神尾真由子&ミロスラフ・クルティシェフ デュオ・リサイタル
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2018年4月29日(日) 14:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
ヴァイオリン:神尾真由子
ピアノ:ミロスラフ・クルティシェフ
 

モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ 第28番(第21番) ホ短調 KV304(300c)

フランク:ヴァイオリン・ソナタ イ長調

(休憩20分)

ウェーベルン:ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 Op.7

フェルドマン:ヴァーティカル・ソーツII

細川俊夫:ヴァーティカル・タイム・スタディIII

グラス:「浜辺のアインシュタイン」より ニー・プレイ2

ペルト:鏡の中の鏡

ガーシュイン(ハイフェッツ編):ポーギーとベス
    サマータイム
    女は気まぐれ
    あの人は逝ってしまった
    そんなことはどうでもいいさ
    ベスよ、お前はおれのもの
    ブルースのテンポで

(アンコール)
 ハチャトゥリアン(ハイフェッツ編):剣の舞
 ティニク(ハイフェッツ編):ホラ・スタッカート
 

 2007年のチャイコフスキー国際コンクールの覇者、ヴァイオリンの神尾さん、ピアノのクルティシェフさんのコンサートです。この二人はご夫婦ですので、夫婦の共演ということで、息もぴったりな熱い演奏が期待されます。

 神尾さんは新潟に何度か来演されていますが、直近では2017年10月の東響第103回新潟定期での燃え上がるような演奏が記憶に残っています。 
 一方クルティシェフさんは、2015年8月の東響第91回新潟定期で“爆演”という表現がぴったりな感動の演奏を聴かせてくれました。この定期には神尾さんも出演されており、子連れで新潟に来られていました。このときはそれぞれ別のコンチェルトの独奏者として出演されており、共演を聴くのは今回が初めてです。

 昨日に引き続いて、今日も天候に恵まれ、穏やかな春の休日となりました。昨日から「春の新潟音楽ウィーク」ということでいろいろ催しが行われており、今日も午前中からロビーコンサートがあり、新潟市ジュニア邦楽合奏団や新潟市ジュニアオーケストラのメンバーが出演されていましたが、都合がつかず聴けませんでした。

 上古町の楼蘭で今シーズン初の冷やし中華をいただき、白山公園をぶらついてホールに向かいました。県民会館では新潟ウインドオーケストラの定期演奏会があり、入場の列が長く続いていました。ほどなくしてこちらも開場時間となり、おもむろに入場しました。

 私は東京響定期会員招待でしたので、いつもの席です。発売された席はかなり埋まったようで、客の入りは良いようです。

 プログラムは当初の発表と若干の変更があるとのことでしたが、グラスの曲が変更になっただけでした。モーツァルトから現代曲まで幅広く、意欲的なメニューです。個人的には大好きなペルトが楽しみでした。

 時間となり、大腿部までスリットが入ったセクシーな黒いドレスの神尾さんがクルティシェフさんを従えて登場。モーツァルトのヴァイオリン・ソナタで開演しました。
 初めはヴァイオリンの音が小さく、枯れた感じがありましたが、ピアノとともに、柔らかな調べが耳に優しく感じられ、穏やかに心に響きました。

 続いてはフランクのソナタ。ヴァイオリンの響きも耳に慣れ、大きな感情のうねりが聴く者の心を揺さぶりました。有名曲であり、しばしば聴く機会がありますが、この曲の深淵さを改めて感じました。ヴァイオリンはもちろん良かったですか、ピアノがさらに素晴らしかったです。
 ヴァイオリンソナタというものの、ヴァイオリンとピアノは対等に渡り合いますが、ピアノが主導権をとっていたように思いました。ヴァイオリンは燃え上がる感情のまま自由に舞っていましたが、常に力強いピアノに支えられていました。聴き応えある良い演奏だったと思います。

 休憩後の後半は20世紀以降の現代曲です。最初はウェーベルン。100年前の曲といいますが、前衛的であり、繊細で深遠な音楽でした。短い曲で、訳の分からぬまますぐに終わってしまいました。

 ここで神尾さんの挨拶と曲目紹介があり、さらに前衛的なフェルドマンと細川の作品が続けて演奏されました。繊細すぎて聴く方にも精神集中を要求されて、眠気が起きる暇もありませんでした。細川の方は幾分聴きやすかったです。

 続いてはミニマリズムの2曲。グラスの曲は、同じメロディを延々と弾き続け、休む間もなく形を変えて、また元に戻ります。何回演奏したか数えているのだろうかと心配しながら聴いていました。ご苦労様と声を掛けてあげたいような演奏でした。
 ペルトの「鏡の中の鏡」は私が好きな曲です。癒しの音楽として眠れぬ夜に聴いています。もっとゆっくり目の方が好きですが、生で聴けただけで幸せでした。クリスタルのようにきらめくピアノが心に響きました。

 最後はこれまでの緊張感から解き放たれたかのようなガーシュウィンの音楽です。ほっとしながら楽しく聴けました。ハイフェッツの編曲の素晴らしさもあって、聴き映えする音楽に仕上がっていました。

 大きな拍手に応えて、アンコールは2曲演奏されました。これは超絶技巧を駆使したもので、さすがだなあと口をあんぐりしてしまいました。

 前半と後半で趣向を変えたプログラムは面白かったです。特に現代の前衛音楽はこんな機会でしか聴くチャンスはありませんので、精神集中の疲労感こそありましたが、心地良い疲労でした。家ではあの静寂に響く繊細な音は体験できませんものね。
 演奏は、ヴァイオリンとピアノのそれぞれの良さが出ていたと思います。神尾さんメインかと思ったのですが、クルティシェフさんの良さも際立っていました。それぞれがコンクールの覇者ですから当然かもしれませんが、素晴らしいデュオですね。ご夫婦ということで息もぴったり。さすがですね。

 当初はこの後はロビーコンサートを聴いて、スペシャル市民オーケストラにはしごする予定だったのですが、所用が入ってここで帰ることになりました。残念。


(客席:2階C*-*、S席:定期会員招待)