩15分)

スメタナ:モルダウ (ハープ独奏)

コックロフト:Rock me! (サクソフォン独奏)

ドビュッシー:美しき夕暮れ

ボルヌ:カルメン幻想曲

(アンコール)
ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女

 1995年生まれの若きサクソフォーン奏者の住谷美帆さんと、新潟出身のハープ奏者・山宮るり子さんのデュオコンサートです。

 住谷さんは東京藝大の出身で、新潟での演奏は3回目だそうですが、私は昨年10月のワンコインコンサートで、ルミネ・サクソフォンカルテットのメンバーとしての演奏を聴いています。

 一方、山宮さんは、新潟が世界に誇るハーピストです。山宮さんの演奏は、2013年3月のNHK交響楽団との共演や2013年7月のリサイタル、2016年10月の出身地である西区でのコンサートなど、何度か聴かせていただいています。これまでの実績と演奏のすばらしさは、今さら申し添えることもないでしょう。

 春の新潟音楽ウィークのロビーコンサートで、新潟中央高校の生徒さんのすばらしい演奏を堪能し、大急ぎで5階の能楽堂へ向かいました。客の入りはなかなかではなかったでしょうか。さすが地元ですね。
 私の席は中正面の前方で、ステージがよく見えるベストポジションです。能舞台の後方の鏡板が外されて、中庭の竹林が見えて、音楽を楽しむにふさわしい爽やかな雰囲気を演出していました。

 時間となり、赤いドレスの住谷さん、青いドレスの山宮さんが登場して、「朝の歌」で開演しました。ハープとソプラノサクソフォンの甘いサウンドが絡み合って、土曜の朝にぴったりな、優雅で爽やかな音楽で、早速聴衆の心をつかみました。
 チラシの写真と実物を比較して、アレッと思うことも多々あるのですが、お二人はチラシの写真より数段美しく、まさに「ふたりの女神」でした。

 以後、主に住谷さんのMCで演奏が進められました。2曲目はピアソラ。ソプラノサクソフォンとハープという異色の組み合わせ。古き伝統を感じさせる能楽堂で演奏されるタンゴ。このミスマッチさが、逆に混沌とした1930年代のカフェを髣髴させ、感傷を誘いました。

 ここで山宮さんが退場。住谷さんはアルトサクソフォンに持ち替えて、「ワルツ形式のカプリス」が演奏されました。ワルツを刻みながら変幻自在に跳ね回るサクソフォンに魅了されました。

 山宮さんが戻り、住谷さんはソプラノサクソフォンに持ち替えて「オーボエ・ソナタ」です。サン=サーンス最晩年の曲ですが、なかなかいい曲ですね。オーボエもサクソフォンもリード楽器というところは同じであり、違和感は感じません。各楽章の対比も面白く、心地良い調べにうっとりしました。

 休憩後の後半最初は、山宮さんのハープ独奏で「モルダウ」です。この曲はこれまでも聴かせていただいていますが、水の1滴がやがて小さな流れとなり、やがて大河となって海に注ぐ。そんな光景が眼前に広がる演奏でした。

 続いては住谷さんのアルトサクソフォン独奏で「Rock me !」。エレキギターをイメージしたサウンドだそうですが、超絶技巧の連続で、サクソフォンの既成概念を打ち破るような快演に、口をあんぐりして驚くばかりでした。

 ここで山宮さんが登場するとともに、ハープの高音部の切れた弦をその場で張り替えて、アルトサクソフォンとハープにより、ドビュッシーの「美しき夕暮れ」です。
 先ほどのサクソフォンによる超絶的・前衛的な演奏から一転して、幽玄に奏でるハープとともに、神秘的な夕暮れの情景をうかがわせる柔らかな音楽で聴衆を包み込みました。

 プログラム最後は「カルメン幻想曲」です。本来はフルート曲ですが、これがオリジナル曲のように感じられる演奏でした。カルメンの妖艶さを演出するアルトサクソフォンの調べ。超絶技巧で攻めるサクソフォンに臆せず渡り合い、熱く燃え上がるハープとともに、フィナーレへと駆け抜けました。

 アンコールはドビュッシーの「亜麻色の髪の乙女」。柔らかく豊潤に湧き出るハープの泉の上に、ソプラノサクソフォンの優しい調べが、光に照らされ輝きながらゆれていました。ビロードのような極上のデザート。美味しくいただきました。

 住谷さんの超絶的な演奏が目立っていましたが、ピアノパートをハープに置き換えて演奏した山宮さんの大変さも想像に難くありません。優雅なハープの響きの裏で駆使されている超絶技巧にも驚かざるをえません。若きお二人の今後の益々の発展を祈りながら、能楽堂を後にしました。

 

(客席:中正面6-17、¥2000)