新潟交響楽団 第93回定期演奏会
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2013年11月10日(日) 14:00  新潟市民芸術文化会館 コンサートホール
 
指揮:松沼俊彦
 



モーツァルト:歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」序曲 K.588


マーラー:交響曲第9番 ニ長調

 
 

 実は、この秋一番楽しみにしていたコンサートです。今回の演目は、何とマーラーの交響曲第9番。マーラーでは一番好きな曲であり、もしかしたら、すべての交響曲の中でも一番かもしれません。
 とはいえ、若い頃は、この曲の良さは全く理解できませんでした。しかし、40代も後半になる頃から、しみじみと心に迫るように感じるようになりました。最近も毎晩のように寝る前に聴いています。

 この曲との出会いは、学生時代に聴いたジュリーニ/シカゴ響のLPです。確か、その年のレコードアカデミー賞を受賞し、どんな演奏か聴いてみようということで買ったように記憶しています。当時は何の感慨も受けず、以来20年以上お蔵入りとなりました。月日が経ち、ふとFM放送から流れてきたこの曲に感銘を受け、のめり込んでしまいました。結果としてCDもたくさん買い揃え、20数枚にもなりました。どの演奏もそれぞれの良さを感じています。

 曲の奥深さを知るにつれ、CDでは飽き足らなくなり、実演も無性に聴きたくなって、2011年は5公演を聴いてしまいました。実は前年の11月にラトル/ベルリンフィルを聴いていますので、2011年11月から2012年9月のプレヴィン/N響までの10ヶ月間に6公演を聴くというばかげたことをしたこともありました。今年も機会があれば聴きたかったのですが、県外遠征はできず、CDでがまんの日々でした。

 この大曲は、新潟で演奏される機会はずっとなく、2005年7月の第32回東響新潟定期で、飯森さんの指揮で聴いて以来となりますので、8年ぶりということになります。
 新潟に来演する外来のオケが演奏するような演目ではありませんから、また聴けるとすれば東響定期しかないと思っていました。アマチュアなら、もしかしたら新潟メモリアルオケが演奏してくれるかもと期待していましたが、潟響が演奏することを知り、狂喜乱舞した次第です。毎回のアンケートで、マラ9を演奏してほしいと書き続けた甲斐がありました。

 今回の指揮は、諸遊さんではなくて松沼さんです。潟響を磨き上げ、新時代を築いてくれた松沼さんとの最後の演奏会であり、潟響の力の入れようも半端じゃなく、チラシの紙の厚さにそれが表れているように思います。


 前置きが長くなってしまいましたが、それだけ期待していたということです。いつもは自由席ですが、今回ばかりは指定券を早々に買い込んで、待ち焦がれていました。

 昨日の秋晴れが嘘のように、今日は低気圧と寒冷前線の通過に伴い、悪天候になってしまいました。西区某所でラーチャンを食べて会場入りしました。気合を入れてコンサートに臨むとき、必ず食べることにしています。

 今回は指定席で並ぶ必要もないので、気が楽でした。客の入りは多いとはいえず、6割程度でしょうか。予想していたことですが、指定席は後期高齢者がずらり。マラ9好きとは思えない方々ばかり。ちょっと不吉な予感がよぎりました。

 拍手の中、団員が入場し、最後に松村さんが一礼してチューニング。オケの配置は、ヴァイオリンが左右に分かれる対向配置。チェロは左、ヴィオラが右、コントラバスは最後部に横一列に並んでいました。

 松沼さんが颯爽と登場して、最初はモーツァルトの序曲です。わずか5分足らずの曲でしたが、マラ9に臨む心の準備をするにふさわしかったと思います。アンサンブルもきれいで、今日のコンサートの好演が予感されました。

 編成が大きくなり、休憩なしでマラ9の開始です。少し速めのテンポで、エネルギッシュな松沼さんの指揮に応えて、グイグイと演奏が進みました。弦のアンサンブルもきれいで、管楽器の破綻もなくて良かったです。
 第2楽章もきれいにまとめてくれました。チューニングを入れて、第3楽章。この楽章がうまく決まると、第4楽章が映えるのですが、うまくこなしていたと思います。全身を使って、オーバーアクションで指揮する松沼さんの良さが一番出ていたのではないでしょうか。最後をバシット決めて、アタッカで第4楽章に行ってほしかったですが、休みが入りました。
 第4楽章出だしの弦のアンサンブルが良かったです。ここがうまく決まると、感情移入が楽になります。熱く盛り上がって消え入るようなフィナーレへ。音が消え、松沼さんが手を下ろすまでの間、フライイング拍手が出なかったのは良かったです。この静寂を味わうのがマラ9の醍醐味といってよいでしょう。

 ブラボーの声も聴かれ、感動の拍手がホールを満たしました。プロではないですから、難はありましょうが、これだけの演奏を聴かせてくれるなんて、潟響はたいしたものです。アマオケのマラ9は、昨年6月に東京で聴いたことがありますが、それよりずっと感動的でした。

 新潟でマラ9を、それも十分に聴かせる演奏で聴けて良かったです。ちょっと速めで、暗さというより、明るさを感じさせ、死でなく、新たな旅立ちを感じさせる演奏だったと思います。
 アマチュアは手を出すなといわれるこの難曲を、見事に演奏しきった潟響に、ブラボーを贈りたいと思います。松沼さんとの6年間の集大成といってよい演奏でした。これで、松沼さんとはお別れというのは寂しいです。歴代の指揮者の中で最高だったと思います。

 次回の定期は、諸遊さんではなくて、汐澤安彦さんです。確か以前も指揮したことがあったような・・・。曲目は、一般受けしそうな「ルスランとリュドミラ」序曲、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲、そしてドヴォルザークの8番です。多くの人に聴きにきてほしいですね。


 ということで、すばらしいコンサートだったのですが、前記しましたように、指定席エリアは後期高齢者席となっており、不吉な予感は的中。足腰が弱くて、階段の上り下りが不自由な方々が、演奏が始まっても席に着けず、曲の出だしがじゃまされました。
 そして、私の隣の高齢のご婦人は、第1楽章途中から眠りに着かれ、グーグーといびきをされていました。各楽章とも、数回肘でつっついていびきを止めさせましたが、効果は数分だけ。よほど気持ちよい演奏だったのでしょうね。
 そして右後ろのご婦人は、第4楽章が始まると帰り支度を始められ、バッグのチャックを開けたり閉めたり。物を出したり引っ込めたり、ガサゴソと賑やかにされていました。何度も睨みつけましたが、効果なし。修行の足りない私は、一発殴ってやろうかという衝動にかられましたが、じっとがまんしました。

 演奏がすばらしかっただけに、残念でなりません。苛立ちを感じながら聴いていたのですが、そんな状況の中でも感動させてくれた潟響に、もう一度ブラボーを贈りたいと思います。

 外に出ると、雨が降り続いていました。これが暗い新潟の冬の始まりでしょうか。天候が荒れませんように・・・。


(客席:2階C6−11、指定席:¥1500)