チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
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2014年4月17日(木) 19:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:デビット・ジンマン
ヴァイオリン:ギドン・クレーメル
 
 
R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」op.28

モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219

(ソリスト・アンコール)
イザイ:無伴奏ソナタ op.27-3 バラード


(休憩20分)

ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 op.98

(アンコール)
ブラームス:ハンガリー舞曲 第1番 ト短調
エヴァイヴァ・イソチ (スイス伝承曲)
 
 

 4月に仕事の勤務環境が大きく変わり、あわただしい毎日です。平日開催のこのコンサートは、最近まで行けるかどうかはっきりせず、チケット購入をためらっていました。案の定仕事上の会合と重なってしまったのですが、こちらを選択させていただきました。

 今日は、ジンマン/トーンハレ管にクレーメルが共演するという魅力的なコンサートです。ジンマン/トーンハレ管といえば、1999年6月の、りゅーとぴあ開館間もない頃に新潟に来演していますので、今回は15年振りということになります。
 そのときはヨーヨー・マとの共演で、チケットは発売とともに完売となり、立見席までぎっしりとなりました。当時はジンマンが新しい解釈でのベートーヴェンの交響曲全集を出した頃で、ジンマンの名が広く知られ始めた頃でした。その後ジンマン/トーンハレ管のコンビで数々の名録音が発表され、現在のようなメジャーな存在となりました。
 
 私としましては、もちろんジンマン/トーンハレ管に期待したわけですが、巨匠クレーメルの来演というのも大きな魅力でした。これまでCDではたくさん聴いているものの、実演を聴いたことがなかったクレーメルを聴いてみたいと気持ちも大きかったです。音楽愛好家の人気投票では必ずトップを争うクレーメルを新潟で聴く機会は今後ないと思われ、万難を排して駆けつけた次第です。

 職場から大急ぎで車を飛ばし、ホール周辺の駐車場を探しましたが、どこも満車。白山公園は花見客で大賑わい。白山神社も春祭りで大混雑。他のホールでの公演も重なったためか、駐車場への入場待ちの列に並びましたが動く気配はなく、仕方なく、少し離れたコインパーキングに駐車し、猛ダッシュを余儀なくされました。
 白山神社を通り抜けましたが、境内には露店が立ち並んで大混雑。学校帰りの高校生の集団ををかき分け、息を切らして、ホールに到着し、どうにか開演に間に合いました。

 今回はクレーメルとの共演ということもあって、満席かと想像していたのですが、中に入って驚愕。客の入りは悪く半分ほどでしょうか。S席エリアはそれなりに埋まっていましたが、1階席両脇や、2階サイド席はガラガラ状態でした。A、B席エリアには客がほとんどいないというのに、その反面、C、D席は完売で客席がぎっしり埋まっているというのが異様に感じられました。

 拍手の中団員の入場。全員揃うまで起立して待っていて、コンマスが一礼して着席し、チューニングが始まりました。オケは、いわゆる16型の大編成であり、ステージいっぱいで壮観でしたが、客席の空席とアンバランスなのが残念でした。

 1曲目は、ティル。最初のホルンの響きからして、このオケの実力の高さが感じられました。透明感ある流れるような明るく爽やかな演奏で、上品を感じました。日頃聴き慣れている東響とは一味違ったサウンドで、低音の厚みはないものの、解像度が高く色彩感のある音色に聴きほれました。でも、ちょっと刺激不足だったかな・・。

 オケの編成が小さくなって、2曲目はモーツァルトの「トルコ風」。クレーメルはチョッキ姿で、楽譜を見ながらの演奏でした。クレーメルのヴァイオリンは、線が細く、ときどき音を外し、力のない演奏に感じました。枯れた音色で弱弱しく、枯れすすきみたいな演奏に、正直言ってがっかりしました。
 さすがのクレーメルも年を取り、往年の輝きは失ってしまったのかと思いをめぐらしながら聴いていましたが、第2楽章後半から潤いが出始めて、次第につやのあるサウンドになってきました。第3楽章は前半が嘘のように、力の入った演奏で満足させてくれました。
 アンコールのイザイは巨匠の風格を感じさせ、まだまだ弾けるんだというところを見せてくれ、大きな拍が贈られました。
 初めはどうなるのか心細く感じましたが、次第に生き返ってきて、生命観を感じる演奏になり、最後は満足させてくれました。このへんは、老いたとはいえ、さすがにクレーメルトいうことでしょうか。

 休憩後の後半も団員が全員揃うまで起立して拍手に応えてくれました。いよいよメインのブラームスです。4番を聴くのは久しぶりです。オケの編成は再び16型となりました。
 やや早めのテンポで演奏が進められました。暗くなく、重くなく、生き生きと活力のある、熱く燃え上がるような演奏に感じました。第3、第4楽章間はアタッカで演奏し、興奮と感動のフィナーレへと突入しました。弦も管もすばらしく、特にホルンとトロンボーンのふくよかなサウンドに酔いました。重々しいドイツ風のブラームスとは違った、新時代の演奏に感じ、この曲の魅力を思う存分堪能できました。

 アンコールは2曲演奏されましたが、最初はブラームスつながりで、定番のハンガリー舞曲第1番。緩急、強弱のメリハリを大きくつけて自由自在。生き生きとした演奏で、これまで聴いたこの曲のベストの演奏に思いました。
 2曲目はスイスの伝承曲のエヴァイヴァ イ ソチ。どういう意味なのでしょうか。最初は団員が隠し持っていたカウベルが鳴り響き、その後どこかで聴いたこのとのあるようなメロディが垣間見えたりして、明るく、賑やか、楽しい曲でした。最後を飾るに最適の演奏であり、スタンディングオベーションとなりました。明るい曲で〆てくれて、明るい気持ちで会場を後にしました。

 クレーメルとの共演が魅力のコンサートでしたが、クレーメルの影は薄く、ジンマン/トーンハレ管の素晴らしさが再認識させられました。
 このような素晴らしい演奏に関わらず、空席が多かったのは誠にもったいなく感じられました。その寂しい客席ではありましたが、オケの演奏は力が入り、ホールは熱く盛り上がりました。
 白山神社や公園には若者たちで賑わっていたことを考えますと、これら若者に低料金で聴いてもらえたらなあ、などと考えていました。

 時刻は9時半になっていましたが、桜の下では、まだたくさんのグループが宴会で盛り上がっていました。皆さん新潟の春を楽しんでおられました。春っていいですねえ・・。
 
   
(客席:2階C8−30、S席:会員割引、\12600)