チューリヒ・トーンハレ管弦楽団演奏会
  ←前  次→
1999年6月5日(土)18:00 新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:デヴィッド・ジンマン
チェロ:ヨーヨー・マ 
 
オネゲル:パシフィック231(交響的運動第1番)

ブロッホ:ヘブライ狂詩曲「シェロモ」 
(Vc:ヨーヨー・マ)

(休憩)

ハイドン:チェロ協奏曲第1番ハ長調 
(Vc:ヨーヨー・マ)

(アンコール) ?
(Vc:ヨーヨー・マ)

ベートーヴェン:交響曲第5番ハ短調「運命」(新ベーレンライター版)

(アンコール)
ブラームス:ハンガリー舞曲第5番
ワーグナー:ローエングリン前奏曲
滝廉太郎:荒城の月

 
 
 
 

 朝の雨が上がり、爽やかに晴れ上がった春の夕方、開演前に楽団関係者が解説するプレコンサート・トークがあるというので早めに会場に向かいました。

 この公演は発売と同時に完売し、立ち見席まで満員という超人気公演となりました。私も電話予約開始時刻に電話を入れたのですがつながらず、何とか1階席左後方のまずまずの席を確保しました。優先予約ができる友の会会員でも買えなかった人が多かったらしいです。
 ジンマンの新しいべートーベン解釈が音楽界では話題となっていますが、大方はジンマン・トーンハレを聴きに来たというより、ヨーヨー・マを聴きに来たというべきでしょう。

 前記しましたように、初の試みとして開演前にプレ・トークが行われました。楽団マネージャーが楽曲解説するとのことで、はじめは内容に期待していなかったのですが、何とヨーヨー・マがチェロを片手に現れて、フレーズを弾きながらこれから演奏する「シェロモ」を解説してくれました。サービス精神旺盛で、マの人気の秘密の一端を垣間見た感じでした。早く来てよかったと得した気分になりました。

 さてコンサートですが、1曲目はパシフィック231。20数年ぶりに聴く曲。きらびやかな演奏ですが、今ひとつ迫力に欠けるかな。
 2曲目、マが登場。神が乗り移ったかのような神懸かり的演奏。緊張感・迫力に息を飲みました。プレ・トークでのマの解説もあり、ソロモン王時代の光景が目に浮かびました。名演だったと思います。

 休憩をはさんで、再びマが登場。今度はハイドンです。オケは小編成で、コンマスも女性に代わっています。先ほどとは打って代わって、リラックスした軽やかな演奏でした。
 マは盛んに女性奏者に視線を送り、ニヤリとしていました。アイコンタクト? 演奏の素晴らしさか1楽章終了後拍手が湧き起こりましたまし。演奏終了とともに会場は割れんばかりの拍手。アンコールにも答えてくれた。

 そして3曲目、運命です。マも良かったですけれど、本日の収穫はこれ。こんな爽やかな、心地よいベートーヴェンは初めてです。
 楽譜の違いかジンマンの解釈かは分かりませんが、主体はテンポ設定にあったのだろうと思います。原典のメトロノーム指示に従えばこうなるのでしょうか。まさに新しい体験でした。高原のそよ風が駆け抜けるがごとく、よどみなく音楽が流れていきます。ハイテンポで、奏者も大変なんだろうなあとふと思いました。第3楽章の展開部の低弦など軽業的でした。
 これがベートーヴェン? これが運命? という感想を持つ人もいるに違いありません。スピードのためか重厚さというものはないですが、運命の新しい魅力を発見した気分でした。CDが1枚1000円と格安で出ています(輸入盤はもっと安い!)ので、是非聴かれると良いです。

 アンコールは3曲。やっぱり軽い演奏。ジンマンというよりオケのキャラクターなのかも知れません。最後に荒城の月を演奏してサービス満点の演奏会でした。

追記:いつもと違う点がひとつありました。花束贈呈がなかったのです。制服を着た女子職員が、舞台袖から出てきて花束を渡すのは白けると常々思っていたのですが、無いのもまたさびしいなあ・・・。

後日談ヨーヨー・マがべートーベンのとき、オケに混じってチェロを弾いていたそうです。気付かなかった。びっくりだなあ。


(客席:1階16-3、A席:10000)